日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS29_29PM1] 地震・火山等の地殻活動に伴う地圏・大気圏・電離圏電磁現象

2014年4月29日(火) 14:15 〜 16:00 313 (3F)

コンビーナ:*児玉 哲哉(宇宙航空研究開発機構宇宙利用ミッション本部地球観測研究センター)、井筒 潤(中部大学 工学部)、芳原 容英(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)、長尾 年恭(東海大学地震予知研究センター)、座長:井筒 潤(中部大学 工学部)、芳原 容英(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)

15:00 〜 15:15

[MIS29-04] 再び地震直前の電離圏電子数上昇について:移動性の識別と受信機周波数間バイアスの推定

*日置 幸介1 (1.北海道大学理学研究院自然史科学)

キーワード:GNSS, GPS, 電離圏, 地震, 前兆, 全電子数

日置(GRL 2011)は、GNSS観測に基づき、東北沖地震を含むM9クラスの地震の約40分前から電離圏全電子数(TEC)が上昇することを報告した。それに関してKamogawa & Kakinami (JGR 2013)は、津波によって生じる地震後のTEC急減と、地磁気活動によるTECの非地震性のゆらぎの双方の効果で生じた見かけの変化であると主張した。その後、Heki & Enomoto (JGR 2013)は、鉛直TEC(VTEC)と他センサー(イオノゾンデ、地磁気偏角、GPS掩蔽)のデータを用いてこれに反論し、かつ非地震性のTEC変動を判別する可能性について論じた。本講演では地震直前の電子数上昇に関して残された諸問題から、(1) 地磁気活動に起因する移動性擾乱との識別、(2) 鉛直TECの計算に必要な受信機固有周波数間バイアスの国外局での推定、(3) 中緯度域と赤道域でのTEC上昇量の違い、(4) 地震前の上昇と地震後のTEC減少との量的関係、等について論じる。図の説明と参考文献は英語版参照のこと。1. 移動性擾乱との数値的な識別地震と関係ないTECの変動は珍しくないが、半球スケールで発生する太陽フレアによるTEC急増と、空間スケールが数十km以下と小さいスポラディックE(Maeda & Heki, Radio Sci. 2014)に関しては、それらの識別は難しくない。磁気嵐に伴ってオーロラ帯で励起された内部重力波は、大規模移動性電離圏擾乱(LSTID)として日本列島に南下してくる。これらは数百キロから千キロにおよぶ空間スケールを持つため、移動性の有無から地震直前の異常と識別する必要がある。本講演では日本列島に沿って適当な数選んだGNSS局のTEC時系列間で相互相関をとる数値的手法について論じる。それらの発生を日本列島北部で把握することによって、日本列島中央部で発生したTEC異常が、それらが伝搬したものであることを自動的に判別する方法を探る。2. 受信機内周波数間バイアスの推定GPSで観測される斜めTECには衛星の移動に伴う見かけの変化が含まれ、実際の変化の直観的把握が難しい。Heki & Enomoto (2013) では、電子航法研究所が日々公開している受信機固有および衛星固有の周波数間バイアスと、コードと位相の比較から求めた整数値不確定性を補正の上、F層への入射角の余弦をかけて求めたVTECの時系列を議論することで、この問題を回避した。本講演では、受信機固有の周波数間バイアスが公開されていない国外局について、全球電離圏マップ(GIM)等を用いてそれらを簡便に求める手法について論じる。さらにそのようにして求め周波数間バイアスを用いて計算した、2007年や2012年のスマトラ島周辺の巨大地震や2010年マウレ地震直前のVTEC変化を議論する。3. 中緯度域と赤道域の比較これまでに発生直前にTEC異常が見られた地震における、代表的なTEC時系列の例を添付の図に示す。Heki (2011) 以降に解析した地震としては、2007年ブンクル地震 (Mw8.5) と2012年北スマトラ沖地震 (Mw8.6) とその最大余震 (Mw8.2) が含まれている (Cahyadi & Heki, JGR 2013)。2004年スマトラ・アンダマン地震 (Mw9.2) を含めると、これらの赤道域で発生した地震の前のTEC異常は、日本やチリなどの中緯度域で発生した異常より一回り大きいように思われる。赤道域では本来のTECが大きく、かつ地磁気伏角が浅いため電離圏内で電子が水平移動しやすい。これら二点が大きな振幅に影響している可能性を議論する。4. 地震前のTEC上昇と地震後のTEC減少との量的関係Shinagawa et al. (2013 GRL) は、地震約10分後に音波が到来した後に、電子数が短いパルス状の増加を見せた直後に減少する事について、数値計算によってモデル化した。地震前の上昇と地震10分後の減少は違う物理現象に基づいており、それらの量が短い時間スケールで厳密に一致する(減少後のTECが前兆開始前の状態に戻る)可能性は低い。2004年スマトラ・アンダマン地震や2007年ブンクル地震の例では、地震後の急減が過剰であるためある種のovershootが見られ、その後減衰振動を繰り返しながら本来の太陽天頂角に見合った量に収束する様がみえる。逆に2012年スマトラ北部沖地震のように減少不足で10分以上かけて徐々に本来の状態に戻るように見える地震もある。