日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC26] アイスコアと古環境モデリング

2019年5月28日(火) 09:00 〜 10:30 201B (2F)

コンビーナ:植村 立(琉球大学 理学部)、川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所)、竹内 望(千葉大学)、座長:植村 立(琉球大学)、大藪 幾美(国立極地研究所)

09:45 〜 10:00

[ACC26-04] グリーンランドにおける人為起源及び自然起源のブラックカーボンの濃度、粒径分布、季節変動の経年変化

*東 久美子1,2塚川 佳美1近藤 豊1Dallmayr Remi1,10平林 幹啓1尾形 純1北村 享太郎1川村 賢二1,2本山 秀明1,2的場 澄人3青木 輝夫4茂木 信宏5大畑 祥5森 樹大6小池 真5小室 悠紀7對馬 あかね8,9永塚 尚子1繁山 航1,2藤田 耕史9 (1.国立極地研究所、2.総合研究大学院大学、3.北海道大学、4.岡山大学、5.東京大学、6.東京理科大学、7.山形大学、8.総合地球環境学研究所、9.名古屋大学、10.アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所)

キーワード:ブラックカーボン、グリーンランド、アイスコア

2014年春にグリーンランド氷床北西部のSIGMA-Dサイトで225メートルの深さまでのアイスコアが掘削された。積雪のアルベドに影響を及ぼす物質として注目されているブラックカーボン(BC)の変動を高時間分解能で復元するため、国立極地研究所で開発されたアイスコア連続融解析装置(CFA)を用いてこのコアの深度6~113mを高時間分解能分析した。CFAはアイスコアを融解しながら連続的に分析する方法であるが、融解部に接続したWide-Range SP2 (Single Soot Photometer)によりBCを分析した。コアの上部6mは空隙の多いフィルンであり、CFAを用いることができなかったため、約5cmの長さ毎に切り、試料表面の汚染を除去して融解した後、SP2で分析した。主としてナトリウムイオン濃度と酸素同位体比の季節変動を利用してこのコアの年代決定を行い、1年を12に分割して月毎の変化を調べた。
ブラックカーボンの質量濃度と数濃度はともに1870年頃から増加し始め、1920~1930年頃にピークを迎えたが、その後減少に転じた。1870年頃からの濃度の増加は、化石燃料の燃焼によって発生する人為起源のブラックカーボンがグリーンランドに流入したためであると考えられる。化石燃料起源のBC濃度の増加に伴ってBCの粒径が大きくなる傾向が見られた。これはグリーンランドに到達する化石燃料起源のBCの粒径が森林火災起源のものよりも大きいことを示唆している。BC濃度の季節変動を調べたところ、BC濃度の増加は主に秋~冬に生じていることが分かった。また、人為起源のBCの影響がない時代にはBC濃度は夏にピークを示していたが、人為起源のBCが多量に流入した時代には冬にピークを示していたことも分かった。夏にはしばしばBCが短期間だけ50µg/Lを超える高濃度になることがあったが、これは森林火災によるものと考えられる。本発表では、SIGMA-Dコアの結果を他のグリーンランドコアと比較して議論する。