第2回新型コロナウイルス研究集会

教育セミナーのご案内

教育セミナーのご案内
教育セミナーを以下6社様ご協賛にて企画しております。
聴講者用弁当を配布予定です。

8月2日(金)ランチョンセミナー1
開催日時: 8月2日(金)12:30-13:30
共催: Meiji Seikaファルマ株式会社
テーマ: COVID-19の疫学、臨床医学、免疫学、ウイルス学
企画名: 新型コロナワクチンの基礎と臨床~今後の接種を考える~
演題名: 演題名1:新型コロナワクチンの光と影
演題名2:新型コロナワクチンの最新動向
座長名前・所属: 松村 隆之 先生 国立感染症研究所 治療薬・ワクチン開発研究センター 第三室長
演者名前・所属: 演者1:中山 哲夫 先生 学校法人北里研究所 北里大学 名誉教授
演者2:内藤 俊夫 先生 順天堂大学医学部総合診療科学講座 教授
抄録: 新型コロナワクチンの光と影
SARS-CoV-2が同定されてわずか1年足らずでmRNAワクチンが開発され緊急使用のワクチンとして承認されました。mRNAワクチン以外にも新規にウイルスベクターワクチン、遺伝子組換え精製蛋白ワクチンも認可されました。新型コロナが出現して5年目で、mRNAワクチンが接種されて4年目で多くの課題が山積しています。ワクチンが世界中で多くの命を救ってきたことは事実ですが、免疫能の減衰、変異株に対する効果の減弱、感染後の後遺症、ワクチン接種後の心筋炎、血栓塞栓症、血小板減少症と重篤な副反応が問題となってきました。ワクチン開発の長い歴史の中で医学上の新しい試みは、いつの時代にも厳しい批判を浴びるのが常です。しかし、このような課題に対して挑戦し進歩してきたことに疑いのないことです。こうした課題は新型コロナmRNAワクチンに限らず他のワクチンに対してもhesitancyが拡大しており他の感染症対策にも影を落としています。ワクチン製造能力を有するわが国でワクチン開発が遅れていることが問題視されましたが、我が国でも複数の剤型のワクチン開発研究が進み承認され追加接種用の2024年版の製造が始まっています。
 
新型コロナワクチンの最新動向
Lancetの報告によると、「ワクチンは安全である」と答えた日本人は世界最低の8.9%しかいなかった。また、2019年に行われた調査では、「安全ともそうでないとも言えない」との回答が55%と、世界140国で最多だった。つまり、日本は世界で最もワクチンに懐疑的な国とされている。COVID-19ワクチンは5回目接種以上でも効果が認められているが、このような国で頻回にワクチンを打ち続けてもらうことは大変困難である。このため、安全性が高く、長期に効果が持続するワクチンの重要性は高い。本講演では、次世代レプリコンワクチンARCT-154について紹介を行う。また、「ワクチン接種への行動変容」における、AI等を用いたICTの役割についても述べたい。

► 8月2日(金)イブニングセミナー1
開催日時: 8月2日(金)18:00-19:00
共催: HiLung株式会社、三井化学株式会社
テーマ: ウイルス学
演題名: Building the plane while flying: Drug discovery during the COVID-19 pandemic
座長名前・所属: HiLung株式会社 山本佑樹 様
演者名前・所属: Professor Sumit Chanda, Department of Immunology and Microbiology, Scripps Research
抄録: The emergence of SARS-CoV-2 as a global pandemic in 2019, which has tragically claimed nearly 7 million lives to date, has underscored the urgent necessity for the development of antiviral therapies targeting viruses with pandemic potential. In January 2020, we assembled a team of virologists, including researchers from the Sun, Garcia-Sastre, Yuan, and Yuen laboratories, to investigate existing drugs that could be repurposed as antivirals for the novel coronavirus.
These collaborative efforts led to the identification of 21 known drugs that exhibited the capability to inhibit SARS-CoV-2 in vitro at concentrations believed to be achievable when administered to humans. Further research involved a comprehensive characterization of one of these compounds, clofazimine (CFZ), which demonstrated significant antiviral activity in vivo, both as a preventive measure and in a therapeutic context. CFZ was found to function through multiple mechanisms, including the inhibition of helicase and spike-mediated fusion, and it displayed synergy with the RdRp inhibitor remdesivir.
Although more potent direct-acting antivirals have been developed and approved for SARS-CoV-2, thereby reducing the need for repurposed therapies, the importance of advancing additional antivirals for coronavirus infections and other viruses with pandemic potential remains evident. To this end, we established the Center for Antiviral Medicines and Pandemic Preparedness (CAMPP) as a member of the Antiviral Drug Discovery (AVIDD) consortium. These collaborative endeavors have accelerated the development of novel inhibitors targeting SCV2 Mpro and RdRp, as well as inhibitors against helicase, PLpro, and viral RNA translation. Furthermore, the Center has identified promising inhibitors for other viruses, such as DENV, EBOV, and LASV, which are currently undergoing therapeutic development.
The collective efforts to develop novel vaccines and antivirals aimed at combating viruses with pandemic potential will play a crucial role in ensuring that the world is better prepared for future pandemics.

