日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM12] Space Weather, Space Climate, and VarSITI

2018年5月24日(木) 13:45 〜 15:15 303 (幕張メッセ国際会議場 3F)

コンビーナ:片岡 龍峰(国立極地研究所)、Antti A Pulkkinen (NASA Goddard Space Flight Center)、草野 完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所、共同)、塩川 和夫(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、座長:塩川 和夫(名古屋大学)

14:15 〜 14:30

[PEM12-21] 深層学習を用いたリアルタイム太陽フレア確率予報 Deep Flare Net (DeFN)

*西塚 直人1杉浦 孔明1久保 勇樹1田 光江1石井 守1 (1.国立研究開発法人 情報通信研究機構)

キーワード:太陽フレア、予測、宇宙天気、深層学習、X線放射、リアルタイム運用

太陽フレアは太陽系最大の爆発現象である。X線や紫外線、高エネルギー粒子や磁気嵐によって地球に影響を及ぼし、衛星の故障や広域停電の原因になることがある。そのため、これらを避けるための太陽フレアの予報は重要である。太陽フレアの発生機構はまだ十分に解明されていない。エネルギーの蓄積やフレアのトリガーは、光球への浮上磁場によるものだと考えられている。太陽ダイナモから黒点形成、そしてフレア噴出といった一連の物理過程は観測および理論によって研究されてきた。特に近年は大量の準リアルタイムの観測データが利用できるようになってきた。しかし、まだ我々は24時間以内に発生するフレアの予測さえ難しい状況にある。

我々は深層学習を用いた太陽フレア予測モデルを開発し、Deep Flare Net (DeFN)と名付けた。このモデルは24時間以内に発生する最大規模のフレアの確率を予測することができる。SDO衛星によって2010-2015年に観測された約30万枚の画像を用いて、まず活動領域を検出し、次に各領域の79種類の特徴量を計算してフレアのラベル(X, M, C)を添付した。特徴量としては、先行研究Nishizuka et al.(2017)で使用した特徴量の他、運用的な予測用に新たな特徴量、131Åで観測される高温コロナの発光(1千万度)や、同じく131ÅやX線の画像の1,2時間前の履歴を追加した。我々はデータベースを時系列で分割し、2010-2014年を訓練用、2015年をテスト用とした。それらに対してDeFNモデルを使い、Mクラス以上、Cクラス以上のフレアの発生確率を予測した。このモデルはディープな多層ニューラルネットで構成され、skip connectionとbatch normalizationを使用している。スキルスコア(TSS)を最大化するように訓練最適化され、最終的に我々は運用形式で、Mクラス以上のフレアに対してTSS=0.80、Cクラス以上のフレアに対してTSS=0.63を達成することに成功した。これらの値は人手による運用よりも良い。ちなみに、一般的な深層学習モデルは予測過程がブラックボックスであるが、本DeFNモデルの場合は人が手で特徴量を与えているため、どの特徴量が予測に効果的であるかを解析することができる。

本講演では、我々の開発したDeFNモデルの内容と、リアルタイム予報運用に向けての取り組みを紹介したい。また、抽出された特徴量を比較することで、太陽フレアのトリガー機構について議論したい。