一般社団法人 日本医療情報学会

[2-F-3-03] 「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き」の改定における無線LAN

*花田 英輔1 (1. 佐賀大学 理工学部)

EMC, Electromagnetic Environment, Wireless LAN, Tethering, Guidelines

電波環境協議会(EMCC)は、2016年に発行された「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き」(以下、「手引き」)の改定版を2021年7月に発行した。 2016年版の手引きは、医用テレメータ、無線LAN、携帯電話について、それぞれ発生し得る障害及びその対策、管理手法、環境測定手法等について記載している。
発表後、特に無線LANにおける新しい規格の普及が進展し、また2017年には医療機関が活用可能な「規程(案)」がEMCCから提示された。そこで手引きの改定が行われた。無線LANに関しては、新しい規格(IEEE802.11ax、またはWi-Fi6)への対応と共に、「テザリング」への対応、規程(案)を参照しての管理手法等が追加された。
無線LANに関する構成は2016年版とほぼ同様である。システムの概要を解説したうえで、チャネルの確認及び管理手法について示し、電波環境の簡易な測定方法(詳細な測定方法は付録に記載)、トラブル事例、医療機関における対応策、無線LANネットワーク整備・保守事業者における留意事項を記載している。さらに今回、付録として新たに「よくあるQ&A」集が掲載され、無線LANに関するものが含まれる。
近年、患者や訪問者により持ち込まれるスマートフォンやモバイルルータを用いたテザリングの使用が医療機関でも増えている。テザリングでは公衆網向けには携帯電話網を用い、内部向けには無線LANの規格に従う。従って、携帯電話と無線LAN機器の両方に配慮した管理が必要となる。主な注意点は、(1) 医療機器への干渉防止(「医療機器の上に置かない」等)、(2) 業務用無線LANとの干渉防止(使用可能エリアの限定などのルール設定)がある。この他にも、療養環境の保持に向けたルール策定が重要である。
今後、EMCCは総務省等と連携し、本手引きの周知に努める予定である。