JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS04] 強震動・地震災害

コンビーナ:染井 一寛(一般財団法人地域地盤環境研究所)、松元 康広(株式会社構造計画研究所)

[SSS04-13] 北海道の深い地震による強震動と島弧の減衰構造

*筧 楽麿1 (1.神戸大・理)

キーワード:強震動、減衰構造、島弧、北海道、日高衝突帯

北海道で発生する深い地震による揺れと島弧の減衰構造の関連を論じるために,防災科学技術研究所のK-NET,KiK-net高密度強震観測データを解析した。解析した地震は,(1) 2020年根室半島南東沖の地震(Mw 5.4,深さ96.0km,スラブ内地震),(2) 2007年胆振中東部の地震(Mw 5.5,126.18km,スラブ内地震),(3) 2015年青森県東方沖の地震(Mw 6.1,66.07km,プレート境界地震)である。東北日本ではこの3つの地震に共通して,背弧側の加速度振幅が前弧側に比べて小さいという明瞭な特徴がみられる。これは火山フロントと背弧側の媒質が低Q値を持つことによる(例えばKakehi (2015))。一方,北海道での強震動分布は東北日本より複雑な分布を示す。event 1の場合,前弧側の加速度振幅が大きい領域は日高山脈以東に限られ,日高山脈の西側では前弧側でありながら加速度振幅は小さくなる。日高山脈西側で加速度振幅が小さくなるという特徴は,event 2と3にも共通して見られる。日高山脈では島弧と島弧が衝突しており(「日高衝突帯」と呼ばれる),減衰構造を含む地下構造が複雑なものとなっている。具体的には,東北日本弧のように前弧側と背弧側の2元的な単純な減衰構造ではなく,日高衝突帯西側には前弧側であるにもかかわらず例外的に低Q値領域が存在することが,先行研究によって報告されている(Kita et al. (2014),Nakamura and Shiina (2019))。日高山脈西側の小加速度の領域は,この前弧側の低Q値領域を高周波地震波が通過して減衰することによって生じていると考えられる。このように,北海道では前弧と背弧の明瞭な減衰構造の違いに加えて,前弧側にも例外的に低Q値領域が存在することにより,東北日本と比べて複雑な強震動分布が見られることになる。