2021年度全国大会(第56回論文発表会)

講演情報

都市計画論文

講演番号[8]-[12]

2021年11月6日(土) 12:40 〜 14:40 第I会場 (共通講義棟C EL15)

司会:木村 優介(京都大学)、阿久井 康平(大阪府立大学)

13:40 〜 14:00

[10] イタリア共和国憲法第9条の「風景保護」に関する制定時の議論

-風景の保護とコミュニティ権、国家と州政府の役割

○宮脇 勝1 (1. 名古屋大学)

キーワード:憲法、イタリア、風景保護、コミュニティ権、国家と州政府の役割

本論は「風景の保護」に関わるイタリア共和国憲法の基本原則である第2条、第5条、第9条の制定時の議論を条文の間を結びつけて考察し、次の点を明らかにしている。
1) 憲法第9条は、憲法議員マルケージとモーロによって起草された。風景とともに文化や芸術遺産を憲法で扱う必要性、国際的な価値と国家による保護の必要性を憲法議員たちが認識していたことが、議事録から理解できた。
2) 憲法第2条は、個人の自由権と社会集団のコミュニティ権の二つの権利を統合するねらいがあった。
3) 風景保護は、個人の自由権とコミュニティ権を両立させ、個人の財産が地域コミュニティで生かされ、社会的機能の形成に寄与するように、私有財産権を風景保護のために制限することを憲法裁判所の判決で認めている。
4) 風景の保護について、地方分権も検討されたが、第9条に国家の役割を入れた経緯が明らかになった。
5) 憲法第9条のビジョンは、2004年のウルバーニ法典により、文化的発展に風景保護を用いる考え方が法律化し、国家と州政府が協力するかたちで、コミュニティ権を守るべく、私権の制限を行う仕組みを整えたことが明らかになった。