JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM21] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

コンビーナ:松野 哲男(神戸大学海洋底探査センター)、畑 真紀(東京大学地震研究所)

[SEM21-P04] 日向灘周辺におけるMT応答関数の推定

*中村 捷人1市原 寛1後藤 忠徳2松野 哲男3多田 訓子4佐藤 真也5 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.兵庫県立大学大学院生命理学研究科、3.神戸大学海洋底探査センター、4.海洋研究開発機構、5.京都大学大学院工学研究科)

キーワード:地磁気地電流法、比抵抗、日向灘、スロー地震、南海トラフ

日向灘周辺では、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んでおり、その境界面においてM7.5程度の地震が過去400年間で2度発生している。また、低周波微動(Yamashita et al., 2015)や短期的スロースリップイベント(SSE) (Nishimura et al., 2014)などのスロー地震の発生も確認されている。このようなプレート境界付近における運動の違いには流体や未固結の堆積物の存在が関係していると考えられている(例えば小原, 2009)が、その詳細についてはあまり分かっていない。

地磁気地電流(MT)法は自然起源の電磁場変動を利用して、地下の比抵抗構造を求める手法であり、比抵抗は流体や堆積物の存在に敏感な物理量であるとされている。そこで本研究では、日向灘周辺の比抵抗構造を解明することを目的とし、日向灘周辺の海底で観測した電磁場データを用いてMT応答関数を推定した。



解析には日向灘周辺の海底12地点に設置した海底電位差磁力計(OBEM)によって得られた電磁場データを用いた。各観測点での観測期間は2017年3月~2019年8月の内の半年から一年間である。OBEMでは磁場3成分、電場2成分に加えて、機器の傾斜と温度を測定しており、2観測点については絶対圧力計により水圧も測定している。電磁場データのサンプリング間隔は8Hzと60sである。この時系列の電場と磁場のデータからBIRRP(Chave and Thomson, 2004)により、各観測点でのMT応答関数を推定した。ただし、全12観測点の内2観測点については正常な磁場データを取得できなかったため、同時期に観測した異なる観測点の磁場データを用いてMT応答関数を推定した。MT応答関数の推定の際にリモートリファレンスとして柿岡地磁気観測所の地磁気データを使用した。

推定したMT応答関数から見掛け比抵抗と位相を計算した。水深が1,000m以下の観測点では周期3,000s以上において、推定した応答関数のばらつきが大きく、決定精度が悪くなっている。これは海洋潮汐や海流の影響が電場に含まれているためと考えられる。全体として、見掛け比抵抗は短周期で小さく、多くの観測点において周期100s以下では、見掛け比抵抗の非対角成分が対角成分に比べて1桁程度大きく、2つの非対角成分の値が同程度であるという結果を示した。このことから、浅部は一次元に近い構造をしており、海底直下には低比抵抗層が存在することが示唆された。この低比抵抗層は堆積層と考えられる。



Key and Constable (2011) などの先行研究により、海洋でのMT応答関数は海底地形の影響を受けることが確認されている。したがって、今後は海底地形を組み込んだ抵抗モデルによるフォワードモデリングを行い、海底地形によるMT応答関数への影響を確認する予定である。