一般社団法人 日本医療情報学会

[2-D-2-03] ブルーコール用診療録の作成と運用の評価

*岡垣 篤彦1、上尾 光弘1 (1. 独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター)

入院患者の急変を予想する目的でRapid Response systemの導入が進んでいるが、全ての急変を予測することは不可能である。予想されない急変が発生した場合、救急処置を施すことが最優先となり、記録をきちんと残せないことも多い。予想されない急変に対応するためにはあらかじめ対応手順を作成しておく必要があるが、それに加え、当院では急変時に簡便かつ高速に処置記録を行なう急変時経過記録システムを作成し実装した。システム実装前は急変患者の対応が落ち着いてからメモや記憶をたどって記載することが多く、詳しい処置の記載が行なわれていない傾向があった。このシステムでは、頻用項目を1クリックで記載し、記述が必要な部分はフリーテキストで入力し、これらの項目の配分を最適化することにより、切迫した状況下で診療行為を高速に記録できる仕組みとした。記録内容は電子カルテとして保存される。同様のシステムは救急外来や心臓カテーテル検査、脳血管アンギオ検査の記録にも実装していたが、院内急変時用に入力項目を最適化した。システム使用時と非使用時の記載の質の比較を行ない、システムの効果を評価した。当院で2016年3月から2022年7月までに登録されている入院中の急変患者は257件であったが、このうち42件で急変時経過記録システムを使用していた。システム使用時の記録は文字数で平均810文字であり、アクト数(記載項目数)の平均は23.0項目であった。使用しない場合のカルテ記載の平均は317文字、アクト数の平均は13.4項目であった。システム使用時は急変時の記録が2倍程度に増加していた。記載担当者を確保する手順としたことで記録が抜けることがなくなり、システムの導入で処置に遅れることなくリアルタイムの記録が可能となった。問題点として、急変時に招集されるスタッフにシステムの使用法を熟知させることが必要な点が挙げられた。