日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM17] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、成行 泰裕(富山大学人間発達科学部)、中村 匡(福井県立大学)、杉山 徹(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球情報基盤センター)

17:15 〜 18:30

[PEM17-P05] 惑星磁気圏におけるコーラス放射発生過程の計算機実験

*加藤 雄人1深沢 圭一郎2 (1.東北大学大学院理学研究科、2.京都大学学術情報メディアセンター)

キーワード:ホイッスラーモード・コーラス放射、惑星磁気圏、計算機実験

惑星磁気圏に共通して観測されるプラズマ波動として、周波数が時間的に変化するコヒーレントな波動であるホイッスラーモード・コーラス放射が挙げられる。コーラス放射は惑星磁気圏の磁気赤道領域を発生源として、keV帯の高エネルギー電子との非線形波動粒子相互作用によって生成されることが明らかとなっている[e.g., Katoh and Omura, GRL 2007a]。さらに、コーラス放射の発生過程では、相対論的な高エネルギー電子を作り出す非断熱加速過程も同時に生じることが、近年の計算機シミュレーションにより明らかとなった[Katoh and Omura, GRL 2007b;Katoh et al., Ann. Geophys. 2008]。近年では、磁気嵐回復相における地球放射線帯外帯電子の加速過程においてコーラス放射が重要な役割を果たすとされ、また、木星放射線帯の形成過程においてもコーラス放射の重要性が指摘されている[e.g., Horne et al., Nature Physics, 2008; Katoh et al., JGR 2011]。
一方で、スペクトル特性と相対論的電子加速過程との関連や、探査機による観測結果に見られる惑星磁気圏ごとのスペクトルの違いについては、未解明の問題が多く残されている。木星は太陽系最大の磁気圏と放射線帯を有しているが、コーラス放射の波動強度は地球磁気圏のコーラス放射よりも一桁以上小さいことが明らかとなっている[e.g., Katoh et al., JGR 2011]。どのような環境で相対論的電子が高効率に作り出されるかを理解する上で、コーラス放射の波動特性がどのように決定されるのかを理解する事は重要である。
本研究は惑星磁気圏でのコーラス放射の波動特性を理解する事を目的として、惑星磁気圏の構造を解くMHDコードと、磁力線上を運動する高エネルギー電子とプラズマ波動との相互作用を解く電子ハイブリッドコードとを用いた連成計算機実験を実施する。コーラス放射の波動特性は、磁力線に沿った背景磁場の空間勾配と、波動の励起エネルギー源であるkeV電子の速度分布関数とによって大きく変化する事が電子ハイブリッドコードを用いた計算機実験により明らかとなっている。この知見に基づき、木星磁気圏においてGalileo探査機によりコーラス放射の発生が同定されている5-20木星半径の領域を対象として、MHDシミュレーションにより背景磁場の空間勾配の変動範囲を同定し、さらに同定された背景磁場構造を初期条件として電子ハイブリッドコードを用いたシミュレーションにより、コーラス放射の発生条件とその波動特性を明らかにする。