第61回日本小児神経学会学術集会(JSCN2019)

セッション情報

シンポジウム

[SY6] シンポジウム6
なぜ研究者が提案する脳保護療法は臨床応用されないのか

2019年5月31日(金) 13:30 〜 15:30 第3会場 (4号館1F 白鳥ホール(南))

座長:岩田欧介(名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野), 高嶋幸男(柳川療育センター,国際医療福祉大学大学院)

企画・趣旨のねらい

岩田欧介(Osuke Iwata)
名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野

 周産期の低酸素虚血による脳症は,低体温療法の登場によってはじめて治療可能な病態となりましたが,その臨床応用のプロセスはまさに苦難の連続でした.また,低体温療法に追加することによって治療効果を上げる併用療法の開発は,思うように進んでいません.このような基礎,トランスレーショナル研究,臨床応用のプロセスを,いくつかの事例を振り返りながら検証し,今後の脳保護療法や神経科学全体の発展のために,最前線の臨床家や研究者が見落としているものがないか,このシンポジウムを通じてハイライトできたらと考えます.
 セッションの冒頭では,動物実験で非常に強い脳保護効果を一貫して見せていたキセノン吸入療法が,臨床試験で全く効果を見せられなかった経緯について,河野先生に振り返っていただきます.次に,医療従事者が患者側の立場に立った時に見える,先進医療や実験的医療について,澤田先生に,私達が忘れかけている視点をお話しいただきます.3番手には,神経傷害のメカニズムについて研究してこられた松田先生に,トランスレーションのステップの問題点についてお話しいただきます.佐藤先生には,現在臨床応用が進められている臍帯血幹細胞治療を前提に,従来の研究とのアプローチの違いについて解説していただきます.最後に,森岡先生には,4名の演者のお話を受けて,脳保護療法や神経科学の発展を目指す専門家が留意すべき点についてハイライトしていただきます.このセッションをきっかけに,研究のアプローチが受益者である患児を一瞬も見失わないものになるよう,変わってくれると良いと考えています.