一般社団法人 日本医療情報学会

[3-A-2] 社会変革における医療情報の役割

*小笠原 克彦1 (1. 北海道大学 大学院保健科学研究院)

 我が国の総人口は、現在の1億2600万人から2050年には9500万人に減少すると予測されている。今後の25年で25%もの人口が減少することになり、加えて、高齢化率も現在の29%から39%と大きく増加する。特に北海道のような地方においては、この変化は顕著であり、今現状ですら地域医療の崩壊寸前にある中で、今後更に人口減・少子高齢化を見据えた大胆な変革が不可欠となっている。人口減・少子高齢化の時代を迎えつつある中で、これらの隙間を埋めるためにも、医療情報が果たす役割は大きいことは論を待たない。
 昨年第42回医療情報学連合大会の学会長・大会長講演からの1年間で、医療情報に関わる技術的・政策的な環境はますます変化している。技術面では、昨年11月に出現した生成AIはこの短時間に様々な用途で活用されることになり、今後ますますのAI研究の発展と医療での応用が期待されている。その一方で、医療機関の情報管理、特にランサムウェア対策が喫緊の課題となっている。政策面では、様々な課題もあるなかでマイナンバーカードの普及も大きくすすんだだけではなく、次世代医療基盤法が改正され、医療情報の活用が一層進むと考えられる。そのような中で、本第43回医療情報学連合大会の「医療情報の安全な流通と活用」は、まさに時流に即したテーマであり、社会変革における医療情報を考える上で、今後の試金石になるであろう。
 そこで本講演では、医療情報学の政策から研究・教育までを俯瞰した昨年の「社会基盤としての医療情報の役割」をさらに発展させ、今後の人口減・少子高齢化に向けた医療情報の課題と可能性を中心に「社会変革における医療情報の役割」を深耕したいと考えている。