2021電気化学秋季大会

基調講演・特別講演一覧

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(敬称略)
シンポジウム 講演種別 講演日時 講演者名 所属
基調講演 基調講演 9月8日 17:30 - 18:15 片山 昌治 豊田通商
S1.分子機能電極-界面電子移動制御とその応用 特別講演 9月8日 13:45 - 14:30 松本 太 神奈川大学
    9月9日 10:45 - 12:15 春山 哲也 九州工業大学
S2.光電気化学とエネルギー変換 特別講演 9月8日 10:00 - 10:30 パラシャント カマト University of Notre Dame
    9月8日 13:30 - 14:00 工藤 昭彦 東京理科大学
    9月9日 10:45 - 11:15 森川 健志 豊田中央研究所
    9月9日 13:30 - 14:00 柴山 直之 桐蔭横浜大学
S3.有機電子移動化学が拓く新領域 特別講演 9月8日 11:30 - 12:15 光藤 耕一 岡山大学
    9月8日 16:15 - 17:00 大谷文章 北海道大学
    9月9日 10:00 - 10:30 石垣 侑祐 北海道大学
    9月9日 11:15 - 11:45 館野 拓之 産業技術総合研究所
S4.生命科学と電気化学 特別講演 9月8日 14:00 - 14:30 加藤 創一郎 産業技術総合研究所
    9月8日 14:30 - 15:00 石井 俊一 海洋研究開発機構
    9月8日 15:15 - 15:45 嶋川 銀河 関西学院大学
    9月8日 15:45 - 16:15 蓮沼 誠久 東京工業大学
S6.電池の新しい展開 特別講演 9月8日 11:45 - 12:15 入山 恭寿 名古屋大学
    9月9日 11:45 - 12:15 獨古 薫 横浜国立大学
S7.キャパシタ技術の新しい展開 特別講演 9月8日 10:45 - 11:30 薄井 洋行 鳥取大学
    9月8日 11:30 - 12:15 太田 謙一 ビフレステック
    9月8日 14:15 - 15:00 浦木 康光 北海道大学
    9月8日 16:00 - 16:45 松本 一彦 京都大学
S8.社会基盤を支える腐食科学と表面処理技術 特別講演 9月9日 13:30 - 14:30 佐伯 功 室蘭工業大学
S10.ナノスケール界面・表面の構造とダイナミクス 特別講演 9月8日 13:30 - 14:15 八木 一三 北海道大学
S12.化学センサの新展開 特別講演 9月8日 14:15 - 15:00 谷口 卓史 新コスモス電機
    9月9日 10:00 - 10:30 松浦 宏昭 埼玉工業大学
    9月9日 11:45 - 12:15 有本 聡 パナソニック
    9月9日 13:30 - 14:15 丹羽 修 埼玉工業大学
S13.電子材料及びナノ機能素子 特別講演 9月8日 10:45 - 11:30 都甲 薫 筑波大学
    9月8日 11:30 - 12:15 町田 友樹 東京大学
    9月8日 13:30 - 14:15 渡邊 健夫 兵庫県立大学
    9月8日 14:15 - 15:00 近藤 英一 山梨大学


基調講演
9月8日 17:30 - 18:15
片山 昌治 (豊田通商)
昨今の世界的なカーボンニュートラルの取り組み強化により、再生エネルギーへの移行や電気自動車など電動化の流れが急加速している。この電動化の潮流において、リチウムイオン電池の重要性はますます高まっているとともに、資源確保や持続可能な社会実現のためのリサイクル要請など課題も表面化しつつある。
本講演では講演者が統括する非鉄資源および資源循環分野を中心に、電動化が本格化する以前の2011年から当社取り組んでいるリチウム資源開発や、当社の強みであるリサイクル事業紹介しながら、リチウム市場環境やリチウムイオン電池リサイクルなどを議論し、本邦企業唯一のリチウム生産者として安定供給に取り組む現状を解説する。
 




