日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

特別セッション » S22. 能登半島北東部の群発地震とM6.5の地震

[S22P] PM-P

2023年10月31日(火) 17:00 〜 18:30 P4会場 (F205・6側フォワイエ) (アネックスホール)

[S22P-01] 能登半島北東部の群発地震活動域における海陸統合地震観測

*蔵下 英司1、酒井 慎一2、篠原 雅尚1 (1. 東京大学地震研究所、2. 東京大学大学院情報学環)

能登半島北東部に位置する珠洲市付近では2018年頃から地震発生回数が増加傾向になり,2020年12月頃から地震活動がさらに活発化し,現在も継続している.また,2020年12月頃からの地震活動の活発化に同期するような珠洲市を中心とした局所的な非定常地殻変動が観測されている.この一連の地殻活動の中で,2022年6月19日にはマグニチュード5.4,最大震度6弱,2023年5月5日にはマグニチュード6.5,最大震度6強の地震が発生した.これまでの研究から,珠洲市付近の地震活動や地殻変動には地下深部に存在する流体の移動が関与する可能性が指摘されている(Nishimura et al., 2023). 2023年5月5日に発生したM6.5の地震は,それ以前の地震活動域の北端付近で発生し,それ以降の地震活動域は,珠洲市沖の海域に拡大し,これまでの地震活動とは異なる様相を示している.このM6.5の地震と地下の流体や構造、海底活断層との関係を明らかにし,この地域における地震発生過程を解明したい.最も基本的な情報になる高精度な震源分布を得る為には,震源域直上に地震計を配置した地震観測を行うことが望ましい.しかし,この震源域直上における海域の水深は100 m程度と浅く、水産活動等が活発な海域であるため,通常の海域観測に用いられる自由落下自己浮上式海底地震計による観測が難しい地域である.そこで,海域に広がった群発地震活動域の直上に,浅海用係留ブイ方式海底観測システム(篠原・他,本学会講演)を設置した.それと同時期に,陸域にも臨時地震観測点を集中設置することで稠密な海陸統合地震観測を実施した.
 海陸統合地震観測の内,海域では,浅海用係留ブイ方式海底地震観測システムを珠洲市北方沖に約5 km間隔で4か所,珠洲市東方沖に1か所に設置した.観測は,2023年6月26日から7月5日まで実施し,無事に全台回収できた.各観測点では,固有周波数15Hzの 3成分地震計とハイドロフォンを使用した観測を行った.収録は,Geospace社製のレコーダであるOBX-750を用い,サンプリング周波数を500Hzに設定して連続収録を行なった.陸域では,珠洲市北岸から東岸の海岸線沿いと県道52号線に1㎞~5㎞間隔で12か所に臨時地震観測点を設置した.観測は,海域での観測期間を含む2023年6月22日から7月25日まで実施した.各観測点では,固有周波数1Hzの3成分地震計によって上下動及び水平動の3成分観測を行った.収録は,Geospace社製の独立型レコーダであるGSX-3を用い,サンプリング周波数を250Hzに設定して連続収録を行なった.
 海陸統合地震観測で得られた記録は良好で,明瞭な初動を確認することが出来る.気象庁一元化震源リストによると,海域での観測期間中には群発地震活動域を含む研究対象地域(緯度37.4°-37.75°N:経度137.13°-137.5°E)でMj1.0以上の地震の震源が221個決定されている.本講演では,海陸統合地震観測の概要と,取得した海陸統合観測データの解析から得られた震源分布について報告する.

謝辞:本研究を実施するにあたり,文部科学省科学研究費助成事業(特別研究促進費)「2023年5月5日の地震を含む能登半島北東部陸海域で継続する地震と災害の総合調査」(代表:平松 良浩)と「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の支援を受けました.石川県漁業協同組合すず支所,珠洲市役所危機管理室,珠洲市教育委員会,珠洲市建設課上下水道局,石川県珠洲土木事務所,そのほか珠洲市の多くの方々にご協力をいただきました.解析に使用した震源リスト作成には,気象庁と文部科学省が協力してデータを処理した結果(気象庁一元化処理震源カタログ)を使用させて頂きました.ここに記して深く感謝の意を表します.