日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG34] 地球規模環境変化の予測と検出

2023年5月24日(水) 09:00 〜 10:30 オンラインポスターZoom会場 (3) (オンラインポスター)

コンビーナ:河宮 未知生(海洋研究開発機構)、立入 郁(海洋研究開発機構)、建部 洋晶(海洋研究開発機構)、V Ramaswamy(NOAA GFDL)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

09:00 〜 10:30

[ACG34-P09] Response of deep ocean circulation and dissolved oxygen to climate change on millennial time-scales

*山本 彬友1羽島 知洋1阿部 学1横畠 徳太2阿部 彩子3河宮 未知生1 (1.国立研究開発法人 海洋研究開発機構、2.国立環境研究所、3.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:気候変動、大西洋子午面循環、南極底層水、貧酸素化

海洋の温暖化に伴い、海洋が溶存酸素を失っていることはよく知られている。また、CMIP5/6モデルは貧酸素化が今世紀末まで継続することを予測している。しかし、最終的に溶存酸素がどの程度減少するかについては十分に定量化及び理解されていない。例えば、過去の温室期に起きた海洋無酸素事変も、人為的な気候変動によって引き起こされる可能性があるのでしょうか?
本研究ではCMIP6モデルの1つであるMIROC-ES2Lを用いて、西暦4000年までのシミュレーションを実施した。最もCO2排出が多いSSP585シナリオ(最大CO2濃度は約2200ppm)では、2300年までにAMOCとAABWが約2Sv、4Svまで減少した。この状態が4000年まで続き、先行研究の1000年規模シミュレーションで報告された、AMOCやAABWの回復は見られなかった。
全球平均した溶存酸素濃度は実験期間中に減り続け、最終的に現在の半分以下になった。これは、AMOCやAABWの回復に伴い酸素が回復することを示した先行研究の1000年規模シミュレーションに比べ、大きな減少である。深層循環の弱化に伴う海洋表層から内部への酸素供給の減少と、滞留時間の増加に伴う酸素消費の蓄積により、特に海洋深層では酸素が1/3以下に減少した。水深2000m以深の平均濃度は、魚などが生息できない60µmol/L以下になり、深海生物に深刻な影響を及ぼすと考えられる。
本研究の結果から、人為的な気候変動が1000年スケールの深層循環の停止と大規模な海洋貧酸素化を引き起こす可能性が示された。ただし、単一モデルの結果であるため、モデル依存性に注意する必要がある。発表では1000年スケールの深層循環の変化について、本研究と先行研究の比較も紹介する予定である。