一般社団法人 日本医療情報学会

[3-A-4-CS7-2] 臨床医学研究での改正個人情報保護法への対応

大原 信 (筑波大学 医学医療系 臨床医学域 医療情報学)

「個人情報の保護に関する法律」の改正は、医学医療分野において、特に臨床医学研究にとっては、大きな影響を与えるものとなった。法改正の主旨は、個人情報の安全管理の徹底、目的外使用の制限、第三者提供の制限と言う基本方針を堅持するとともに、いわゆるビッグデータの利活用をより柔軟に推進する方針を打ち出すものである。この法律の改正によって、一連の研究指針も改訂され、臨床医学研究においては改訂された「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ガイダンス」を遵守して行われなければならない。今回、この倫理指針の改正点を中心として、臨床研究を実施する上での注意点・対応について概説する。
主な改訂内容は、①用語の定義の見直し、②インフォームド・コンセント等の手続きの見直し、③匿名加工情報および非識別加工情報の取扱に関する規定の追加、である。
 用語の定義の見直しについては、個人識別符号、要配慮個人情報、匿名加工情報および非識別加工情報等の用語が追加され、匿名化の定義が見直された。
 インフォームド・コンセント等の手続きの見直しについては、要配慮個人情報を研究対象者から取得又は他の研究機関へ提供する場合、研究対象者から原則として適切な同意を受けるための手続が追加され、適切な同意を受けることが困難な場合に、指針の規定に則りオプトアウトの手続にて要配慮個人情報を取得又は提供することが可能となった。また一方で、個人情報のトレーサビリティの確保に関する規定、海外にある者への試料・情報の提供に関する規定も追加された。
 匿名加工情報および非識別加工情報の取扱に関する規定の追加では、既に作成されている匿名加工情報を取り扱う場合でも、学術研究の用に供する目的で取り扱う場合は、匿名加工情報の作成、提供、識別行為の禁止及び安全管理措置等について、「個人情報の保護に関する法律」と同等の手続が必要となった。