第49回日本理学療法学術大会

講演情報

発表演題 ポスター » 内部障害理学療法 ポスター

循環1

2014年5月31日(土) 10:25 〜 11:15 ポスター会場 (内部障害)

座長:高橋哲也(東京工科大学医療保健学部理学療法学科)

内部障害 ポスター

[0779] 当院総合リハビリテーションセンターにおける急変時対応の取り組み

碓井孝治, 満保紀子, 唐島ゆかり, 作田清子, 中﨑謙一, 椎名実希, 中波暁, 高木泰孝 (市立砺波総合病院総合リハビリテーションセンター)

キーワード:急変, 心肺停止, BLS

【はじめに】
当院ではあらゆるリハビリテーション(以下,リハ)ニーズに対応すべく,様々な疾患に対してリハを行なっているが,これまで急変時対応に関しては年1回の講習会以外には,積極的な勉強会・実技練習を行なっていなかった。そこで,以前から当院で開催されていた総合的品質管理(以下,TQM)活動をきっかけに,リハ中の急変に対処するため,2011年以降,様々な活動・勉強会を行なってきた。今回は心肺停止を想定しての活動に主眼を置き,その内容を報告する。
【方法】
1.対象
当院総合リハセンターに在籍する理学療法士(以下,PT)・作業療法士・言語聴覚士・理療士の計28名(ただし,TQM活動期間中に限ってはPT・理療士の計13名)
2.TQM活動のまとめ
基礎テストの実施・解説/急変時対応のアルゴリズム作成・説明/各種機器の保管位置の確認/実際の機器の使用練習/急変時対応のビデオ作成・解説・ディスカッション/急変時対応の実技練習/報告内容のマニュアル作成・説明/カルテ記録・インシデントレポートの見本作成・説明 の8つの項目に関して順次実施した。
3.評価方法
TQM活動初期,最終および終了後約1年半での一次救命処置(以下,BLS)模擬練習について,その一部始終をビデオ撮影した。それをもとに,コード・ブルー(緊急事態発生を意味する隠語)コールまでに要した時間,救急への搬送開始までの時間,実技力について評価した。実技力はTQMメンバー6名で,あらかじめ設定した19項目について,A:対処が適切,B:不十分だができた,C:不適切または遅い,で各自評価し,その後話し合いながら最終判定した。結果に対しては統計学的分析を行なわず,TQM活動初期,最終および終了後で直接比較検討した。
【説明と同意】
リハスタッフにはビデオ撮影内容の,評価目的以外での非公開を約束し,同意を得た。
【結果】
それぞれTQM活動初期;最終;終了後の順に,コード・ブルーコールまでに要した時間は1分20秒;30秒;48秒,救急への搬送開始までの時間は2分42秒;4分16秒;3分30秒であった(ただし,TQM活動初期では胸骨圧迫マッサージや自動体外式除細動器の装着・作動がなされないままの搬送であった)。また,実技力は同じ順にA21%,B21%,C58%;A63%,B21%,C16%;A50%,B38%,C12%であった。
【考察】
概して,TQM活動初期には行動に時間を要し,実技力も低かったが,活動期間中の学習を通じて所要時間は短縮し,実技力はアップした。1960年代に米国National Training Laboratoryが提唱した「学習ピラミッド」によれば,講義(聞く)のみならず,読む,視聴する,デモンストレーション,グループ議論,実践,教授(他人に教えること)を通じて学習定着率がアップするとされている。この概念に即してTQM活動を行なったわけではないが,様々な学習方法を取り入れたことにより,結果的に学習ピラミッドに沿った形での学習となり,BLSが上達したものと考えられる。しかし,およそ1年半経過してしまうと,TQM活動初期ほどではないが,行動時間は再び延長し,実技力も低下していた。これは練習しなければ忘れる,あるいは固まって動けない・躊躇してしまう実情を示しているものと考えられた。さらにそれを助長する因子として,TQM活動終了後の勉強会では,BLS以外のものがテーマだったこと,TQM活動時とは対象が異なったことが挙げられる。本来,すべての回で対象者を統一すべきであったことは明らかだが,PT部門単独の活動ではないことからやむを得なかった。これらのことから,より確実なBLSを行なうためには,定期的に学習会(実技練習)を開き,それをもとに皆で議論しながら学習を進めていく必要があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法にて多様なニーズが求められる現代,急変のリスクも多くなっているのが現状である。急変時対応の知識・技術を有しておくことは,臨床場面での活動の可能性を広げ,チーム医療の一端を担う上で非常に重要と考える。よって,このような活動報告を行なうことで,様々な施設でリスク管理について再考し,対策が講じられることを願う。