一般社団法人 日本医療情報学会

[3-P-3-01] タイル指数を用いた中国西部における医療資源公平性に関する研究 ー日本をベースとしてー

*楊 雨辰1、小笠原 克彦2 (1. 北海道大学大学院保健科学院, 2. 北海道大学保健科学研究院)

Theil index, medical resources, health disparities

中国では、医療資源分布の公平性問題が医療改革を通して解決すべき問題の一つとなっている。中国の医療資源分布の現状について、既に様々な研究が省レベルで行われている。2009年の医療体制改革は、中国東部・中部・西部各地域での医療資源分布の公平性を加速させたと示唆しているが、市レベルのデータを用いた公平性分析は行われていない。また、中国の医療資源分布の公平性は、ほかの国との比較をした研究も見当たらなかった。本研究ではタイル指数を用いて、中国の陝西省・四川省・甘粛省(以下、西部三省)の市レベルデータを用いて、日本の県レベルデータをベースに、西部三省の医療資源(医師数、看護師数、医療施設数、病院数、病床数)分布の公平性を評価し、中国の省レベル公平性との比較を行った。
2019年、西部三省の人口数と医師数は日本の約1.2倍、面積と医療施設数は約三倍、看護師数は約1/3、病院数は約1/2、病床数は約2/3であった。全てのタイル指数を省間格差と省内格差に分解した結果、西部三省における医師数・看護師数の分布は、省間格差よりも庄内格差の方が圧倒的なものであった。日本に比べて、医師数・看護師数・医療施設数のタイル指数は高く、病院数・病床数のタイル指数は低い。タイル指数の分解では、日本を三つの地域に分別した場合、医師数以外のタイル指数は地域内格差と地域間格差の寄与率はそれほど大きい差はないが、それに対し中国では、省内格差の寄与率が85%以上であった。
この結果から、中国において、同じ省の中でも、市レベルで医療資源分布の格差は広く存在することが示唆された。そのため、中国の医療資源分布の公平性を評価するには、省レベルの分析だけでは不足であると考えられる。中国の医療資源分布の公平性問題を解決するためには、より細かいレベルでのデータを用いた分析を行う必要である。