第61回全日本病院学会

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医業経営・税制委員会

医業経営・税制委員会
医療における税制について

Sat. Sep 28, 2019 10:40 AM - 12:10 PM 第2会場 (白鳥ホール(北))

座長:中村康彦(公益社団法人全日本病院協会 副会長/公益社団法人全日本病院協会 医業経営・税制委員会 委員長/上尾中央総合病院 理事長)
演者:猪口雄二(公益社団法人全日本病院協会 会長/医療法人財団寿康会 寿康会病院 理事長) ,川原 丈貴(公益社団法人全日本病院協会 医療経営・税制委員会 特別委員/株式会社川原経営総合センター 代表取締役社長) ,佐々木裕介(厚生労働省 医政局 総務課長)

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元号が予定通り「令和」に改元された今年、いよいよ消費税も予定通りこの10 月に8% から10% へと増税される。
 病院業界にとって控除対象外消費税(損税)問題は非常に負担が大きく、本来最終消費者である患者に転嫁されるはずの消費税を我々医療機関が負担をしている。
 損税は、医薬品・診療材料はもとより医療関連サービス業務においても生じている。特に近年増加傾向にある紹介料・派遣料・清掃費・寝具等、そして、赤字業務とされる給食委託においても生じるため、より大きな負担となってくることが予想される。
 平成に3% でスタートした消費税も令和で10% を迎え、当初の3 倍以上の税率となることによって、損税が更に病院経営を左右するほどの多大な影響を及ぼすことになる。
 平成30 年度の病院経営定期調査では赤字病院の割合は若干減ったものの、依然6割を超えている。特に一病院あたりの控除対象外消費税は94,338 千円となっており、4,385 千円(前年比+ 4.9%)負担が増えている。
 医業収益に対する控除対象外消費税の比率は、1.3%(平成29 年度)であるが、これは日本政策投資銀行が毎年公表している私的病院の利益率0.4% の実に3 倍以上にあたる。
 その様な中で昨夏、厚労省は5% から8% への増税時の診療報酬への補てんにおいて、一般病院で補てん実績が85% であり、15% もの不足があったことを公表した。これを受け与党は「平成31 年度税制改正大綱」で診療報酬への消費税補てんを基本診療料へ精緻に行うこととした。四病院団体協議会等の各団体は共同記者会見を行い、税制及び予算措置により、「現時点において全体で「医療に係る消費税問題」が解決」したとの見解を示した。
 3 月に中医協総会では10% への増税に向け、厚労省に新たな診療報酬点数等の答申を行い、公示は増税直前となるが新点数において一部急性期等への補てんを8% 増税時より手厚くなる点数を打ち出した。
 この消費税問題も「現時点において」、「非課税の下」では医療に係る「消費税問題は解決された。」というが、今後税率が将来的に17% ~ 25% 程度まで引き上げられることが予想されている中「診療報酬で対応して行くには限界がある」「税制の問題は税制の中で解決を」「まだ税率が低いうちにゼロ税率や還付方式など構造の軌道修正をするべき」などの意見も出ており医療業界を揺るがすこの消費税問題に議論は尽きない。
 今回これら控除対象外消費税を含む今後の税制の影響と対応をそれぞれの立場から幅広く議論していきたい。

演者:猪口雄二1,2 (1.公益社団法人全日本病院協会 会長, 2.医療法人財団寿康会 寿康会病院 理事長)

演者:川原丈貴1,2 (1.公益社団法人全日本病院協会 医療経営・税制委員会 特別委員, 2.株式会社川原経営総合センター 代表取締役社長)