○島袋 静香 (沖縄科学技術大学院大学)
セッション情報
シンポジウム
[S11] シンポジウム11:ADHDの行動療法:異文化間ペアレンティングプログラムの実践とその課題
2024年5月31日(金) 10:10 〜 11:40 第1会場 (1号館 2F センチュリーホール)
座長:山下 裕史朗(久留米大学医学部高次脳疾患研究所/柳川療育センター),小枝 達也(国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部)
親を介して行う行動療法(Behavioral Parent Training: BPT)は、軽度から中等度のADHDを持つ子供に対する第一選択療法とされ、薬物療法よりも好まれる傾向にあります。これまでの研究で、BPTは育児手法や子供の行動改善に効果があることが示されています。しかし、特に西洋諸国以外の国々では、BPTの内容や支援の提供方法がその国の子育ての文化や支援体制に合わない場合があり、支援を必要とする家族に十分に普及できていない状況があります。そのため、様々なレベルのステークホルダーのニーズを考慮した工夫が求められています。このシンポジウムでは、日本とブラジルにおけるADHDを持つ子供の家族を対象としたBPTプログラムの開発と実施の取り組みを紹介します。初めに、ADHDの子供の母親の心理的な健康を考慮しながら育児スキルを教える、ハイブリッド型のペアレントトレーニング「Well Parent Japan」(WPJ)の開発と評価研究の結果を発表します。日本国内の複数の臨床現場で行なった無作為化比較試験では、従来の治療法と比べて優位性が確認されました。次に、ブラジルで開発されているオンライン形式のペアレントプログラムを紹介します。これは、WhatsAppを用いてニーズに応じた支援を適切に提供する効果的な方法を探ることにより、アクセシビリティの向上を目指しています。そして、宮崎県ではステークホルダーである親自身が主導して、親がアクセスし易い親支援プログラムの開発が行われています。これは、コミュニティ参加型の研究手法を取り入れた開発です。最後に、久留米市で19年間にわたって行われている、ADHDを持つ子供とその家族を対象とした夏期治療プログラム(Summer Treatment Program: STP)の実施経験とその効果について発表します。これらの発表を通じて、ADHDを持つ子供の家族が持つ異なるニーズへの対応や、BPTを実施する際に生じる共通または特有の課題について議論します。
○古川 絵美1, Patrica Bado2, Camila Bernardes2, Raquel Da Costa2, Paulo Mattos2 (1.沖縄科学技術大学院大学, 2.ドール研究所)
○笠井 綾 (宮崎国際大学)
○山下 裕史朗1,2 (1.久留米大学高次脳疾患研究所, 2.柳川療育センター)