日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

2016年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 A03 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(海洋研究開発機構 地球深部ダイナミクス研究分野)、相木 秀則(海洋研究開発機構)、座長:吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

16:30 〜 16:45

[MIS10-05] 吸収線輪郭から探る太陽表面対流速度の高さ構造

*大場 崇義1飯田 佑輔2清水 敏文2 (1.総合研究大学院大学物理科学研究科、2.宇宙科学研究所/宇宙航空研究開発機構)

キーワード:対流、太陽

恒星において流体の対流現象は, 内部のエネルギー輸送やひいては恒星大気活動などその全域で重要な役割を果たす. 恒星の内部構造は, コアにおける核融合反応によって発生したエネルギーを如何に宇宙空間に運びだすかで決定される. この恒星における対流の働きを理解する上で, 我々に最も近くに位置する太陽は最もよい例となる. 太陽では, コアで発生したエネルギーは光の放射で外層に運ばれる.ある程度外層(~0.7 太陽半径)まで達すると, 流体による対流運動により運搬される。その対流運動は, 私たちが可視光で観測できる太陽表面に達し, そのガス運動はさらに上空の大気 (コロナ) の加熱や様々な大気ダイナミクスのエネルギー源となる. このように太陽表面対流は内部から運搬されたエネルギーを大気に伝える役割を果たすが, その運動は完全に理解されているわけではない. 私達が見ることができる太陽表面は明るい「粒状斑」と暗い「間隙」で覆われている. 粒状斑は内部からの 対流が吹き出した上昇流領域であり, 間隙はそれが下降流に転じた領域である.この上昇流が下降流に転じる過程は, 主に数値シミュレーションによって研究されている. しかしながら, 実際の太陽においてこの速度を失うプロセスが何の物理過程によって起こっているかは定かではない. このプロセスは高さ方向への運動中に起こるが, 観測 データから十分な時間・空間分解能を持って対流速度の高さ構造を取得できないという問題があった. 本研究では, 太陽観測衛星「ひので」の可視光望遠鏡/スペクトロポラリメータ (SOT/SP) の分光データに吸収線輪郭の解析を行うことで, 対流速度の高さ変化を調べた. ある原子や分子における吸収線輪郭において異なった輝度はそれぞれ異なった高さを反映する. そのため, 輝度毎のドップラー速度は高さ毎の速度に対応する. 宇宙空 間から安定した観測を実施できる「ひので」は, 粒状斑と間隙を空間分解した上で高精度の吸収線を観測できる点から, 本解析に最適である. 得られた対流速度を粒状斑・間隙に分類して解析を行った. 粒状斑においては上昇流 が加速したのちに減速に転ずる傾向が見られた. 一方で間隙においては沈みこむにつれて下降速度が大きくなる傾向を捉えることができた. 間隙において下降速度場が大きくなることは, 従来の 1 次元定常大気の描像では説明できない. 講演では加速を引き起こすメカニズムの候補について議論する.