第61回全日本病院学会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム4
地域包括ケアとACP

2019年9月29日(日) 09:00 〜 11:00 第1会場 (センチュリーホール)

座長:三浦久幸(国立長寿医療研究センター 在宅連携医療部 部長) ,今村康宏(公益社団法人全日本病院協会 常任理事/医療法人済衆館 済衆館病院 理事長) ,
シンポジスト:三浦久幸(国立長寿医療研究センター 在宅連携医療部 部長) ,五十嵐知文(社会医療法人恵和会西岡病院 副院長) ,千葉恵子(学校法人鉄蕉会 亀田医療大学看護学部看護学科/医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 非常勤看護師) ,野田智子(江南厚生病院 地域医療福祉連携室長)

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(学会長からの企画のねらい)
 ACP、最近では人生会議と名称は様々であるが、ここ愛知では国立長寿医療研究センターのお膝元ということもあり、ACP の普及啓発に関する様々な取り組みがなされている。今回基調講演および座長をお願いした三浦久幸先生は同センターの普及啓発活動の総指揮をとられている第一人者であり、地域包括ケアに対する取り組みを進めてこられている多くの医療機関にとって大変重要なご示唆をいただけるものと心から期待している。
 三浦先生のご発表にもある通り、ACP はこれからの地域包括ケアのありかたに密接な関係を持っていると私も痛感している。地域包括ケアシステムでおなじみの植木鉢の絵でいうところの土台となる「本人や家族の心構え」という部分、これがまさにACP に相当するのではないかと改めて認識する次第である。
 しかしACP の考え方を浸透させるのは大変難しいことで、神ならぬ人、ましていくら専門職とはいえ他人が「人の生き死に」のありかたに関わることの重大性を思うと、これからどのような流れができていくのか想像もつかない。人の考え方、価値観、宗教や哲学、そして地域性などといった、ACP を促進したり阻んだりするさまざまなファクターが存在する。そんな中、今回は三浦先生ご推薦の、それぞれの地域・組織で卓越したお取組みをなさっている方々にご発表いただくことができた。地域による違いはあるが、きっとどこにも共通する問題と、それに対する演者の先生方がこれまで懸命に努力してこられた結果が盛りこまれていることと思う。
 ACP という言葉を初めて聞いたとき、「如何に死に方を決めるか」ということであると早合点してしまったものだが、それは死に方を決めるばかりではなく裏を返せば生き方を決めるということ。欧米と違ってそういったことを予め表明しておく文化の馴染みがない日本において、これからこの考え方、取り組みがそれぞれの地域に合った形でどのように発展していくのかにとても興味がある。
 ACP、人生会議というのはそれ自体が達成すべき目標ではなく、あくまでも人間が「本来の生き方を自分自身が主役となって決める」という当たり前の、しかしなかなかできていないことを助けるための一つの「仕組み」であると私は思っている。本シンポジウムを通して皆様がこれからそれぞれの地域包括ケアを進め、深化させていく示唆を得ていただくことができれば学会長として大きな喜びである。