第61回日本小児神経学会学術集会(JSCN2019)

セッション情報

その他企画・共催シンポジウム

[EP] 緊急企画
急性弛緩性麻痺
新たな5類感染症全数把握疾患

2019年5月31日(金) 15:40 〜 17:10 第1会場 (1号館2F センチュリーホール)

座長:吉良龍太郎(福岡市立こども病院小児神経科), 安元佐和(福岡大学医学部医学科医学教育推進講座)

企画・趣旨のねらい

吉良龍太郎(Ryutaro Kira)
福岡市立こども病院小児神経科

 急性弛緩性麻痺(AFP)は,世界ポリオ根絶計画のなかで提唱された概念で,「急性に四肢の弛緩性運動麻痺を呈する疾患」の総称である.2014年,北米においてエンテロウイルスD68(EV—D68)による呼吸器感染症の流行期に,脊髄前角や灰白質のMRI異常を伴うAFP症例が多発し,急性弛緩性脊髄炎(AFM)の疾患概念が新たに提唱された.日本でも2015年秋にEV—D68の流行とAFMの多発が観察され,これによりEV—D68感染とAFM発症との関連が強く示唆された(Chong PF, et al. Clin Infect Dis, 2018).
 日本はWHO西太平洋地域で唯一AFPサーベイランスを実施していない国であったが,2018年5月から15歳未満のAFPが感染症法に基づく5類感染症全数把握疾患に追加された.以後,AFP症例の発生動向について監視が行われ,同年10月(第40週)頃からAFPの報告数が増加し,11月以降も毎週10人前後が報告され,第47週までの累積報告数は111例となった.2016年から2018年4月までの発生動向は不明だが,2015年と同規模かそれ以上のAFP多発の可能性があり,検出された病原体の情報を含め,調査が行われている.米国では,2014年,2016年,そして2018年と2年おきにAFMが多発し,世界的に病因・病態の解明と治療あるいは予防法の開発が望まれている.
 今回,2018年にAFPが5類感染症全数把握疾患となったこと,また2015年に次いで多発したことから,緊急企画として本シンポジウムを開催することとした.AFPとAFMの定義,AFPの届出における留意点や5点セットの検体の提出方法,AFMの診断で最も重要となる脊髄MRI読影のポイント,2018—2019年の日本を含む世界的な動向について,3人の演者に講演いただく.

森墾1, 奥村彰久2 (1.東京大学大学院医学系研究科生体物理医学専攻放射線医学講座, 2.愛知医科大学医学部小児科)