日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-07] FutureEarth-GRPsによる地球環境変化研究の統合

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 103 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:石井 励一郎(総合地球環境学研究所)、安成 哲三(総合地球環境学研究所)、谷口 真人(総合地球環境学研究所、共同)、Hein Mallee(Research Institute for Humanity and Nature)、座長:石井 励一郎

16:45 〜 17:00

[U07-11] 世界気候研究計画(WCRP)における成層圏と対流圏の諸過程と気候への影響研究プロジェクト(SPARC)の我が国の活動について

★招待講演

*佐藤 薫1 (1.東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)

キーワード:世界気候研究計画 (WCRP)、成層圏と対流圏の諸過程と気候への影響プロジェクト (SPARC)

我が国における成層圏・対流圏科学分野は、層が厚く、国際的にもその活動は広く認識されている。現在、WCRP/SPARCの活動は、日本学術会議における環境学委員会・地球惑星科学委員会のFE・WCRP合同分科会下のSPARC小委員会を中心に議論し進められている。成層圏科学は古くは大気力学が中心となって研究されてきたが、オゾンやエアロゾルに代表される大気化学分野や、中間圏・熱圏を扱う超高層物理学分野とも強い結びつきがあり、気象学の中でも学際性の高い科学として特徴づけられる。したがって、気象学会の大会に加え、地球惑星科学における活動は重要であり、連合大会においてはSPARCセッションが定期的に開催されている。また、2018年10月には、第6回国際SPARC総会(SPARC General Assembly 2018)が京都で開催されることになり、SPARC小委員会がLOCとして準備を進めている。国際SPARC総会は4年に1度開催されるものであり、東アジアでは今回が初めてである。また、大気化学との連携を深めるため、同分野の国際会議Joint 14th iCACGP Quadrennial Symposium/15th IGAC Science Conferenceと連続して開催される。このようなSPARCに関する各種会合の主催や招致は、学術会議の小委員会を中心に計画され、実施されており、我が国にこのような小委員会組織があることは国際的に高く評価されている。

SPARCの扱う成層圏・対流圏科学は、オゾンホール、地球温暖化、気候遠隔結合など、地球環境問題に深くかかわる課題を扱う分野であり、WCRPの他のプロジェクトとの連携も緩やかに意識して進められてきた。今後も同様に推進しかつ強化することが、地球環境問題の解決に結びつくことになる。そして、そのためには、観測による現状把握と諸過程及び全体の科学的理解をこれまで以上に深める必要がある。これはモデル等による将来予測の基礎を支える研究であり、他のプロジェクトが扱う環境要素との連関を正しく理解するうえで重要である。しかしながら、我が国では衛星等の地球観測のあり方に様々な問題があることが指摘されており、今後もその方向性を研究者側から注視していく必要がある。さらに、課題のグローバル性に視点が集中し、課題解決につながる諸過程の基礎的理解が以前より重視されにくくなっている傾向がある。しかしながら、課題解決のための確実な処方箋を明らかにするためには、マクロとミクロの両方の視点から、バランスの取れた科学を推進すべきであると考えられる。