S1.分子機能電極-界面電子移動制御とその応用
9月8日 13:45 - 14:30
金属間化合物および金属酸化物担持体による電極触媒反応の促進
松本 太 (神奈川大学)
電極反応の過電圧を小さくすることで反応を促進させることは長年研究が行われてきた電気化学における課題の一つである。本講演では,固体高分子形燃料電池用カソードおよびアノード反応を検討対象とし、白金系電極触媒のナノ粒子を金属間化合物とする、それらを金属酸化物担持体に固定することで電極反応が促進されることについて検討を行ってきた結果を紹介する。特に、金属間化合物化による、担持体と触媒粒子の電子的相互作用による白金触媒の電子状態のコントロールによる活性の促進を中心にお話をさせて頂く。

 
9月9日 11:30 - 12:15

気相と水相の相界面反応による元素循環

春山 哲也(九州工業大学)
相界面反応は、活性化した気体が水から水素原子を引き抜くことによって気体が還元される無触媒の気体還元反応である。
窒素と水の相界面反応ではアンモニアを生産することが出来、酸素と水の相界面反応ではヒドロキシラジカルを生成することが出来る。
相界面反応は水を直接の水素源とするところに大きなアドバンテージがあり、水素ガス製造を必要としない。したがって、プロセス全体としてのエネルギー消費量と二酸化炭素排出量を削減でき得ることが見込まれる。また、強力な酸化力をもつヒドロキシラジカルは、酸化反応後は水と酸素に戻るため、様々なプロセスにおける廃棄物ゼロ化に資することが見込まれる。
 本講演では、相界面反応の反応機構と、その応用・製品化の事例までを解説する。
 
 
S2.光電気化学とエネルギー変換 特別講演
9月8日 10:00 - 10:30

A Photoelectrochemical Insight into the Halide Migration in Mixed Halide Perovskites

パラシャント カマト (University of Notre Dame)
Both electronic and ionic conductivity play an important role in determining the overall photovoltaic performance of perovskite solar cells. Both intrinsic (e.g. point and extended defects) and extrinsic (e.g. light, thermal, electrical, and chemical gradients) factors dictate the overall migration of ions in perovskite films. We have now succeeded in modulating the photoinduced iodine expulsion process in mixed halide perovskite (MHP) films through externally applied electrochemical bias in a photoelectrochemical cell. At anodic potentials, electron extraction at TiO2/MHP interfaces becomes more efficient, leading to hole build-up within MHP films.

 
9月8日 10:00 - 10:30

人工光合成を目指した光触媒開発

工藤 昭彦 (東京理科大学)
資源・エネルギー・環境問題,および水素社会の構築の観点から,光触媒を用いた人工光合成技術が注目されている.ここで,光触媒系は,単一粒子型光触媒とZスキーム型光触媒に大きく分類される.本講演では,本分野の研究背景や基礎的な話をした後に,水分解による水素生成および水を電子源とした二酸化炭素還元に活性な金属酸化物や金属硫化物粉末光触媒開発の現状について解説する.
 
 
9月9日 10:45 - 11:15

人工光合成: 太陽光で二酸化炭素を変換する光エネルギー貯蔵技術

森川 健志 (豊田中央研究所)
我々は、新たなエネルギーキャリア創成とそれを活用した二酸化炭素(CO2)排出削減への貢献を目指して、太陽光エネルギーと水とCO2から有用な有機物を合成する、人工光合成の研究を進めてきました。最近では脱炭素化社会が実現された将来像への意識が急激に向上した背景もあり、人工光合成技術への期待が以前よりも高まっています。本講演では、我々が推進中の、分子触媒、無機系固体触媒そして半導体を組合せた人工光合成の研究開発の現状、例えば究極のシンプル構成を目指した“人工の葉”ともいえる一枚板状の電極素子、鉄やマンガンなどの資源量の豊富な元素を活用したCO2の変換などを紹介するとともに、将来への期待を述べます。
 
 

