JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM14] Frontiers in solar physics

コンビーナ:今田 晋亮(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Alphonse Sterling(NASA/MSFC)、横山 央明(東京大学大学院理学系研究科)、清水 敏文(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

[PEM14-P07] 白色光フレアにおける磁場と温度の統計的な特性について

*渡邉 恭子1鶴田 康介1増田 智2Krucker Sam2,3,4 (1.防衛大学校、2.名古屋大学宇宙地球環境研究所、3.University of Applied Sciences Northwestern Switzerland、4.UC Berkeley)

キーワード:太陽フレア、太陽電波放射、太陽磁場

太陽フレアにおいて可視連続光の増光が観測される現象である白色光フレアは、大量の加速電子が光球面近くまで降り込み、その場が急激に加熱されることによって発生していると考えられている。また、白色光を発生させるような高エネルギーまで加速されている電子を大量に発生させるためには、加速域において強い磁場が必要であるとも考えられる。これまでの研究からも、加速域における強い磁場の存在が示唆されている(e.g. Watanabe et al., 2017)。これより本研究では、白色光フレアの成因を探るために、太陽フレアを白色光フレア(WLF)と非白色光フレア(NWL)に分類して、白色光フレア発生領域の磁場強度と温度分布に関して統計解析を行った。

まず、野辺山強度偏波計で観測されたマイクロ波スペクトルの折れ曲がり周波数を用いて、加速域付近の磁場を統計的に見積もった。太陽フレアのマイクロ波スペクトルには放射強度が最大になる折れ曲がり周波数(νpeak)が存在するが、νpeak は、放射領域の磁場強度に依存することが知られている(Dulk 1985)。2011年以降に発生したM3クラス以上のフレアのうち、ループトップでマイクロ波源が確認されていた29例のイベントを用いて、νpeak より加速域近傍の磁場強度を見積もる統計解析を行った。この結果、WLFとNWLの間でνpeak の分布に違いは確認できなかった。νpeak は放射領域の磁場強度だけでなく、フレアループ内の電子密度などによっても変化するため(Dulk 1985)、この手法は加速域近傍の磁場強度を確かめるためには単純すぎるモデルであることが分かった。

次に、ひので可視光磁場望遠鏡で観測されたM1クラス以上のフレア35例を用いて、白色光放射領域における磁場強度及び放射温度について統計解析を行った。この結果、白色光放射領域の最大磁場強度と最大白色光強度との間には比例関係が見られることが分かった。光球面の磁場強度がループトップの磁場強度と比例していると仮定すると、白色光フレアでは大量の電子が強い磁場によって加速されていると考えられる。また、白色光の最大放射強度が白色光放射領域の最大放射温度の4乗に概ね比例していることも確認できた。これより、白色光の増光は黒体放射であると考えられる。以上より、白色光フレアでは、強い磁場によって加速された大量の電子が光球面近くのフットポイントに降り込み、その領域が加熱された結果、黒体放射によって白色光が放射されていると考えられる。