JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC48] [JJ] 火山の熱水系

2017年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、鍵山 恒臣(京都大学理学研究科)、大場 武(東海大学理学部化学科)

[SVC48-P01] 気象庁火山ガス現地観測データの整理 1960年代-2001年

*高木 朗充1福井 敬一1谷口 無我1 (1.気象研究所火山研究部)

キーワード:火山ガス、成分比、草津白根山、気象庁

1960年~2000年頃まで実施されていた,気象庁の火山ガス現地観測のデータについてとりまとめつつあり,その結果の一部を報告する.
気象庁では1960年代から全国の火山で火山ガス組成の観測を開始した.おおむね1年に3回程度の頻度で,各火山の噴気地域において火山ガスを採取し,現地で検知管法により二酸化炭素(CO2),二酸化硫黄(SO2)および硫化水素(H2S)の濃度を測定した.このガス観測は,全国に火山監視・情報センターが整備され火山観測業務の整理が行われた2001年まで実施されていた.火山ガス濃度の測定結果はその他の現地観測項目とともに,観測を実施した測候所や気象台が火山現地観測報告としてとりまとめ,その都度管区気象台および気象庁本庁に報告されていたが,全国の火山を網羅的にとりまとめられてはいなかった.今回,現地観測報告を過去にさかのぼりスキャナで取り込み,火山ガスの測定値について拾い出してとりまとめた.
濃度の測定は,噴気孔から外気が混入しないように導管からシリンジで火山ガスを採取し,3種の成分を北川式検知管(光明理化学)に通して行う.水蒸気を除けば,この3種の成分で火山ガスの100%近くを構成する.現地観測報告には,この3種のガス濃度が記載されている.
火山ガスの成分比によって火山活動の評価が可能性な場合があることが報告されている(たとえば平林,1993).しかし,当時の気象庁の火山ガス観測では,各ガス成分濃度の絶対値に注目することはあっても,成分比で評価することは多くなかった.そこでとりまとめたデータから,ガス成分比に着目して時間変化を見てみた.その結果,いくつかの火山では経年変化や,火山活動に応じた変化が見られることがわかった.
草津白根山では1976年噴火の前年に,周辺の噴気孔で採取された火山ガスのH2S/(SO2+H2S)比が増大した後,急減し噴火に至ったことが知られている(Ossaka,1980).今回の調査では,草津白根山の1982 ~ 1983年噴火の前年にも,周辺の4箇所の噴気孔でH2S/CO2比が増大した後,急減していたことがわかった.
当時行われたガス採取・測定の精度については議論が残る部分もあるが,このような噴火前の前駆的な事例が残っていたことは,気象庁がふたたび火山ガス観測に取り組もうとしていく上では重要である.また,これまで知られていない新たな事例が見つかる可能性があり,引き続き調査を進めていく.
発表では,このほかのいくつかの火山でとりまとめた結果を紹介する.