JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24] 山の科学

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学山の環境研究センター)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科)

[MIS24-P01] 天守山地北部で姶良丹沢テフラ降下(31 cal ka BP)直前に発生した大規模斜面崩壊

*木村 恵樹1苅谷 愛彦2 (1.専修大学・学、2.専修大学)

キーワード:南部フォッサマグナ、テフラクロノロジー、姶良Tnテフラ、更新世後期

天守山地北部の栃代(山梨県身延町)には顕著な崩壊地形が存在するが,その地形学・地質学的特徴は未詳であった.本研究では,この崩壊地形の地形・地質と発達史を地形解析と踏査に基づき検討した.【地形・地質】栃代川左岸の標高800 m~1600 m付近に複数の馬蹄形急崖が存在する.その下方に最大幅500 m,長さ1500 mの緩斜面(面積6.0×105 m2)がある.緩斜面上では長径が2 mを超える粗大な玄武岩の角礫・亜角礫が散在する状況が観察される.また,この緩斜面の東縁や西縁には玄武岩の巨礫から成る不淘汰角礫層が露出する.地形・地質の状況から判断して,急崖群は崩壊の滑落崖,緩斜面は崩壊物質(移動体)である.また観察事実に基づき崩壊物質の平均層厚を10 mとすると,その体積は6.0×106 m3となり,大規模崩壊に区分される.栃代川右岸の谷壁斜面には栃代の崩壊物質と同一の不淘汰角礫層が遡上して残存する.角礫層はガラス質細粒テフラ層にほぼ整合で覆われる.本テフラは泡壁型・平板型やX・Y字状の火山ガラス片を主とし,それらの主成分化学組成分析により姶良Tn(AT:30.8 cal ka)に同定される.ATとの層位から,崩壊物質は31 cal ka頃に移動・定置したと推定される.【段丘状地形】移動体より下流側の栃代川両岸には,現河床との比高が5~6 mの段丘状地形が複数の地点に存在する.これらの段丘状地形は玄武岩と泥岩の不淘汰な亜円礫~亜角礫層から成る.インブリケーションも確認できる.これらの段丘は崩壊発生と同時期か,それ以後に形成された土石流段丘と推定される.【崩壊地形の発達史】以上の特徴に基づき崩壊地形の発達史を検討した.1)31 cal ka頃に栃代南方の山腹で大規模崩壊が発生し,玄武岩や泥岩の巨礫を含む大量の岩屑が下方へ移動した.山腹に滑落崖が残った.2)岩屑は主に栃代付近に定置して緩斜面を形成し,物質の一部は対岸の栃代川右岸谷壁に乗り上げた.3)栃代川の下刻により崩壊物質(移動体)は段丘化し,下流に土石流段丘が形成された.