JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL36] [JJ] 地域地質と構造発達史

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山縣 毅(駒澤大学総合教育研究部自然科学部門)、大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[SGL36-P09] 飛騨外縁帯本郷-森部地域におけるペルム系の層序,砂岩組成および砕屑性ジルコンU-Pb年代

*鈴木 敬介1堀 達裕1栗原 敏之2原 英俊3 (1.新潟大学理学部地質科学科、2.新潟大学大学院自然科学研究科、3.産業技術総合研究所)

キーワード:ペルム系、飛騨外縁帯、砂岩組成、砕屑性ジルコン、U-Pb年代

岐阜県高山市の本郷-森部地域には,飛騨外縁帯に属する浅海成層の中・古生界が分布する.本地域では,見かけ下位から,三畳系谷戸谷層,石炭系荒城川層,デボン系呂瀬層,ペルム系森部層が断層関係で接する複雑な地質構造をなす(束田ほか,1997;田沢ほか,2000など).これらのうち,森部層は,森部谷川沿いを模式地とし,その北東に位置する呂瀬金山,さらに北方の本郷地域まで分布するとされ,模式地付近や呂瀬金山では中期ペルム紀の紡錘虫・腕足類・放散虫の産出が報告されている(礒見・野沢,1957;梅田・江崎,1997;田沢ほか,2000;Tazawa, 2001;丹羽ほか,2004など).また,吉田・田沢(2000)により模式地の森部層は基底層~上部層に区分され,砂岩組成の検討が行われている.一方,本郷地域では化石の産出報告がなく,詳しい年代は明らかになっていない.今回,本郷-森部地域のペルム系を再検討し,層序と砂岩の特徴について新たな知見を得るとともに,模式地の森部層(中部層)の砂岩について砕屑性ジルコンのU-Pb年代を測定したので,それらの結果を併せて報告する.
 本研究では,本郷地域の“森部層”を岩相の特徴に基づいて,下位からユニット1~4に区分した.ユニット1は石灰岩を挟む細粒~中粒の暗灰色砂岩,ユニット2~4は一部に頁岩を挟む細粒~中粒の暗灰色砂岩で特徴づけられる.ユニット1には模式地で見られる礫岩を含む基底層に相当するものは確認されなかった.これらの特徴は,模式地の森部層における下部層から上部層の一部によく類似する.砂岩組成の検討は,本郷地域で採取した10試料について行った.砂岩は長石質~石質ワッケに分類され,モード組成ではばらつきが大きいが,Dickinson et al.(1983)の造構場識別図ではdissected arc~basement uplift領域にプロットされる.吉田・田沢(2000)によれば,模式地における森部層の基底層~中部層の砂岩はundissected arc~basement uplift領域にプロットされる組成的な特徴をもつとされており,本研究で得られた本郷地域の結果とはやや異なると言える.
 砕屑性ジルコンのU-Pb年代を検討したのは,森部谷川流域の森部層中部層から採取した火山岩片に富む中粒の砂岩である.測定には新潟大学のLA-ICPMS (Agilent7500a)を用いた.この試料は最も若い年代ピークが明瞭であり,その加重平均値として272.4±2.6 Maが得られた.これは前期ペルム紀Kungurian後期~中期ペルム紀Roadian初期に相当し,堆積年代の下限と捉えると,これまで化石から推定されている年代と大きな矛盾はない結果と言える.
 以上をまとめると,本郷地域の“森部層”は,岩相と層序の特徴から模式地の森部層の下部から上部層の一部に相当し,化石と砕屑性ジルコンの最若ピーク年代から中部層はKungurian後期~Roadian初期に堆積したことが推定できる.また,その後背地として,従来想定されているよりも,より花崗岩基盤の露出した開析された火成弧が広がっていた可能性がある.