► 8月3日(土)モーニングセミナー1
開催日時: 8月3日(土)8:30-9:20
共催: アストラゼネカ株式会社
テーマ: 臨床医学
演題名: 臨床現場での気づきからうまれた新型コロナ唾液検査
―新型コロナと対峙した84日間の挑戦の記録―
座長名前・所属: 髙折 晃史 先生 京都大学大学院医学研究科 血液内科学 教授
演者名前・所属: 豊嶋 崇徳 先生 北海道大学大学院医学研究院 血液内科 教授 
抄録: 忘れもしない2020 年4 月、北大病院を受診した最初の新型コロナの患者が誤って提出した唾液検体がPCR 陽性となった。当時、感染リスクのある鼻咽頭ぬぐい液の採取者を確保するのは困難で、PCR検査が進まない原因となっていた。この症例での気づきから、検尿のように自己採取した唾液で検査できるようになればPCR検査が一気に普及できると考え、直ちに鼻咽頭ぬぐい液と唾液を比較する臨床研究を開始し、短期間で唾液診断法の有用性を証明することができ、有症状者に対する唾液PCR法がスピード認可された。次の課題は、感染拡大の原因となる無症状感染者のマススクリーニング検査を可能とするための唾液検査法を確立するため、空港検疫、保健所検査において唾液PCR検査と鼻咽頭ぬぐい液PCR検査を前向きに比較する世界最大規模の臨床研究を実施し、唾液検査に有用性を証明した。しかしその頃には潜伏期の短い変異株が出現し、検査結果の判明に時間のかかるPCR検査では感染阻止が困難となっていた。そこで、より迅速・簡便な唾液を用いたランプ検査や抗原検査の開発に産学共同で取り組み、次々と確立していった。これにより状況に応じた検査法の選択が可能となり、迅速な感染対応やクラスター対策、水際対策を可能とし、空港検疫のスマート化により東京五輪の安全な開催が可能となった。その後、唾液検査は急速に全国に広がり、当たり前の検査となっていいた。これにより民間検査の参入、行政無料検査、スポーツ検疫、東京オリンピック検疫などわが国のコロナ対策を大きく進展させ、「ウィズ・コロナ」時代の生活を可能とする原動力となった。これは、些細な臨床での気づきから国を巻き込み新型コロナと対峙した84 日間の挑戦の記録である。

► 8月3日(土)ランチョンセミナー2
開催日時: 8月3日(土)12:25-13:25
共催: 武田薬品工業株式会社
テーマ: 臨床医学、免疫学
演題名: COVID-19 医療機関の対策の現状とワクチンの有効性に関する検討
座長名前・所属 佐藤 佳 先生 東京大学医科学研究所 教授
演者名前・所属 森本 浩之輔 先生 長崎大学熱帯医学研究所 臨床感染症学分野 教授
抄録: 新型コロナワクチンは、一般の予想よりも早期に開発が進み2022年初頭から国内での接種が始まった。当時、国外における開発時の治験による有効性(efficacy)のデータは知られていたが、国内における有効性のデータは存在していなかった。しかし、徐々に感染者数が増えていく中、臨床現場は業務の負担と緊張感が高まっており、容易に臨床研究を受け入れて行なうことは難しい状況にあった。VERSUS研究は、2022年に入ってから準備を開始し5月に臨床研究の倫理委員会で承認され、7月1日から症例登録を開始した。パンデミック下で開始する臨床疫学研究として、いくつか困難があったが同年10月には2022年夏に流行したデルタ株に対する有効性を報告した。
その後、広く最新のデータを社会に還元することを目的として、今日まで11報の報告書と9報まで厚生労働省新型コロナウイルス感染対策アドバイザリーボードへのデータの提出、3件の論文、3回の厚生労働省予防接種委員会へのデータ提供を行なった。
セミナーでは、新型コロナウイルス感染症の状況や、2023年5月の5類移行後の一般病院における感染対策や臨床に加え、VERSUS研究の最新のデータを含めた成果を紹介し、パンデミック下での研究の開始から遂行の中で得られた経験と課題についても議論したい。

