日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS08] 活断層と古地震

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所、共同)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)

[SSS08-P31] SAR衛星の干渉解析による余効変動の面的分布抽出と地震に起因する地殻変動との比較

*三五 大輔1小俣 雅志1郡谷 順英1谷口 薫1 (1.株式会社パスコ)

キーワード:干渉SAR解析、余効変動、2016年茨城北部地震、2016年熊本地震

大地震の後には余効変動が発生することは知られているものの,余効変動に起因する地盤変動の詳細情報はあまり細かくわかっていないことが多い.例えば,平成28年熊本地震ではGPS計測(国土地理院,2017)及び干渉解析(三五ほか,2017)で余効変動の発生が確認されている.しかしながら,これまで余効変動はその範囲,変動期間,変動量について検討することは困難であった.余効変動による地盤変動が続いていると,復興工事後に構造物に変形が出る可能性があるため,大地震後の余効変動に起因する地盤変動の詳細について調査研究を進めることは重要である.

2016年12月28日に発生し,最大震度6以上を記録した平成28年茨城県北部の地震では,GPS計測等で余効変動の発生が確認されているが(国土地理院,2017),変動の詳細な面的分布は不明であった.そこで,SAR衛星による地震発生直後の観測データ,及び地震後概ね1年経過した観測データを用いて干渉解析を行い,余効変動の面的分布の算出を試行した.

その結果,平成28年茨城北部の地震による余効変動の面的分布を確認することができた.また,LC-InSAR図で判読し,現地で確認した地表変状と,余効変動による干渉縞の不連続とはほぼ一致し,上盤側である南西側が衛星から遠ざかる方向へ変動することが確認できた.

次に,平成28年熊本地震と平成28年茨城北部地震における本震に起因する地盤変動と余効変動に起因する地盤変動とを比較した.平成28年熊本地震では,地震時には日奈久断層帯北部では地形的に明瞭で既往の活断層図(中田ら,2002)で示された断層線に明瞭な地表地震断層が確認された.しかしながら,干渉解析ではこの断層線の西側に地殻変動を示す干渉縞のギャップが確認できた.一方で,余効変動に起因する地殻変動では,地表地震断層の確認された既往の断層線に近い位置で変動が確認され,地震時の地殻変動と予効変動の位置のずれが確認された.また,地震時には地表地震断層が確認されていない布田川断層帯の宇土区間に相当する範囲において,地震後のペアによる干渉解析では,余効変動を示唆する干渉縞のギャップが確認された.

平成28年茨城北部地震では,本震に起因する変動と比較して,余効変動に起因する地殻変動では地盤変動の範囲が小さく,断層の北東側では変動が見られない.また,変動量が最大となる位置が南東側に移動していることが確認できる.

以上のように,干渉解析により余効変動による面的な分布が把握できるようになってきた.これにより,地震時の地盤変動と余効変動に起因する地盤変動とは動きが異なる事例が明らかとなってきた.

国産のSAR衛星は国内を定期的に観測するため,余効変動の抽出に資するデータが蓄積されつつある.今後は,これらの観測データを用いて,地殻変動の範囲と変動の時間変化についてモニタリングしていくことが望まれる.



【引用文献】

国土地理院(2017)平成29年12月の地殻変動について,国土地理院HP

三五・小俣・郡谷(2017)SAR衛星の干渉解析による平成28年度熊本地震余効変動の計測の試行,日本活断層学会2017年度秋季学術大会講演予稿集

中田・今泉編(2002)「活断層詳細デジタルマップ」東京大学出版会.