一般社団法人 日本医療情報学会

[2-G-2-03] transformerベースの対話モデルを用いた産後うつ対話システムの構築

*山下 晃平1、大脇 万起子2、中村 由美子3、竹村 匡正1、清水 公治4、湊 小太郎5 (1. 兵庫県立大学 社会情報科学部, 2. 大阪総合保育大学 児童保育学部, 3. 横浜創英大学 看護学部, 4. 京都大学医学部附属病院, 5. 奈良先端科学技術大学院大学)

Postpartum depression, dialog model, natural language processing

出産後の母親は子育てへの不安や生活環境の変化から精神状態が不安定になりやすいとされており、メンタルヘルスの悪化で自殺に至るケースもある。そのため、産後の母親への支援は重要であり、行政等の対策も取られている。これらの対応には、積極的傾聴を含む対話が有効であるとされており、相談窓口や専門家の対応があることが望ましい。しかし、行政や専門機関などでは、現実夜間の対応が難しいなど、人的・物理的に高コストであることが問題となっている。
そこで、本研究では、産後うつの母親のサポートを目的として、機械学習手法を用いた自然言語対話システムの構築を試みる。 具体的には、自然言語処理を始めとした様々な分野で利用されているtransformerベースの大規模言語モデルであり、rinna社が提供しているrinna/GPT2を用いる。このモデルを用いて、産後うつ患者用の対話モデルの実験的検証を行う。rinna/GPT2は、Wikipediaを中心とした大規模自然言語データを用いて事前学習した日本語に特化したモデルであり、そのモデルをファインチューニングすることによって、より少ないデータで特定のタスクに適用することができる。今回は、感情を誠実に包み隠さずに表現し、積極的傾聴を行う対話システムを構築するために、人手によって、システムとユーザの5ターン以上からなる対話を1組として作成し、これらのデータを用いてファインチューニングを行った。
結果として、対話そのものが破綻する場合もあるものの、積極的傾聴を行う自然な対話が行えるシステムが構築できる可能性が示唆された。今後は、LINE等を用いて実際に産後の母親に利用してもらえるシステムを構築し、客観的に評価してもらうとともに、より大規模な言語モデルを用いることによる、精度の高い対話システムの構築を試みる。