9月9日 13:30 - 14:00

高性能ペロブスカイト太陽電池の実現に向けた材料設計

柴山 直之 (桐蔭横浜大学)
カーボンニュートラル社会の実現のためには、革新的な発電デバイスの実用化が必要である。発電デバイスの中でも変換効率の高いペロブスカイト太陽電池が注目を集めているが、その作製プロセスについては未解明・未解決な問題点が多く、これらについての学術的な基礎的理解が必要とされている。
ペロブスカイト太陽電池については、大面積化により急激に変換効率が低下することや、デバイス特性の再現性が低いことが問題となっている。これらの問題を解決するためには、発電層に用いられるペロブスカイト結晶層の結晶化プロセスを明らかにし、結晶サイズやモルフォロジーを制御する必要がある。
 本発表では、放射光X線回折測定を用いてペロブスカイト結晶層の結晶化プロセスを観察した結果について発表する。また、結晶の大粒径化に向けた指針について報告する。



S3.光電気化学とエネルギーの変換 特別講演
9月8日 11:30 - 12:15

電気化学的な結合形成反応を鍵とするπ電子系分子の効率合成

光藤 耕一 (岡山大学)
π電子系分子は、様々な機能を示す重要な分子群であり、その合成と物性が盛んに研究されている。我々は、有機電解反応を用いてπ電子系分子を効率的に合成する手法の探索に取り組んできた。最近では特に、炭素―ヘテロ原子結合形成反応によるπ電子系分子の効率的合成に注力している。例えば、ハロゲンメディエータを用いる脱水素型炭素―硫黄結合形成反応によるチエノアセン類の合成法を見いだした。連続的な炭素−硫黄結合反応によるチエノアセン類の合成も達成している。また、電気化学的な水素原子移動を鍵とするラジカル的な炭素−リン結合形成反応によるホスホール類の合成にも成功した。これらの最近開発した反応について紹介する。

 
9月8日 16:15 - 17:00

界面における多電子移動反応と電極触媒作用の再考察

大谷文章(北海道大学)
有機化合物の酸化還元をはじめとして,ほぼすべての電子移動反応は,多電子過程である.電気化学では,これまでこの多電子移動過程は,標準電極電位について想定される移動電子数を考えているにすぎない.たとえば,酸素の還元/水の酸化という正逆反応は,4電子過程とされ,標準水素電極基準で+1.23 Vという電位を考えてきたが,酸素生成反応では,電極電位がこれより正側(アノード側)であれば,2電子過程でも4電子過程でも起こりうる.電極が移動電子数をどのようにきめているのかという速度論的考察はほとんどない.ここでは,光触媒反応における多電子移動過程についての速度論的解析にもとづいて,多電子移動過程と電極触媒作用について再考する.

 
 
9月9日 10:00 - 10:30

光/熱/電気化学的刺激による分子構造制御と物性変調

石垣 侑祐 (北海道大学)
本講演では,高度に歪んだ二重結合をもつ超混雑エチレン(OCE)類に焦点を当て,パラキノジメタン誘導体に関する最近の成果について紹介する。具体的には,アントラキノジメタン誘導体に着目して研究を進め,「二種類の折れ曲がり型異性体間の光/熱定量的相互変換に基づく選択的酸化」及び「加熱/冷却による閉殻/開殻構造制御と酸化特性スイッチング」を実現した。また,これらのアントラキノジメタン誘導体では,二電子酸化によりアントラセン骨格を有するジカチオンが形成する。この点に着目し,新たに設計したビスキノジメタン誘導体において,「酸化によるペンタセン骨格の一挙構築と段階的な還元によるアセン構造制御」を達成した。これらは電子移動と構造変化を組み合わせることで実現されたものである。
 

9月9日 11:15 - 11:45

金属酸化物系光電極を用いた選択的有機変換反応系の開発

館野 拓之 (産業技術総合研究所)
光電極反応は,太陽光エネルギーを利用することにより,従来法よりもわずかな電圧で反応を進行させることのできる,環境調和型のプロセスとして期待されている.しかし,一般的に用いられる金属酸化物系光電極は非常に強い酸化力を有するため,有機変換反応への応用においては生成物の選択性向上が大きな課題であった. これに対し,我々の研究グループでは電子移動メディエーターや強酸などの添加剤による外的な反応性の制御により,いくつかの有機変換反応において生成物の選択性を劇的に向上させることに成功した.本講演では,我々のこれまでの研究成果について紹介する.

