日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-05] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 102 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、座長:畠山 正恒(聖光学院)、丹羽 淑博

15:00 〜 15:15

[G05-06] 大学総合科目「地学」履修登録者の動向と講義内巡検の実践報告

*中村 修子1,2杵島 正洋1,3 (1.慶應大学 理工学部、2.笹川平和財団 海洋政策研究所、3.慶應義塾高等学校)

キーワード:講義内ミニ巡検プログラム、大学総合科目「地学」

著者は 2013 年度より2018年現在までの6年間、慶應義塾大学において学部生向け一般総合科目「地学」を担当している。半期15回週1時間 (90分)の講義を前期・後期と独立して受け持ち、前期は地球惑星の成り立ち(固体地球・大気海洋と気候変動の地球惑星システム、およびIPCC や SDGsなど政策面の世界動向までも含む)、後期は生命史を地球環境変動との共進化という視点で紹介している。

 この総合科目は、日吉キャンパスに通う学部1, 2年生対象に開講しているが、実際には三田キャンパスの3, 4 年生までが登録している。1コマの登録学生数が150名を越える (同講義を2コマ担当)、大教室でのマス講義となっている。履修者の構成は、文学・経済・法学・商学・薬学・情報学部で半数は文学部が占めている。一方、理工学部の学生は必修科目との関係上 履修できないシステムとなっている。

 履修者へのアンケートから、高校での地学履修者の割合は毎年 半数ほどであり、著者の想定より高かった。一方で地学の授業が中学理科II以来というケースも多い中で、地球惑星科学分野への関心は個人差が大きく、高校での履修歴と大学での成績との関連はそれ程高くない。また登録者には中国・韓国からの留学生や多地域からの帰国生も含み、各国での地学教育に差異もあって興味深い。

 座学中心のマス講義ではあるが、地球科学のエッセンスを伝えるためにも、講義時間内に大人数でのミニ巡検を行うプログラムを考案し、過去4回実施してきた。横浜市港北区に位置する日吉キャンパスは、12万年前の下末吉海進時の段丘崖にあり、多摩川の沖積低地との対比を行いやすい立地にある。貴重な露頭の他にも固い岩盤には弥生時代の居住跡、太平洋戦争末期の帝国海軍連合艦隊地下壕、東海道新幹線のトンネルもあり、人間が台地を利用してきた痕跡を見てとれる。45分で1周する起伏に富むミニ巡検コースを設定すると共に、教室実習では航空写真の立体視や露頭から採取された鉱物の顕微鏡観察を行う。このプログラムを可能とする背景には同キャンパス内の義塾高校地学教室の全面協力がある。発表ではプログラムと学生への効果も紹介したい。