日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

A会場

一般セッション » S12. 岩石実験・岩石力学・地殻応力

PM-1

2021年10月16日(土) 14:15 〜 15:00 A会場 (A会場)

座長:小村 健太朗(防災科学技術研究所)

14:30 〜 14:45

[S12-02] 大阪平野下基盤における原位置地殻応力(3)-コア変形法による再計測-

〇小村 健太朗1、船戸 明雄2、伊藤 高敏3 (1.防災科学技術研究所、2.深田地質研究所、3.東北大学流体科学研究所)

日本列島の原位置の絶対応力に関するデータ,特に深さ100mを越える深部データは,陸域においても,数少ない状況にあるなか,掘削で採取された既存の岩石コアを用いた地殻応力測定法を適用し,信頼性の高い地殻応力データをはばひろく取得することを目指してきた.本発表では,一例として,防災科学技術研究所の,大阪平野にある深層地殻活動観測井における原位置地殻応力測定の結果を報告する.本観測井では,ボアホールテレビュア検層から,ボアホールブレイクアウトが観察され,すでに応力方位が推定されているが(小村,地震学会秋季大会2020),Funato and Ito (2017, IJRMMS)で設計され,防災科研に整備された装置でコア形状を再計測し,コア変形法(DCDA法, Diametrical Core Deformation Analysis法)を適用して応力値を推定した.コア変形法では,地下深部から採取された岩石コアが,応力解放により弾性変形することから,その弾性変形を計測し,岩石の弾性定数と掛け合わせて応力値を推定する.先行研究により,1000mを超えるような深部岩石コアでは,採取後の弾性変形が大きく,コア変形法の適用できることが示されている.
 大阪府の此花観測井(北緯34°39'45.92",東経135°23'22.53",掘削深度約2033m)の基盤に達する深度2035.5mコアと田尻観測井(北緯34°23'52.14",東経135°17'01.24",掘削深度約1532m)の同じく基盤となる深度1202.4mおよび1494.8mコアにおいて,採取後,10年以上経過したものではあるが,外周にそって直径がサインカーブ状に変化し,岩石コア断面が応力開放にともない楕円状に弾性変形していることが示され,コア変形法の適用可能と判断した.採取された岩石コアのP波速度,S波速度,密度測定から計算される弾性定数を適用し,応力値を求めたところ,~60 MPaから100MPaを越える差応力値となった.過去の,周辺の原位置地殻応力測定の結果と比べて,大きな値となっている.一方でボアホールブレイクアウトから求まった応力方位は,周辺の広域応力方位に整合的である.大きな差応力に意味があるかどうか,今後,岩石コアの亀裂の存在の影響などを考慮していかなければならないと考える.
 本結果をふまえ,一般に,観測井などの孔井掘削と岩石コア採取し,あわせて孔内検層実施し,条件が適合して,ボアホールブレイクアウトが観察されれば,原位置地殻応力の値と方位をともに計測可能であることが示されたものといえる.