日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

C会場

一般セッション » S01. 地震の理論・解析法

[S01] PM-2

2023年11月2日(木) 15:00 〜 16:30 C会場 (F202)

座長:川方 裕則(立命館大学)、平野 史朗(立命館大)

15:30 〜 15:45

[S01-14] Ocean infragravity waveによるRayleigh waveの励起

*正本 義宗1、西田 究1 (1. 東京大学地震研究所)

周期100−350秒の帯域で固体地球は背景振動している事が知られており(常時地球自由振動)、それは定常的な Rayleigh波、Love波の定常的な励起で説明される。表面波の励起はその周期帯に対応したOcean infragravity wave (IG波) による水圧変動が海底面に対し垂直応力としてはたらくことによっていると考えられ、直感的にはLove波の励起を考えづらい。しかし、観測されるエネルギーはRayleigh波とLove波とで同程度の大きさとなる事が知られている(Nishida et al., 2008)。観測された不一致を説明し得るメカニズムとしては IG波と海底地形のカップリング (Nishida et al., 2008, Fukao et al., 2010) が提唱されており、全体として水平方向の力がはたらくことでLove波が発生する。Nishida et al. (2008)は、日本列島に展開されているHi-net高感度加速度計データ(2004/7-2004/12)を beamforming法を用いて解析し、表面波エネルギーの入射方位角依存性を示している。本研究では、より長い解析期間の上下動成分を解析する。IG波が励起するRayleigh波エネルギーの入射角スペクトルを合成し、観測値と比較検討することによって、常時地球自由振動の励起メカニズムを定量的に制約・解明する事を目指す。
 解析には防災科学技術研究所の広帯地震観測網F-net 73観測点の上下動記録(2017年)を用いた。解析にはcross-correlation beamforming法 (Ruigrok et al, 2017)を用いた。はじめに、まず全観測点ペアに対しての相互相関関数を計算した。計算された相互相関関にcross-correlation beamforming法 (Ruigrok et al, 2017) を適用し、入射角スペクトルを計算した。この結果としては、日本列島の東側から到来する表面波が全期間で強く、さらに夏季において南西側からの波も強くなるというようなパターンが示された。
 次に、IGによって励起されると考えられるRayleigh波についてスペクトル合成を考える。全球上の各点でのIGの波高スペクトルがWAVEWATCH III (WW3) モデルによって与えられることから、それに応じた海底面上での水圧変動を考えることができる。Fukao et al. (2010)の定式化に基づき、水平方向の力を等間隔の緯度経度グリッド上で圧力変動と海底面の勾配に応じて計算し、Green関数をたたみ込む事によって全体として励起されるRayleigh波とそれに対応したF-net array上での相互相関関数を求める。この結果についても観測データ同様にcross-correlation beamformingを適用して合成スペクトルを得ることで、最後にデータから得られるスペクトルとの比較・検討を行う予定である。