 
S4.生命科学と電気化学 特別講演
9月8日 14:00 - 14:30

微生物電気化学を利用した二酸化炭素固定技術

加藤 創一郎 (産業技術総合研究所)
喫緊の課題である二酸化炭素の排出および大気中濃度削減の実現に向け、マテリアル(触媒化学や電気化学)およびバイオ(植物、藻類、微生物)の観点から多くの研究がなされている。マテリアルもしくはバイオのどちらかを使用した技術は、互いに相補的ともいえるメリット・デメリットを有している。すなわち、マテリアルは反応速度は速いが二酸化炭素から複雑な有機物を作ることができず、バイオは多様な有用有機物を合成可能であるが反応速度や効率は極めて低い。本講演では、微生物電気化学を活用しマテリアルとバイオのもつ優位性を補完しあうことで効率的な二酸化炭素固定を可能にするシステムの実現に向けた取り組みを紹介する。
 
 

9月8日 14:30 - 15:00

地下圏に生息する電気メタン合成菌を使用したCO2と電気からのメタン生成

石井 俊一 (海洋研究開発機構)
鉱物に満たされた地下圏には、固体と電子授受をして生きる多様な電気活性微生物が生息している。特に、天然ガス田や油田の地下圏にはメタン生成古細菌が生息することが知られており、その中には鉱物から電子を受け取り、CO2を還元してメタンを生成する電気メタン合成微生物が存在すると考えられている。本研究では、電極を用いたリアクター培養により、天然ガス田に生息する電気メタン合成微生物群集を集積し、その微生物機能をマルチメタオミックス解析により同定した。さらに、電気メタン合成微生物を利用したCO2の資源化が、Carbon Capture & Utilizationの一要素技術となり得る可能性を検討した。

 
9月8日 15:15 - 15:45

“生きている光合成”から学ぶこと ~光合成の反応制御と活性酸素生成抑制システム~

嶋川 銀河 (関西学院大学)
近年、生きた光合成微生物と電気化学系とのハイブリッドによるSemi-artificial photosynthesisの研究が活発化しているが、光合成の反応が本質的に孕む活性酸素の危険性がしばしば蔑ろにされている。光化学反応において励起エネルギーや電子を酸素へ渡さないためには、元来生き物が有する光合成反応制御の理解が不可欠である。本発表では、分子生物学が大きく発展した昨今において忘れられがちである生理学の視点から、光合成の反応制御と活性酸素生成を抑制するシステムについて紹介するとともに、電気化学と光合成研究の今後の展望について考える。

 
9月8日 15:45 - 16:15

バイオとデジタルの技術融合によるスマートセルの創出

蓮沼 誠久 (神戸大学)
持続可能な物質製造プロセスの構築に向け,微生物による低分子化合物生産技術の開発が求められている。その中で,計算科学的手法による代謝経路の設計,ロボティクスによる組換え微生物株の大量生成とハイスループット評価,メタボロミクスによる代謝メカニズム解析,機械学習による有効遺伝子の絞り込み等を可能にする技術開発が進められている。本講演ではこうした先端バイオ技術の開発動向と演者らの取組みを紹介する。また,将来性ある技術として,CO2を細胞内で有用有機化合物に変換できるシアノバクテリアを用いた物質生産についても触れ,光合成電子伝達経路の改変が酸素発生やATP生産,光合成能力を向上させた研究成果を紹介する。


S6.電池の新しい展開 特別講演
9月8日 11:45 - 12:15

全固体電池の高性能化に向けた電極―固体電解質界面の課題

入山 恭寿、本山 宗主(名古屋大学)
次世代電池の一つとして全固体電池が注目されている。全固体電池の内部には様々な界面があり、そこでのイオン輸送は電池の高出入力化・高容量化に深く関与している。
 本講演では全固体電池の電極―固体電解質に焦点をあて、その低抵抗化や反応安定化に関わる因子について演者らが検討してきた結果を紹介する。あわせて、演者が代表者として進めている新学術領域「蓄電固体界面科学」の取り組みについても一部紹介する
 
