日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC25_30AM1] 人間環境と災害リスク

2014年4月30日(水) 09:00 〜 10:45 421 (4F)

コンビーナ:*青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、鈴木 康弘(名古屋大学)、小荒井 衛(国土地理院地理地殻活動研究センター地理情報解析研究室)、須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、宇根 寛(国土地理院)、中村 洋一(宇都宮大学教育学部地学教室)、松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学専攻)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)、原 慶太郎(東京情報大学総合情報学部)、座長:青木 賢人(金沢大学地域創造学類)

09:15 〜 09:30

[HSC25-02] 衛星データによる土地被覆分類のための季節景観情報の利用

*黒木 貴一1 (1.福岡教育大学)

キーワード:阿蘇山, 土地被覆分類, ALOS, 季節変化, 自然条件

衛星データで土地被覆分類を行う際,季節別の景観の影響を無視できない。このため解析では,有効な土地被覆分類ができる良い季節に取得されたデータを常に選定する必要がある。季節による景観変化は,自然条件に限らず人間活動でも引き起こされる。分類に使用されるデータの解像度が高いほど,結果には人間活動による景観への影響が増す。そこで分類に人間活動を考慮すると,自然条件に対し現実的ではない結果になると思われる。しかし私たちは人間活動に基づく土地被覆分類が自然条件の分類に与える影響と,その解決策に関しては,あまり興味を示さなかった。そこで本研究では,毎年景観変化が顕著な阿蘇山を対象に,人間活動に基づく季節別の土地被覆分類をまず実施する。次に,分類画像で識別できる人間活動の兆候などからその精度を確認する。最後に,その分類が阿蘇山の自然条件分類に及ぼした影響を検討し,自然条件の分類の問題に対する解決案を提示する。分類には2010年春,2006年夏,2008年秋,2007年冬に取得された4時期のALOSデータを使用した。対象地域を教師付最尤法により緑草,枯草,樹林,耕地,市街地,野焼きに6分類した。全季節の土地被覆分類図では,カルデラ壁と中央火口丘山麓の樹林,カルデラ底の耕地と市街地に関しほぼ同じ分布を確認できた。一方外輪山と中央火口丘山腹では季節ごとに異なる項目の分布が示された。それらは9月に緑草,11月に緑草,耕地,枯草,2月に枯草,4月に緑草,枯草,野焼きである。つまり土地被覆分類画像では,季節による大きな景観変化が外輪山と中央火口丘山腹の草地で識別される。この景観変化の解釈から,草原管理組合の境界,野焼きの防火帯などの人間活動の兆候が鮮明に読み取れた。しかしその分類作業では,中央火口丘の頂上地域,中央火口丘の火口湖,溶岩円頂丘の開析谷,カルデラ壁の旧斜面崩壊地に対し,火山の自然条件を適確に示す分類画像を誘導できなかった。そこで,中央火口丘の頂上地域で,自然条件の区分毎にその分布をよく示す季節の分類画像を選定した。各画像の分類項目を自然条件の区分に再分類し,それに10の累乗の値を与えた。最後に各再分類結果による重ね合わせ分析から,火山の現実的な土地被覆分類結果を得られた。つまり本研究では,人間活動に基づく季節景観情報を用いて自然条件の特徴を示す土地被覆分類を精度よく実施できることがわかった。