日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG66] 3次元地質モデリングとシミュレーションの新展開

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 A10 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:高野 修(石油資源開発株式会社技術研究所)、木村 克己(独立行政法人防災科学技術研究所)、座長:高野 修(石油資源開発)

14:15 〜 14:30

[SCG66-07] ボーリングデータを利用した「3次元グリッドモデル構築プログラム」の開発

*花島 裕樹1木村 克己2 (1.Smart Solutions株式会社、2.国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

キーワード:3次元地質モデル、ボーリングデータ

三次元地下構造モデルの構築手法については,様々な研究がなされているが,本講演では,木村ほか(2014)によって提案された構築手法を,プログラミング言語Pythonによって実装を行い作成した「三次元グリッドモデル構築プログラム」(以下,本プログラム)について,利用方法や今後の課題について発表を行う.
三次元グリッドモデルとは,ボクセルタイプの三次元地下構造モデルをさす.木村ほか(2014)によって提案されたモデリング手法は,江藤ほか(2008)のボーリングデータ(ボーリング交換用ファイル;XML形式)からN値及び土質の三次元グリッドモデルの構築手法をもとに開発された手法であり,地盤特性が大きく変化する地層境界面を制約条件として設定された地層分布空間内において,空間補間を実施する手法である.従来から多く用いられてきたサーフェスタイプとボクセルタイプの三次元地下構造モデルを組み合わせた構築手法といえる.サーフェスタイプのモデルを用いることで,収集データに加えて専門的な知見から地質モデルを構築することができ,さらにボクセルタイプのモデルの形式で出力することで,種々な解析に応用可能な地下構造モデルを作成することができる.
本プログラムは,Python(ver.3)によって作成され,様々なハードウェアやOS上で動作可能である.また,本プログラムの処理過程は,ボーリングデータから必要な情報を抽出する第一段階と抽出した情報とサーフェスモデルを組み合わせて三次元地下構造モデルを出力する第二段階に分かれる(図 1).入力データとなるボーリングデータ群は,品質が確認され,各種地層境界の判読がされている必要がある.また,サーフェスモデルについても各サーフェス間の上下判定などが正確なモデルを用意する必要がある.
最終的な出力となる地下構造モデルはボクセル形式で出力され,入力となるボーリングデータを用いた空間補間によって作成される.基本的な空間補間手法はボーリングデータを用いた逆距離加重法によって実施され,参照データの象限分割数や,参照データの最大数,最小数など様々なパラメータが設定可能である.さらに,逆距離加重法による補間結果モデルを用いて,充填性を重視したより制約条件の緩いモデルも出力することができる.加えて,作成したモデルの各格子点において空間補間時に参照したボーリングデータ数や,参照データの平均距離など,補間結果の信頼度の指標となる情報も出力することができる.また,出力モデルを用いて代表的な解析例の一つであるS波速度の推定結果も出力が可能である.
現状のプログラム全般に対する問題点として,入力データ(ボーリングデータ群及びサーフェスモデル)の準備に労力を要する,GUIがなく操作が容易ではない,設定すべきパラメータの数が多く煩雑である,などがあげられる.また,個々の機能については,読み込み可能なサーフェスモデルのファイル形式が少ないことなどがあげられる.以上の問題点については,今後の課題としたい.

文献
江藤ほか(2008)地質学雑誌,114,187-199;木村ほか(2014)特殊地質図 No.40,56-113,地質調査総合センター