► 8月3日(土)イブニングセミナー2
開催日時: 8月3日(土)18:00-19:00
共催: モデルナ・ジャパン株式会社
テーマ: COVID-19の疫学、免疫学、ウイルス学
演題名: COVID-19 mRNAワクチン接種による高齢者の免疫応答 ―T細胞応答を中心にー
座長名前・所属: 石井 健 先生 東京大学医科学研究所感染・免疫部門 ワクチン科学分野 教授
演者名前・所属: 濱崎 洋子 先生 京都大学iPS細胞研究所/医学研究科免疫生物学
抄録: コロナ禍で新たに開発されたCOVID-19 mRNAワクチンは、一般にワクチン効果が低いとされる高齢者においても、接種後早期には高い有効性を示し、パンデミックのコントロールに大きく貢献した。しかしながら、従前のワクチンと同様、高齢者では抗体価が低い傾向にあり、効果の持続時間が短いとの報告もある。また、誘導される免疫応答や副反応には顕著な個人差が認められている。
他方、ワクチン効果は一般的に抗体価で評価されることが多いが、新型コロナウイルスのような変異株の出現が早い病原体の場合、ワクチンの有効性を中和抗体による感染防御のみに期待するのは必ずしも適切ではない可能性がある。抗原認識様式がウイルス変異の影響を受けにくく、ウイルス感染細胞を直接殺傷することができるT細胞(特にCD8+の細胞傷害性T細胞)が適切に機能を発揮すれば、感染してもウイルスの早期排除に貢献する効果は十分に期待できる。mRNAワクチンはCD8+ T細胞応答の誘導効率がよいとされているが、記憶細胞の形成や長期維持への効果に関する知見は限られている。T細胞は加齢で数的・質的変化をきたしやすいことに鑑みても、T細胞応答と記憶に関する年齢差とそのメカニズムを明らかにすることは、重要な課題である。
本講演では、成人(65歳未満)と高齢者(65歳以上)計約200人の協力を得て我々が最近行っている、COVID-19 mRNAワクチン(BNT162b2)接種後の免疫応答と記憶について、主にT細胞に着目して比較した解析結果を紹介し、高齢者における免疫応答および記憶の特性と、それをふまえた効果的な接種ストラテジーについて考えてみたい。また、個人差形成の要因や効果予測の可能性についても議論したい。

► 8月4日(日)ランチョンセミナー3
開催日時: 8月4日(日)12:30-13:30
共催: ファイザー株式会社 メディカルアフェアーズ
テーマ: 免疫学
演題名: Behind-the-scenes stories on the research & development of BNT162b2,and future perspectives
座長名前・所属: 佐藤 佳 先生 東京大学医科学研究所 教授
演者名前・所属: Bushra Ilyas, B. Pharm PhD MBA, COVID-19 Global Medical Lead, Pfizer UK
抄録: mRNA-based technology represents a new approach to therapeutics, leveraging the cell’s own translational machinery for target protein production. Backed by over 60 years of research and development, the technology’s adaptability and rapid scalability made it ideally suited to meet the urgent needs of the COVID-19 pandemic.
This seminar discusses the development of the Pfizer-BioNTech mRNA COVID-19 vaccine, BNT162b2, highlighting the new processes that underpinned its swift development and deployment. It will elucidate on the rationale behind the data-driven selection of the full-length mRNA candidate from a shortlist of four potential vaccine constructs. These constructs represented different mRNA formats and targeted different antigens, including the full-length spike protein and receptor-binding domain.
The successful execution of concurrent clinical trials for a broad population was a critical factor in the development of BNT162b2. Combined Phase 1/2/3 studies allowed for an expedited development timeline that resulted in the vaccine being delivered to patients within nine months of the start of the pandemic, all without compromising safety, quality, scientific, and regulatory requirements.
One of the key advantages of mRNA-based technology is its streamlined manufacturing process, which enables swift vaccine production at scale following initial identification of the target protein. This is showcased by the platform’s ability to efficiently produce variant-specific updates to vaccine composition in response to the continuing challenges of SARS-CoV-2’s rapid mutations. Variant-specific updates closely matched to circulating, antigenically distant, immune-evasive strains are designed to provide ongoing protection as the virus evolves.
Beyond COVID-19, mRNA holds promise for diverse therapeutic applications, including vaccines for other infectious diseases, immunotherapy, and cancer, underscoring its pivotal role in modern medicine and public health.