日本地球惑星科学連合2016年大会

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[U-04] 連合は環境・災害にどう向き合っていくのか?

2016年5月25日(水) 13:45 〜 15:15 国際会議室 (2F)

コンビーナ:*田中 賢治(京都大学防災研究所)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)、座長:田中 賢治(京都大学防災研究所)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)

14:30 〜 14:45

[U04-03] 地質地盤情報と法整備

*栗本 史雄1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:地質地盤情報、法整備、共有財産

1. 現状の問題点
日本は世界有数の変動帯に位置し、地震・火山が多く、地質・地盤の条件が人々の生活に大きく影響している。地質地盤情報は、地震・火山・地すべりなどに対する防災・減災、国土開発・インフラ整備、産業振興、資源開発、環境保全などに必須のものであり、安全な国民生活にとって欠くことのできない国土の基本情報といえる。
しかし、現実には地下の地質地盤情報は、適切な管理と十分な活用が行われていない。いくつかの要因が考えられるが、地下は直接、目で見ることができないため、災害が頻発しているにもかかわらず、情報の重要性を認識するのが難しい。国土開発やインフラ整備に関しては、地質地盤情報を考慮しない建設・工事は予算・安全性等について将来に瑕疵が残ることがある。地質地盤情報は日々取得されているが、データベースとして十分に整備されないまま破棄されたり、散逸したりしている。このような状況を改善し、地質地盤情報の整備と活用を促進する社会の仕組みを構築することが求められている。
2. 技術開発と法整備
地質地盤情報を国民の共有財産として認識し、整備・活用を進めるためには、技術開発と法整備が必要である。まず技術開発については、情報の精度を向上させ、フォーマット統一によって情報整備の徹底を図り、国・県・市町村や民間データなどの共有化システムを構築することが必要である。数値化やデータベース化の促進、3次元モデル構築による地下の可視化などの技術開発も必要である。一方、法整備については、法体系を整え国の方針を明示することが必須であり、特に地方自治体の情報の取扱いや民間データの整備・活用に効果がある。このように技術開発と法整備を両輪として、社会における仕組み作りを進めることが喫緊の課題である。
3. なぜ法整備が必要か
地質地盤情報や防災に関連する法律として,地理空間情報活用推進基本法(2007年)、海洋基本法(2007年)、「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に関する国土強靭化基本法」(2013年)、水循環基本法(2014年)などが施行されているが、地下の地質地盤情報に関する法律がない。
このような状況では、地質地盤情報の管理や活用が不十分のまま取り残され、情報の消失や散逸の危惧がある。そこで、地質地盤情報を国民の共有財産として整備・活用するために、領土・領海内の地下における地質地盤情報の整備・管理・共有化・利用に関する「地質地盤情報活用推進基本法(仮称)」が必要と考える。この法律は、国、地方自治体、民間、公共機関等の保有するすべての情報を対象とし、地質地盤調査で得られたボーリングデータをはじめ、物理探査、地下水、化石などすべての地質地盤情報を取り扱うこととする。法的根拠が明確になれば、技術開発との相乗効果により、情報の所得、整備、公開、活用が促進され、地方自治体や産業界での情報活用の拡大、新ビジネス創出、国民の意識向上などが期待される。なお、日本学術会議地球惑星科学委員会(2013)はこの趣旨を提言として発出した。また、栗本(2015)は10年間の法整備に関する活動を整理した。
4. 将来に向けて
今後の活動については、①学会活動、②地方自治体、③市民・国民世論の醸成、④立法・政策の様々な立場での活動を進める必要がある。①学会活動では、日本学術会議の提言(2013)や講演会(日本学術会議地質地盤講演会準備会,2016)が挙げられる。今後、防災学術連携体(日本学術会議、2016)との連携により関連学会が中心となって、技術開発と法整備に対する活動を推進することが求められる。②地方自治体は住民と直結していることから、地質地盤情報を活用した安全で住みやすいまち作りの政策に取り組むことが期待される。③市民レベル・国民レベルでは、地質地盤情報の有用性の認識を高めることが重要であり、広報活動による世論の醸成が重要である。④立法を担う議員や政策を担当する省庁は地質地盤情報の重要性と法整備の必要性を認識し、その実現に向けて取り組むことが期待される。それぞれの活動の連携・統合により技術開発と法整備が進み、社会における地質地盤情報の活用がさらに加速されることが期待される。
文献
栗本史雄(2015)地質地盤情報の活用促進と法整備.GSJ地質ニュース,4,107-113.
日本学術会議(2016)学術フォーラム;防災学術連携体設立記念「防災学術連携体の設立と東日本大震災の総合的対応の継承」,76p.
日本学術会議地球惑星科学委員会(2013) 提言:地質地盤情報の共有化に向けて-安全・安心な社会構築のための地質地盤情報に関する法整備-.日本学術会議,21p.
日本学術会議地質地盤講演会準備会(2016) 日本学術会議公開講演会「強靭で安全・安心な都市を支える地質地盤の情報整備-あなたの足元は大丈夫?-」講演要旨集,27p.