 
9月9日 11:45 - 12:15

アルカリ金属塩溶媒和物のホッピング伝導機構と電池応用の可能性

獨古 薫 (横浜国立大学)
アルカリ金属塩と有機溶媒からなる溶媒和物の構造,基礎物性,輸送特性および電池適用について、我々の最近の研究成果を中心に紹介する.Li塩やNa塩を有機溶媒と混合すると,アルカリ金属イオンは溶媒和されて塩が解離するが、極めて高い塩濃度(3 mol/L以上)では、全ての溶媒分子がイオンに配位した溶媒和物となり、特異な物性を発現する。例えば、高塩濃度にすることで電解液の熱安定性や酸化安定性が向上する。さらに、溶融溶媒和物中でアルカリ金属イオンのホッピング伝導が発現することを最近になり我々は見出した。これにより、電解液中のアルカリ金属イオンの輸率を向上できるため、高出力な電池を構築できる可能性がある。


S7.キャパシタ技術の新しい展開 特別講演
9月8日 10:45 - 11:30

TiO2/MnO2複合電極を用いた光電気化学キャパシタの構築

薄井 洋行(鳥取大学)
光電気化学キャパシタは,電気化学キャパシタと太陽電池の機能を併せ持つ革新的蓄電デバイスである.演者らは,光電変換を行うTiO2とNa+吸着に基づく蓄電を行うMnO2を組み合わせた複合電極の開発に取り組んでおり,複合電極への光照射により可逆的な充放電反応が進むことをこれまでに見出してきている.ただし,光電気化学キャパシタの特性をより向上させるためには,MnO2のNa+吸着量を増加させることが課題として挙げられる.本講演では,TiO2,MnO2および電解液のそれぞれに対して材料化学的な工夫を行うことで特性改善に成功した事例について解説する.

 
9月8日 11:30 - 12:15

色素増感太陽電池×リチウムイオンキャパシタを用いた折り畳みマウスの開発

太田 謙一(ビフレステック)
“電池を捨てる必要がない社会”に資するべく、世界初となる色素増感太陽電池とリチウムイオンキャパシタを応用したマウスを開発し、販売を開始した。そのコンセプトや開発経緯を紹介する。また弊社で開発するキャパシタ応用製品についても紹介し、今後のキャパシタに対する期待と応用の可能性について述べる。

 
9月8日 14:15 - 15:00

リグニンを原料とする電気二重層キャパシタ用部材の開発

浦木 康光 (北海道大学)
植物細胞壁成分の一つであるリグニンの電界紡糸、不融不溶化、炭素化、および賦活化を経て調製した活性炭素繊維を、電気二重層キャパシタ(EDLC)の電極材料として開発した。さらに、リグニンのポリエステルフィルムや電界紡糸不織布をセパレータとして用い、リグニンベースの電極と共にEDLCを組み立てた。ポリステルフィルムは、有機電解質に適したセパレータで、このEDLCは非常に優れたエネルギー密度およびパワー密度を有していた。一方、リグニンの電界紡糸不織布を不融不溶化した布は、イオン液体を電解質とするEDLCに好適で、より高いエネルギー密度を発現させた。

 
9月8日 16:00 - 16:45

脱酸素フッ素化剤を用いた炭素材料のフッ素化と電気二重層キャパシタへの応用

松本 一彦 (京都大学)
フッ素化された炭素材料は、出発物質である炭素材料と比較して、大きく異なる性質を示すことがあり、活発な研究がなされるとともに、実用化も進んでいる。これらの研究において、炭素材料はF2ガス、ClF3ガス、XeF2など酸化力の極めて強いフッ素化剤を用いてフッ素化されており、炭素材料の表面だけでなく、炭素骨格へのダメージが避けられない。本研究では、四フッ化硫黄(SF4)ガスを利用することで、酸化黒鉛と活性炭を脱酸素フッ素化し、その構造的特性を調べた。また、フッ素化された活性炭については電気二重層キャパシタ用電極としての電気化学特性も調べたので、これについても述べる。


