日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT13] 高精細地形表層情報と人新世におけるコネクティビティ

2023年5月24日(水) 10:45 〜 12:00 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:早川 裕弌(北海道大学地球環境科学研究院)、Gomez Christopher(神戸大学 海事科学部 海域火山リスク科学研究室)、笠井 美青(北海道大学大学院農学研究院)、小倉 拓郎(兵庫教育大学学校教育研究科)、座長:早川 裕弌(北海道大学地球環境科学研究院)、Gomez Christopher(神戸大学 海事科学部 海域火山リスク科学研究室)、小倉 拓郎(兵庫教育大学学校教育研究科)、笠井 美青(北海道大学大学院農学研究院)



11:30 〜 11:45

[HTT13-04] 3次元データに基づく海岸砂丘の変化量を指標とした砂浜海岸の侵食実態

★招待講演

*中田 康隆1 (1.京都府立大学大学院 生命環境科学研究科)


キーワード:海岸侵食、海岸砂丘、RTK-UAV、ALS、Lidar、DEM

砂浜海岸は海と陸の境界部で、砂が水と風の営力により行き来し、動的に維持されるシステムである。このシステムは、Beach Dune Systemと呼ばれ、動的な環境に適応した動植物が多く生息・生育している。また、砂浜海岸に発達する海岸砂丘は、津波や高潮による内陸への海水の侵入を防ぐ防護壁や緩衝帯として注目されており、オランダのような海抜が低い土地の面積が大きい国では保全されてきた。
20世紀後半より、海岸付近での開発やレクリエーション利用が増加し、生態系の破壊や景観悪化が引き起こされてきた。さらに、気候変動による海面上昇により海岸侵食が促進されることが懸念されている。世界的に進行する海岸侵食は、国土の減少を意味するだけでなく、海域と陸域のエコトーンに依存した多様な生物の生息場喪失に直結する。このため、海岸侵食は人間社会と海域・陸域生態系の両者にとってその解決が急務と言える。
砂浜海岸の海岸侵食に関する研究は、砂浜の汀線の変化を指標にしたものが多く、その後背の砂丘の変化を対象にしたものは少ない。また、砂丘を3次元で計測し、変化量を計測した研究も散見されるが、複数の砂浜海岸を対象にした研究は皆無である。海岸侵食の実態をより現実に即した形で明らかにするには、複数の砂浜海岸の地形変化を3次元で把握し、評価する必要がある。そのためには、複数の砂浜海岸を対象に解析する必要があるが、これまで解析に必要な多時期かつ多地点の3次元データの入手の困難さが研究を進める上での制限要因の1つとなっていた。
本研究では、UAV(ドローン)、および航空機レーザ(以下、ALS)による高精細な空間情報を計測・利用することで上記の課題を克服する。UAV-SfM(Structure-from-Motion)による地形や植生の3次元構造の復元精度の向上は目覚ましい。従来のUAV-SfMでは、機体の位置情報の精度(誤差:数m)の低さから複数の地上基準点を別途測量し、設置する必要があった。近年、高精度な位置取得が可能なRTK(Real-Time Kinematic)-GNSS(Global Navigation Satellite System)とUAVが統合され、位置精度(誤差:数cm)が飛躍的に向上され、設置に多大な労力が必要であった地上基準点が不要になった。RTK-UAVを用いることで、精度の向上だけでなく、多地点の地形情報の取得が可能となり、砂浜・砂丘の地形変化を3次元かつ広域で把握し、海岸侵食の実態解明に繋げることができると考えている。
本研究発表では、北海道、本州、四国の砂浜海岸を対象に、海岸砂丘の侵食実態を明らかにすべく、RTK-UAV-SfMにより作成したDSMとALSにより作成したDSMの差分解析から、変化量(侵食量と堆積量)を算出した。これを指標として、我が国における砂浜海岸の侵食実態を評価することを目的に解析を実施し、その結果を発表する。