JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS09] 惑星科学

コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、嵩 由芙子(会津大学)

[PPS09-21] 衝突に起因するC型小惑星模擬物質からの揮発性成分放出

*黒澤 耕介1森脇 涼太1薮田 ひかる2石橋 高1小松 吾郎3松井 孝典1 (1.千葉工業大学 惑星探査研究センター、2.広島大学 大学院理学研究科 地球惑星システム学専攻、3.ダヌンツィオ大学 国際惑星科学研究大学院)

キーワード:C型小惑星、衝撃脱ガス、高速度衝突現象

C型小惑星は水と炭素を豊富に含む炭素質隕石の母天体であると考えられている. C型小惑星は内側太陽系天体への主要な水と有機物の供給源であった可能性が高い. このような重要性から近年はやぶさ2とOSIRIS-RExが立て続けにC型小惑星リュウグウ, Bennuを詳細に調査した. これまでの観測からリュウグウやBennuはその歴史を通じて, 様々な規模の天体衝突に曝されてきたことがわかっている. 2020年末に地球にもたらされるリュウグウ試料にも衝突の痕跡が残っていることが期待される. はやぶさ2探査の科学成果を最大化するためにはC型小惑星構成物質に衝撃波が作用した際にどの様に振る舞うのか?を理解しておく必要があろう. そこで本研究では現実的に大量に手に入る材料の中でC型小惑星構成物質に最も近い物質である炭素質隕石模擬粉末を用いた衝突実験を実施し, 衝突によって放出されるガス量と組成を測定した.

 衝突実験は千葉工業大学 惑星探査研究センター 高速度衝突実験室に設置されている二段式軽ガス銃を用いて実施した. 炭素質隕石模擬粉末を押し固めてペレットを作成し, 標的とした. 衝突によって放出されるガスを計測するため, Kurosawa et al. (2019)で開発された新手法「Two-valve method」を用いた. この手法を用いることで, 二段式軽ガス銃の運転時に発生する化学汚染ガスの影響を受けずに, 衝突時の加熱で試料から放出されたガスのみを分析することができる. 生成ガスは四重極質量分析計を用いて分析した. 弾丸には酸化アルミニウム(Al2O3)を用いた. 今回はおよそ5.8 km/sの速度で3発の衝突実験を実施した. 衝突後に検出されたガスはH2, CH4, CO, H2S, CO2の5種類であり, 3回の実験で全てCO2が放出されたガスの主成分であった. 装置の較正を行い, CO2量を絶対値に換算したところ, 衝突で生成されたCO2質量は弾丸質量の1-2 wt%にとどまることが明らかになった. 炭素質隕石模擬粉末がC型小惑星の構成物質と近い物理化学特性を持つという仮定が正しければ, 今回の結果はC型小惑星からの天体衝突による揮発性成分流出は効率的でないことを示唆する.



謝辞: 実験結果を解釈するためにiSALEを利用しました. iSALEの開発者であるG. Collins, K. Wünnemann, B. Ivanov, J. Melosh, D. Elbeshausenの各氏に感謝致します. iSALEの計算出力の解析にはpySALEPlotを利用しました. 開発者のTom Davison氏に感謝致します.