JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS09] 惑星科学

コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、嵩 由芙子(会津大学)

[PPS09-P05] 弱い強度を持つ表面への衝突クレーター形成実験とクレータースケール則の構築

杉村 瞭1、*荒川 政彦1保井 みなみ1千秋 博紀2長谷川 直3 (1.神戸大学大学院理学研究科、2.千葉工業大学惑星探査研究センター、3.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:衝突クレーター、クレータースケール則、エジェクタカーテン

衝突クレーターの形成メカニズムは強度支配域と重力支配域に分けられる。そして、その境界となる境界強度が存在すると考えられる。この境界強度はクレーターサイズや重力とともに変化し、特に低表面重力の小惑星ではクレーターサイズに関わらず強度支配域になると予想されている。従って、小惑星表層に形成されるクレーター形成過程を理解するためには様々な強度を持つ標的を用いた実験を行い低強度域まで拡張させたクレータースケール則が必要である。そこで本研究では、混合比を変化させた石英砂・石膏混合標的を用いてクレーター形成実験を行い、クレータースケール則を低強度領域まで拡張した。そして、エジェクタカーテンの解析からZモデルの妥当性を検討した。
 衝突実験は神戸大学の横型二段式軽ガス銃と宇宙科学研究所の縦型二段式系ガス銃を用いて行った。弾丸は2mmのアルミ球を用い、衝突速度は2,4,6km/sであった。エジェクタ放出過程に着目した実験では高速カメラの視線方向に飛翔するエジェクタを遮断するために標的の表面にスリットを設置した。作成した標的の引張強度は0.4kPa~800kPaであった。衝突実験の結果、クレーター直径は強度の減少に伴い増加し、スポール直径は引張強度に依存することが分かった。本研究で用いた多孔質標的の規格化半径(πR)は同じ規格化強度(πY )の時、結晶質標的と比べ小さくなることが分かった。さらにπR=a πY-p1のべき乗地p1は結晶質と比べて小さくなることが分かった。p1が異なる理由は、多孔質標的では石膏内部の空隙を潰すことにエネルギーが消費されるため、衝撃圧力の距離減衰が大きくなるためであると考えられる。
 また、Y-shapeを形成するエジェクタの放出角度はクレーター壁面に近づくほど高角度で放出することが分かった。しかし、標的強度によって放出角度の増加傾向が異なり、高強度標的では角度変化が大きく、低強度標的では角度変化が小さいこと分かった。この強度支配域に特徴的なエジェクタ放出角度の変化はZモデルでは説明できない。Zモデルの境界条件としてクレーター壁を剛体とすることで、この角度変化は説明可能であることが確認できた。
 本研究の結果から得られたスケール則πR=0.82 πY -0.18と探査機はやぶさ2が小惑星Ryugu上に形成したクレーターから小惑星Ryuguの表面強度の制約を行った。本研究で得られたクレーターサイズスケール則 にSCI衝突条件を代入するとリュウグウの表面強度は約1 Paとなった。一方、形成されたクレーターには堆積リムがありクレーター形成メカニズムが重力支配域であることを考慮すると、リュウグウの表面強度の上限値は約1Paであると制約することができた。