日本機械学会 第35回計算力学講演会(CMD2022)

特別講演

特別講演1

糖鎖に基づくナノバイオテクノロジー
隅田 泰生 先生(鹿児島大学名誉教授・特任教授)
※詳細は下記
日時:2022年11月16日(水)13:00~14:00
司会:池田 徹(実行委員長/鹿児島大学)
 

特別講演2

物理シミュレーションとAIが切り開く地震工学・防災工学の新たな地平
原田 隆典 先生(宮崎大学名誉教授)
※詳細は下記
日時:2022年11月17日(木)13:00~14:00
司会:萩原 世也(実行委員/佐賀大学)


特別講演1
隅田 泰生 先生
鹿児島大学名誉教授・特任教授

講演概要:
免疫に必須な細胞接着は、糖鎖と蛋白質の特異的結合が引き金に起こること、細胞の癌化に伴い出現する「癌関連糖鎖抗原」は癌マーカーとなり得ること、細胞表層の糖鎖はウイルスには細胞に吸着するための最初のレセプターとして使用され、その感染を仲介することなど、糖鎖は生体内で多彩な機能を示し、生命現象に不可欠な役割を演じる。我々はこれらの糖鎖に基づく相互作用を分子レベルで解析するために、糖鎖を固定化したバイオデバイス「シュガーチップ」および「糖鎖固定化金ナノ粒子(SGNP)」を開発した。前者は表面プラズモン共鳴を利用した測定に使用することによって、後者は目視による観測でも、ともに糖鎖が結合する蛋白質やウイルスなどの対象物との相互作用を無標識で迅速・簡便に観測・定量できる。またSGNPはレクチンの1ステップ精製などへの応用し、さらにリアルタイムPCRを組み合わせ、高感度かつ高精度のウイルスのPCR検査診断法を確立し、新型コロナやインフルエンザの体外診断用医薬品キットを上市することが出来た。
本講演では、上記に加えて、ファイバー型シュガーチップを用いた癌細胞表層糖鎖に対する一本鎖抗体の調製法と、その抗体を用いた癌免疫細胞療法についてもお話したい。

略歴:
1984 年 4 月 日本学術振興会 奨励研究員
1985 年 4 月 摂南大学薬学 助手
1990 年 11 月 大阪大学理学部 助手
1994 年 7 月 大阪大学理学部 講師
1996 年 2 月 大阪大学大学院理学研究科 助教授
1998 年 4 月 兵庫医科大学細菌学教室非常勤講師(兼任、2006 年3 月まで)
2002 年 4 月 鹿児島大学大学院理工学研究科(2015 年4 月、鹿児島大学学術研究院理工学域工学系 に所属名変更) 教授
2002 年 4 月 理化学研究所播磨研究所 連携研究員(兼任、2012 年3 月まで)
2003 年10 月 科学技術振興機構(JST)プレベンチャー事業シュガーチップ
R&Dプロジェクトリーダー(兼任、2006 年9 月まで)
2006 年 9 月 株式会社スディックスバイオテック代表取締役(兼業)
2022年6月 鹿児島大学名誉教授
1988 年(7~11 月)、1989 年(7 月)、1990 年(7~8 月)、1995 年(7~8 月)
Virginia Commonwealth University, Department of Chemistry
および Department of Surgery, Visiting Scientist


特別講演2
原田 隆典 先生  
宮崎大学名誉教授              

講演概要:
地震工学・防災工学は医学や生産工学に比べると遅れています。今世紀前半の日本は、南海トラフ巨大地震やそれに伴う直下地震、地球温暖化による台風や豪雨による大災害多発時期に相当します。
これまで、地震工学・防災工学は、実際に起きた災害経験を元に発展してきました。しかし、甚大な災害は、数百年~千年単位で生じる中で、従来の小さな災害を対象とした経験的方法だけでは、現代の社会経済変化に即した対策が難しくなっています。
これを補完するために理論的方法に基づく物理シニュレーションモデルを開発して、数百回の地震をコンピュータ内で発生させて、管理者や技術者とその動画を見ながら地域や工場の弱点を探し、その弱点の補強方法を自治体や工場に提案しています。また、地震による土砂崩れと橋梁の崩壊の再現、台風時の係留貨物船の重要施設への衝突事故の再現や豪雨による橋梁の流出再現、海洋風力発電施設の安全性等の事例を紹介します。これらの事例は、教え子の本橋英樹氏によるものです。以下に、本橋英樹氏との共著を参考文献として掲載します。
参考文献:入門・弾性波動理論、現代図書(2017年)、入門・数理地震工学、技報堂出版(2020年)、フーリエ変換と応用、現代図書(2021年)

略歴:
研究分野は地震工学・防災学・災害学
1952年山口県生まれ、工学博士(1980年)
1975年九州工業大学卒業
1980年東京大学大学院博士課程土木工学専攻を修了、同年より宮崎大学工学部助教授
1997年宮崎大学工学部教授~現在
2000年東京大学生産技術研究所客員研究員~現在
2011年宮崎大学大学院農学工学総合研究科防災環境研究センター長
2018年宮崎大学名誉教授、宮崎大学発ベンチャー企業㈱地震工学研究開発センター技術顧問
この間
1980年コロンビア大学研究助手兼任
1984年建設省土木研究所客員研究員兼任
1985年コロンビア大学客員研究員兼任
2050年までには、「地震が怖くない社会」となるよう、地震災害撲滅に役立つ科学技術的知識の開発とその具体的道具の開発を目的として研究。私の手法を使って設計した明石海峡大橋が、1995年の阪神淡路大震災に耐えたことは、研究の目指すことの実現の一つの証。