日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08P] PM-P

2023年10月31日(火) 17:00 〜 18:30 P11会場 (F203) (アネックスホール)

[S08P-07] 単一観測点のデータを用いたスロー地震の地震学的検出:日本・メキシコおよび全世界の観測点への適用

*増田 滉己1、井出 哲1 (1. 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

比較的新しく発見されたテクトニックな現象であるスロー地震はこの20年間で世界中の多くの地域で検出・解析されてきた(e.g., Obara, 2020)。しかし、地震学的および測地学的手法で観測されるスロー地震のシグナルは非常に小さいため、日本とアメリカ西海岸といった密な観測網が整備された地域では積極的に解析が進められているが、その他の地域におけるスロー地震の情報は限定的である。本発表では、世界中でより網羅的な解析を行うために開発した単一の地震観測点のデータからスロー地震活動を検出する手法の性能評価と適用例を報告する。
この検出手法の基礎となっているのは、地震性スロー地震の地震波エネルギーレートと地震モーメントレートが比例するという性質である(e.g., Ide et al., 2008)。高周波数帯域(2-8 Hz)と低周波数帯域(0.02-0.05 Hz)の地震波形から地震波エネルギーレートと地震モーメントレートに相当する量を計算し、それらの相関を評価することでスロー地震活動を検出する。
まず、網羅的にスロー地震活動が解析されてきている日本に適用することで手法の性能を評価した。本手法は10000秒の移動平均を用いているため本手法で検出しているのは従来「イベント」として定義されてきたものの群発的な活動であり、また観測点の近く(典型的には 30 km 以内)で発生している活動しか検出できないため、検出の時空間解像度は複数の観測点を用いた従来手法に劣る。しかし本手法の検出の9割は従来の検出と整合的であり、検出結果は正しいことが確認された。次に、新しいスロー地震活動を検出するためメキシコ沈み込み帯のゲレロ、オアハカ、ハリスコの3地域の観測点に適用した。ゲレロおよびオアハカ地域では別の単一観測点のデータを用いる解析結果があり(Husker et al., 2019)、本手法はその結果とおおむね整合的であった。ハリスコ地域ではGNSSデータを用いた長期的な解析は行われていたが、地震計データを用いた長期的な解析は本研究が初めてである。GNSSで検出されたイベントと整合的なタイミングで大規模な活動を検出したのみならず、これまで知られていなかった活動の検出にも成功した。さらに、予察的な結果ではあるが、この手法を世界規模で適用した結果も報告する。