日本地球惑星科学連合2016年大会

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[O-02] 高校生によるポスター発表

2016年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、久利 美和(東北大学災害科学国際研究所)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構 地球環境変動領域)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、山田 耕(早稲田大学政治経済学術院)

13:45 〜 15:15

[O02-P12] 氷の気泡内の空気の温度圧力環境(第1報)

*臼井 滉平1、*足立 敬一朗1北條 健太1越前 太智1岡本 恒輝1篠田 睦生1畑中 拓1藤原 未奈1森山 李玖1 (1.兵庫県立西脇高等学校 生物部)

キーワード:気泡、密度、膨張率

1.はじめに
気泡の入らない氷は粒が細かいため舌触りがよい。実験を始めた5月はすでにかなり暑さが厳しく、気泡が入らない舌触りのよい氷を作ろうとした。しかしどうしても気泡が入らない氷を作ることはできなかった。ある日、氷の気泡が金属の凝固過程で残存して欠陥材料の原因になる気泡や、兵庫県北部の巡検調査で採取した岩石のマグマの冷却過程でガスが抜けた穴によく似ていると思われた。氷の気泡の研究は、これらが形成される環境を考察する手がかりになる。そこで、こんどは気泡が多く入った氷を作り、気泡の温度や圧力を明らかにすることを目的に研究を始めた。

2.実験結果
冷却速度や冷凍庫内の温度を様々に変えて純水を冷却し、気泡が多い氷や少ない氷を作った。純水に空気を注入したり沸騰させたりせず、すべての実験の製氷は同時におこなった。
(1)氷に閉じこめられた気泡の温度変化
仮説に反して、氷内部にできた気泡の温度は、急冷か徐冷か、気泡の多少に関わらず、いずれも冷凍庫内の温度よりも1℃~3℃程度高く平衡に達した。
(2)氷の密度と膨張率
急冷実験では、気泡が多く入っているにもかかわらず密度の変化に有意な差がみられない。膨張率がわずかに小さいこともある。
(3)氷の気泡に閉じこめられている空気の体積
急冷して結晶化した氷は膨張率や密度の変化率に有意差を示さないが、多くの空気を気泡として含む。多くの空気が閉じこめられているにもかかわらず、急冷した氷の方が膨張率はむしろ小さい傾向にある。

3.全体のまとめと考察
同じ純水を冷却して氷を作ったため、気泡の多少は、もともとの純水に含まれていた空気の量によるものではなく、冷却速度の違いによる。内包される空気の量が多いにもかかわらず氷全体の膨張率が変わらないことや、気泡が多い氷でも密度の変化に有意な違いがみられないことから、急冷して結晶化した氷の気泡には、内部の空気に向かって高い圧力がかかっている可能性がある。
金属が凝固する過程で気泡が入ると、商品にならない。地下深部のマグマが固化して気泡を生じるとき、大規模な珪長質マグマだまりでは、体積が膨張できない。これらのように、体積が膨張できない状態で多くの気泡を生じる環境は、温度や圧力などが桁違いではあるが、本実験の環境と類似点も多い。

4.今後の課題
氷に内包される目に見えない微細な気泡が、急冷と徐冷の気泡内の温度に影響している可能性がある。相平衡関係を動的にとらえる必要があるため、現在の段階では、金属や岩石の気泡の環境を本実験とただちに結びつけることはできない。