日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

B会場

特別セッション » S21. 情報科学との融合による地震研究の加速

[S21] PM-1

2023年11月2日(木) 13:15 〜 14:45 B会場 (F201)

座長:縣 亮一郎(海洋研究開発機構)、加藤 慎也(東京大学)

14:15 〜 14:30

[S21-12] 深層作用素学習による地殻変動データからの断層形状およびすべり分布同時推定の試み

*岡崎 智久1、平原 和朗1、上田 修功1 (1. 理化学研究所 革新知能統合研究センター)

震源過程の理解のために、地震時地殻変動データから断層面上のすべり分布を推定する逆解析が実施される。断層面を仮定すると、すべり分布を求める線形問題となり解析的表式が得られるが(Yabuki & Matsu’ura 1992)、断層形状を同時に推定する場合は非線形問題となる。矩形断層を仮定すると、傾斜角のみを求める特殊な場合(Fukahata & Wright 2008)を除き、一般的にMCMC等の手法が用いられる(Fukuda & Johnson 2010)。

本研究では、地表変位データから曲がった断層を含む断層形状と、その断層上のすべり分布を同時に推定する深層学習モデルを検討した。一様半無限媒質における平面歪み問題において様々な断層形状・すべり分布に対する地表変位を順解析し訓練・テスト用のデータセットを作成した。近年、ベクトルを変換する関数を学習する一般的な深層学習と異なり、関数を変換する作用素を学習する深層学習の研究が行われている。その代表例であるDeepONet (Lu et al. 2021)を使用し、単純な全結合ニューラルネットワーク(FNN)と比較した。

まず、観測データが正確で密に得られる場合で数値実験を行った。一定の傾斜角をもつ断層で傾斜角を推定する場合は、傾斜角が極めて高精度で推定された。傾斜角が深さとともに変化する一般の曲線断層を推定する場合は推定誤差が大きくなるが、断層の大局的な形状は良く推定された。長波長のすべり分布は精度良く推定されたが、短波長のすべり変化は特に深部において平滑化される傾向があった。DeepONetとFNNはほぼ同等の性能であったが、訓練データセットと大きく異なる断層形状に対してはDeepONetの方がやや推定精度が高い傾向が見られた。発表では、観測点密度や観測誤差の大きさに対する依存性を併せて議論する。