ごあいさつ
日本赤ちゃん学会 第21回学術集会
「赤ちゃんは教えてくれる」 開催にあたって
日本赤ちゃん学会 第21回学術集会
大会長 皆川 泰代
慶應義塾大学 文学部 心理学研究室 教授
日本赤ちゃん学会第21回学術集会は慶應義塾大学がホスト校となり,開催する運びとなりました。未だ先行きが見えぬコロナ禍の中で2度目のオンライン開催となります。このコロナ禍の1年で多くの方がオンラインコミュニケーションの利点,欠点を実感されたかと思いますが,本大会はその経験も活かし,より円滑で実りのある交流ができる場を目指して学術集会実行委員一同準備をしております。
本学会は医療,保育など現場での実践者,医学,工学,心理学,教育学など様々な分野の研究者から構成されておりますが,このような私達は,現場や研究の場で「赤ちゃん」が「教えてくれる」ことを日々学んでいるかと思います。基礎心理学研究として赤ちゃんを対象とする,私も赤ちゃんにヒト進化の痕跡を垣間見たり,脳内機構の仕組について謎かけをされたり,など実験は常に学びそして癒しの場です。いくら学務や教務が忙しくても赤ちゃん実験はできるだけ参加し赤ちゃんに「教えて」もらっています。今回の大会テーマはそのようなみなさまの赤ちゃんからの学びについて学術交流していただきたく「赤ちゃんは教えてくれる」としました。
このテーマは2020年2月にご逝去されたJacques Mehler先生の名著『赤ちゃんは知っている』に掛けたこと(意味は全く異なりますが)に,もう一つの意図があります。Mehler先生は赤ちゃん研究に新しい流れを作られた大家ですが,特に音声言語,コミュニケーション領域の分野を牽引されました。拙い孫弟子でもある私が,その功績を称えて本学会ではそれら領域も充実させました。
Mehler先生ばかりでなく,本学会の創設者である小西行郎先生,小林登先生と巨人が去っていかれました。私達はその功績を引継ぐばかりでなく,その肩に乗り新しく発展させていかねばなりません。21回目となる本学会は,ポストコロナでもある今後の新しい世界,新しい赤ちゃん学を拓いてゆくための礎の1つとなることを祈念します。限られたバーチャル空間ですが,積極的に学術交流をお楽しみください。