09:30 〜 12:00
[S09P-17] 西南日本全域の微動マイグレーションの網羅的な抽出とその特徴
世界各地のプレート沈み込み帯で発生しているテクトニック微動の重要な特徴として, 微動の震源位置が時間とともに移動する微動マイグレーションがある. 微動マイグレーションはその現象を見る時間スケールによってさまざまな振る舞いを示し, 数時間から数日のスケールではプレート走向方向に約10 km/day で移動するメインフロント (e.g., Obara, 2010), 数時間スケールでメインフロントとは反対方向に約 100 km/day で移動する rapid tremor reversal (RTR) (e.g., Houston et al., 2011) などがある. 微動マイグレーションはプレート走向方向だけでなく傾斜方向にも移動するため上記のような特徴すべてを目視で判別するのは困難である. 本研究では発表者が開発した時空間ハフ変換 (Sagae et al., 2021, JpGU) を用いて西南日本全域の微動マイグレーションを客観的に抽出し, その時空間的な特徴を調べることを目的とする.
時空間ハフ変換とは時空間 (経度, 緯度, 時間) における直線要素を抽出する手法であり, 微動マイグレーションの位置情報・継続時間・進行方向・移動速度などを客観的に抽出することができる. 具体的には, 原点から直線までの距離ρ, 天頂角θ, 方位角φ, 回転角ψ の4つのパラメータ (ρ,θ,φ,ψ) を用いて時空間での直線を表現する. 特にtanθは移動速度を, φは進行方向を示す. また, 幅を持った直線 (円柱) を考えることで震源の不確かさ情報を考慮することができ, 最も多くのイベントがその円柱内部に含まれるようなものを微動マイグレーションとして抽出する. さらに, 時空間ハフ変換は複数の直線が入り組んでいる場合でも, それらパラメータ (ρ,θ,φ,ψ) をもとに直線を分離することができる利点がある.
解析するデータには, 防災科学技術研究所がエンベロープ相関法 (Maeda and Obara, 2009) を用いて1分ごとに決定している微動カタログ (以降, NIEDカタログ) を使用した. 解析期間は2010年1月1日から2019年12月31日までの10年間であり, 解析地域は四国・紀伊半島・東海の3つの地域である. 時空間ハフ変換をNIEDカタログに適用するために, φとψは10°の刻み, θはtanθが0.125–60 km/hr の範囲で1 km/hr の刻みで, ρは0–150 km まで0.25 km 刻みでパラメータを用意した. また, NIEDカタログの平均的な震源の不確かさ5 km を円柱の半径となるように設定した. 解析手順はまず, 1, 2, 3, 4, 6, 8, 12, 24 時間の長さをもつ時間窓を用意し, それぞれの時間窓を解析期間内で重複させずに移動させる. そして, 時間窓の中に10個以上のイベントが含まれるときに時空間ハフ変換を適用し, 円柱内部に8個以上のイベントが含まれるものを微動マイグレーションとして抽出する. 抽出された微動マイグレーションを構成するイベントを時間窓から取り除いた後, 再度, 微動マイグレーションの抽出を行う. この操作を時間窓の中のイベントが10個未満または円柱内部に含まれるイベントが8個未満になるまで繰り返す. 最後に複数の時間窓で重複して抽出されたものを取り除き, 微動マイグレーションのカタログを作成する.
解析の結果, 10年間の微動カタログデータの中から四国では6,712個, 紀伊半島では4,016個, そして東海では1,396個の微動マイグレーションを抽出することができた. 抽出したすべての微動マイグレーションの進行方向・継続時間・移動速度に関する場所ごとの特徴を調べた. 継続時間の中央値が6時間と相対的に長い場所では移動速度の中央値が 1 km/hr (24 km/day) と相対的に低速であり, それはメインフロントの特徴と一致する. 一方, 移動速度が10 km/hr 以上と高速な微動マイグレーションはそれとは逆方向に進行する傾向が見られる. 上記の結果はメインフロントやRTRが繰り返し起きている場所が存在していることを示唆している. 本発表では微動マイグレーションの特徴と微動エネルギーの空間分布などとを比較し, 微動マイグレーションの振る舞いとプレート境界面上の不均質の関係について議論する.
時空間ハフ変換とは時空間 (経度, 緯度, 時間) における直線要素を抽出する手法であり, 微動マイグレーションの位置情報・継続時間・進行方向・移動速度などを客観的に抽出することができる. 具体的には, 原点から直線までの距離ρ, 天頂角θ, 方位角φ, 回転角ψ の4つのパラメータ (ρ,θ,φ,ψ) を用いて時空間での直線を表現する. 特にtanθは移動速度を, φは進行方向を示す. また, 幅を持った直線 (円柱) を考えることで震源の不確かさ情報を考慮することができ, 最も多くのイベントがその円柱内部に含まれるようなものを微動マイグレーションとして抽出する. さらに, 時空間ハフ変換は複数の直線が入り組んでいる場合でも, それらパラメータ (ρ,θ,φ,ψ) をもとに直線を分離することができる利点がある.
解析するデータには, 防災科学技術研究所がエンベロープ相関法 (Maeda and Obara, 2009) を用いて1分ごとに決定している微動カタログ (以降, NIEDカタログ) を使用した. 解析期間は2010年1月1日から2019年12月31日までの10年間であり, 解析地域は四国・紀伊半島・東海の3つの地域である. 時空間ハフ変換をNIEDカタログに適用するために, φとψは10°の刻み, θはtanθが0.125–60 km/hr の範囲で1 km/hr の刻みで, ρは0–150 km まで0.25 km 刻みでパラメータを用意した. また, NIEDカタログの平均的な震源の不確かさ5 km を円柱の半径となるように設定した. 解析手順はまず, 1, 2, 3, 4, 6, 8, 12, 24 時間の長さをもつ時間窓を用意し, それぞれの時間窓を解析期間内で重複させずに移動させる. そして, 時間窓の中に10個以上のイベントが含まれるときに時空間ハフ変換を適用し, 円柱内部に8個以上のイベントが含まれるものを微動マイグレーションとして抽出する. 抽出された微動マイグレーションを構成するイベントを時間窓から取り除いた後, 再度, 微動マイグレーションの抽出を行う. この操作を時間窓の中のイベントが10個未満または円柱内部に含まれるイベントが8個未満になるまで繰り返す. 最後に複数の時間窓で重複して抽出されたものを取り除き, 微動マイグレーションのカタログを作成する.
解析の結果, 10年間の微動カタログデータの中から四国では6,712個, 紀伊半島では4,016個, そして東海では1,396個の微動マイグレーションを抽出することができた. 抽出したすべての微動マイグレーションの進行方向・継続時間・移動速度に関する場所ごとの特徴を調べた. 継続時間の中央値が6時間と相対的に長い場所では移動速度の中央値が 1 km/hr (24 km/day) と相対的に低速であり, それはメインフロントの特徴と一致する. 一方, 移動速度が10 km/hr 以上と高速な微動マイグレーションはそれとは逆方向に進行する傾向が見られる. 上記の結果はメインフロントやRTRが繰り返し起きている場所が存在していることを示唆している. 本発表では微動マイグレーションの特徴と微動エネルギーの空間分布などとを比較し, 微動マイグレーションの振る舞いとプレート境界面上の不均質の関係について議論する.