一般社団法人 日本医療情報学会

[3-E-2-JS6-5] 医療データベース研究の活用事例;バリデーション研究

松下 泰之1, 鏑木 淳平2 (1.Daiichi Sankyo Europe GmbH, 2.第一三共株式会社)

医療データベースは臨床研究のデータソースとして重要な役割を持つ.その活用場面は様々であり,臨床試験実施前では,該当患者がどの程度存在するかの確認を行う実施可能性の検討や,症例数設定のための根拠として活用可能である.医薬品の安全対策としては,医薬品使用実態の確認や,大規模データを用いた安全性シグナル検出も活用事例の一つである.最近では本邦においても医療データベースを用いた臨床研究の報告が学会や医学論文で発表されるようになってきている.

医療データベース研究を活性化させるためには基盤整備が必要である.基盤整備には制度・ガイドラインの整備やデータの信頼性確保に加えて,定義したアウトカムが正しいことを確認するバリデーション研究を行うことも重要である.また,研究実施体制も活性化のために留意すべき点であろう.

本シンポジウムでは,医療データベースを用いた静脈血栓塞栓症発症,出血性イベントのバリデーション研究の事例を紹介する1).当研究は大学病院と製薬企業との共同研究として実施した.研究事務局はCRO内に設置し,統計解析実施は別のCROが担当し,医療データベース提供者がデータ抽出を行い,専門医の協力を得て臨床的適切性を評価する,という6者間の連携で行った研究である.評価指標は陽性的中度とし,当研究に利用した医療データベースは患者カルテには戻ることができないため,臨床検査データ提供可能な施設のデータを対象とし,イベント定義式に基づき抽出したイベントが正しいかどうかを専門医が個別に判定した.判定結果,良好な陽性的中度が得られたため,当研究に用いた定義式に基づき疫学研究を実施した結果が論文化されている.

今後も様々な領域でバリデーション研究が実施され,医療データベース研究の活性化につながることを期待する.

1)山口拓洋,富士武史,赤木將男,他.医薬品情報学 2015;17:87-93.