第61回全日本病院学会

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高齢者医療介護委員会

高齢者医療介護委員会
認知症の症状が進んできた段階における対応と連携

Sun. Sep 29, 2019 1:30 PM - 3:00 PM 第2会場 (白鳥ホール(北))

座長:木下毅(公益社団法人全日本病院協会 常任理事/公益社団法人全日本病院協会 高齢者医療介護委員会 委員長/医療法人愛の会 光風園病院 理事長)
演者:影山聖子(医療法人慈繁会 土屋病院 病棟看護師長) ,小椋静磨(公益財団法人脳血管研究所 附属美原記念病院 看護部 急性期病棟師長) ,平川淳一(日本精神科病院協会 副会長/東京精神科病院協会 会長/医療法人社団光生会 平川病院 院長/東京都南多摩医療圏認知症疾患医療センター長)

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全日病では平成30 年度老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業で「認知症の症状が進んできた段階における身体合併症に関する調査研究事業」を行った。
 本研究の目的は認知症と身体合併症を併せ持つ患者への適切な対応を行うためには、精神科以外の病床における行動・心理症状(BPSD)への対応力を高める視点や、精神科の病床における身体合併症への対応力を高める視点の他、適切な連携をとる視点が重要であると考え、まず入院医療機関における認知症の人の入院・治療方針等の実態と課題を明らかにした。そのうえで、認知症の症状が進んできた段階の身体合併症へ対応するための手法、本人・家族の意志を踏まえた身体合併症に関する疾病の治療方針の決定に関する課題について検討を行った。
 一般・療養病棟における認知症を有する患者の対応状況について「一般・療養病棟における認知症を有する患者の対応状況」、「一般・療養病棟における意思確認の困難な重度の認知症を有する患者へ対応について」「精神科病棟では、身体疾患への対応として、どのようなものを困難としているか。」についてアンケート調査と、インタビュー調査を行った。
 その結果、一般・療養病棟において対応や受入が困難となりやすいBPSD の内容は徘徊・帰宅願望が最も多く、次いで治療・処置への抵抗、職員への暴力、奇声・大声が多い。このうち、「治療・処置への抵抗」については、急性期一般病棟1~3でより顕著である。BPSD により対応困難となった際にとられる対応として、職員が常時付き添うといった対応のほか、身体拘束や行動を落ち着かせるための薬剤投与が、急性期~慢性期を問わず、多くの病棟で行われている。これらに比べると、精神病棟への転院・転棟要請を挙げた病棟は少ない。BPSD により対応困難な患者に対し、職員が常時付き添う病棟や、認知症患者への対応のための取組として、頻回の見回りを行っている病棟は多い一方、職員の加配を行う病棟は少ない。認知症を有する退棟患者のうち、認知症への対処のために退棟した者の割合は、いずれの病棟種類においても、6% に満たない。退棟患者の行き先としては、医療療養病床を除いては「自宅」が最も多い。一方、精神病棟への退棟は、最も多い「医療療養病棟」においても2% に満たない。
 この結果に基づき3人の演者に各施設での現状をお話しいただき討論する。