日本地球惑星科学連合2016年大会

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[O-04] ジオパークへ行こう

2016年5月22日(日) 15:30 〜 17:00 国際会議室 (2F)

コンビーナ:*渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、座長:渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

16:00 〜 16:30

[O04-05] Mine秋吉台ジオパークへ行こう!

★招待講演

*小原 北士1 (1.Mine秋吉台ジオパーク推進協議会)

キーワード:ジオパーク、ジオツーリズム、Mine秋吉台ジオパーク、カルスト台地、石灰岩

Mine秋吉台ジオパークは、山口県西部に位置する美祢(みね)市全域を範囲としている。本地域の中央部には、石灰岩が雨水や地下水に溶かされてできたカルスト台地「秋吉台」が広がる。地表には白~灰色をした無数の石灰岩や、カルスト地形特有のすり鉢状の凹地が、地下には「秋芳洞」に代表される鍾乳洞が見られる。地域住民は、小さな凹地の底に畑を、大きな凹地の中に集落を形成したり、石灰石(石灰岩)を採掘するなど、カルスト地形を活かした暮らしを行ってきた。また、秋吉台の一部は、国内では数少ない草原環境が人々の手によって守られている。秋吉台上は、古くより周辺住民の共有の場として採草や耕作に利用されていたが、陸軍が、演習場として使用するために、現在まで続く「一斉に火入れを行う」スタイルを約90年前に確立した。現在の火入れは、観光地としての景観維持や草原性動植物の生息・生育場所の保全を目的に、「秋吉台山焼き」の名称で毎年2月に住民総出で行われている。
このように地域を支えてきた石灰岩は、かつてサンゴ礁を形成していた生物の化石が積もって固まったものである。サンゴ礁は、大陸から遠く離れた海山で、約8千万年もの長い年月をかけて堆積した。そして、海山は海洋プレートの動きによって移動し、最終的に大陸の底部に衝突した。実は、日本列島の大部分が同様の仕組みで作られており、本地域の成り立ちを知ることは、日本列島の成り立ちを知ることにも繋がる。さらに石灰岩は、サンゴ礁が形成された時代の気候をはじめとする過去の地球環境の解明と、それに基づいた将来の地球環境の予測に役立つなど、様々な情報を包有する。
また、本地域には石灰石以外にも多様な鉱物資源が存在する。西部には大嶺炭田と呼ばれる石炭層が存在する地域が広がる。大嶺炭田では、日本ではほとんど産出しない「無煙炭」という燃焼時に煙の出にくい、炭化の進んだ石炭を産出する。これにより、1904(明治37)年には海軍省による大規模な炭鉱開発が行われた。また、主に東部には、銅をはじめとする鉱山跡がいくつも存在する。中でも長登(ながのぼり)銅山は、8世紀初頭より稼働していた日本最古の国営銅山で、東大寺大仏の料銅を産出した銅山である。このように、本地域は鉱物資源という地球からの恵みにより発展してきた歴史をもつ。
本地域では、カルスト台地をはじめとする地形や地質を巧みに利用した地域住民の暮らしが、地球のプレート運動の恩恵によって成り立っていることを、ジオツアーを通じて伝えたいと考えている。それを知ることは、変動帯に位置する日本列島に住む私たちにとって、とても重要なことである。本発表を通して、Mine秋吉台ジオパークに少しでも興味を持ち、実際に足を運んでいただけるとうれしい限りである。