日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS12] 太陽系における惑星物質の形成と進化

2016年5月24日(火) 13:45 〜 15:15 104 (1F)

コンビーナ:*宮原 正明(広島大学理学研究科地球惑星システム学専攻)、山口 亮(国立極地研究所)、臼井 寛裕(東京工業大学地球惑星科学科)、癸生川 陽子(横浜国立大学 大学院工学研究院 機能の創生部門)、藤谷 渉(茨城大学 理学部)、瀬戸 雄介(神戸大学大学院理学研究科)、伊藤 正一(京都大学大学院理学研究科)、座長:癸生川 陽子(横浜国立大学 大学院工学研究院 機能の創生部門)

14:45 〜 15:00

[PPS12-17] 平衡コンドライト中のオリビン負晶の3次元形状:平衡形の推定とヒールドクラックの新旧関係

*中村 隆太1土山 明1三宅 亮1瀧川 晶1,2伊神 洋平1大井 修吾3中野 司5上杉 健太朗4竹内 晃久4松本 徹6 (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻、2.京都大学白眉センター、3.滋賀大学教育学部、4.高輝度光科学研究センター、5.産業技術総合研究所地質情報研究部門、6.宇宙航空研究開発機構/宇宙科学研究所)

キーワード:平衡形、負晶、平衡コンドライト、オリビン、表面自由エネルギー、新旧関係

オリビンは地球から宇宙にかけて普遍的に存在する鉱物であり、その結晶形状を理解することは様々な物理化学プロセスに影響するため重要である。例えば、進化末期星の周りで観測される赤外線スペクトルの微細構造は粒子形状に影響される(e.g., [1])。また、地球の水の起源の一つの鉱物吸着水はオリビン表面の水分子吸着の異方性の影響を受ける[2]。結晶形状には成長形と平衡形という考え方がある。成長形は成長環境を反映する結晶形状であり、平衡形は表面自由エネルギーと面積の積の総和が最小となる形状である。成長形は実験や天然の試料から求められてきたが、平衡形は理論的な手法のみである。最近、オリビンの平衡形は第一原理計算による表面自由エネルギーに基づいて議論されている[3]。しかし、天然のサンプルからオリビンの平衡形を求めた研究は存在しない。昨年度の連合大会では一つの平衡コンドライト中のオリビンから、負晶の形状を抽出し平衡形を議論した[4]。本研究では複数の平衡コンドライトから平衡形を推定した。また、負晶形状からannealの程度を調べ、比較することでヒールドクラックの新旧関係も求めた。
サンプリングはTuxtuac(LL5)から3つとY793214(LL5)から2つ、Kilabo(LL6)隕石から2つ行った。サンプリング手順は偏光顕微鏡によって空隙が面上に分布しているところを探し、FIB (FEI Quanta 200 3DS)によりマイクロサンプル(20-30um)を作成した。サンプルはマイクロ CT 撮影(SPring-8 BL47XU 7-8 keV 実効空間分解能:約150nm)を行い、3次元形状を把握した。サンプルの結晶方位は母結晶のSEM/EBSD(JEOL 7001F/HKL CHANNEL5)により決定した。CT画像とEBSDの結晶方位から負晶の軸長比の抽出と結晶面の同定を行った。
負晶は0.5-8.0umのサイズでヒールドクラックだと考えられる面上に分布していた。2つのヒールドクラックが存在するサンプルも存在した。Tuxtuac隕石サンプル中のオリビン負晶はサイズに関係なく軸長比が似ていることから、熱変成または衝突時加熱によるannealをよく受けていて平衡形に近づいていると考えられる。これらの負晶において発達している面は{100}と{010}、{021}面であった。第一原理計算によると (100)面は表面自由エネルギーが高い[3]ため本来現われないはずである。{100}が出現したことは第一原理計算と負晶の生成条件の相違が原因であると考えられる。原因としてはCO分子の表面吸着か化学組成の違いによる可能性が挙げられる。最後に、ヒールドクラックの新旧関係は、同じ熱履歴を持つ同一岩片内のヒールドクラックについて、負晶の軸長比のばらつきを比べることでannealの程度を比較し、ヒールドクラックの新旧関係を求めることが可能であった。
[1] Takigawa et al. (2012) ApJ, 750:149.
[2] de Leeuw et al. (2000) Phys Chem Minerals, 27:332.
[3] Bruno et al. (2014) JCP, 118:2498.
[4] Nakamura et al. (2015) JpGU, PPS22-06.