S8.社会基盤を支える腐食科学と表面処理技術 特別講演
9月9日 13:30 - 14:30

複合電析および泳動電着を用いた複合材料膜の作成と機能

佐伯 功 (室蘭工業大学)
複合電析は金属めっき浴に無機粉体を懸濁し,金属の析出と同時に無機粉体を取り込む手法であるが,粉体含有量が高くできない欠点がある。泳動電着は無機粉体を電場により試料表面に固定する方法であるが,粉体粒子の空隙を後めっきで金属充填すると複合電析出と同様に複合材料膜が作成でき,粉体含有量は高い。講演者はこれらの手法を使い分けて種々の膜を作成し材料として応用する研究を進めてきた。この講演ではそのうちいくつかの例を紹介する。


S10.ナノスケール界面・表面の構造とダイナミクス 特別講演
9月8日 13:30 - 14:15

金属酵素活性中心に倣った非白金系電極触媒の酸素還元能

八木 一三 (北海道大学)
ラッカーゼやシトクロムc酸化酵素など、卑金属を用いて高効率な酸素還元を実現している金属酵素は数多い。本研究では、これらの活性中心にある金属構造を人工触媒に応用することで得られた非白金系酸素還元触媒の開発とその酸素還元能について紹介する。


S12.化学センサの新展開 特別講演
9月8日 14:15 - 15:00

MEMSガスセンサの開発と応用展開

谷口 卓史 (新コスモス電機)
当社の主力センサである熱線型半導体式(CH)ガスセンサは、小型で、低濃度領域でのガス感度が大きく、ガス選択性にも優れる為、家庭用から携帯用、工業用まで幅広いガス検知製品に搭載されている。近年、家庭用ガス警報器においては、普及率向上の為、コードレス化が求められている。そこで、我々は独自のCHセンサにMEMS技術を応用し、超低消費電力技術と長期信頼性を確立し、MEMS-CHメタンセンサを搭載した世界初の家庭用電池式都市ガス警報器の発売に至った。また、更なる展開として、LP、水素、VOC等を検知対象とするMEMS-CHセンサの開発を行っており、本発表ではそれらについても報告する。

 
9月9日 10:00 - 10:30

表面電気化学を駆使した高感度分析法及び新規炭素系電極触媒の開発と実分析への応用

松浦 宏昭 (埼玉工業大学)
この20年余来、講演者が電気化学センサの研究開発を行ってきた中で、表面電気化学的なアプローチを駆使し、特に電解法により固体電極表面の化学構造を改質する方法論の開拓を進めてきた。そして、創案した表面改質法を適用して炭素電極表面を改質することで、非金属元素で構成される官能基群を共有結合で電解導入した新規炭素系電極触媒の開発に繋げた。また、めっき技術を応用し、炭素表面に白金ナノ粒子を形成させることにも取組み、先述の非金属元素で構成される各種官能基群と白金ナノ粒子がコラボレーションする新たな触媒活性点の構築を試みた。そしてこれら電極が、電気化学センサの検知電極に適用できた、これまでの研究の実例について報告する。

 
9月9日 11:45 - 12:15

バイオ材料の特性を活用した高感度電気化学バイオセンサシステムの開発

有本 聡 (パナソニック)
バイオセンサを設計する上で、そのターゲット分子の特性に応じて材料および検出方法を適切に選定することは非常に重要である。講演者はこれまでに、電気化学を軸に、材料化学や画像処理など異分野の技術を融合深化させることで、新たなバイオセンサの原理に基づくセンシング技術を開発してきた。また、センサの用途に合わせたデバイスの設計など、実用化に向けた様々な技術課題を超えるべく、ドライ型センサ系への応用に取り組んできた。
本講演では、抗体や酵素、DNAアプタマなど種々のバイオ材料の特性を活用した高感度測定システムの開発を中心に、これまでの研究足跡について述べる。

 
9月9日 13:30 - 14:15

表面修飾カーボン薄膜電極の電気化学特性と分析への応用

丹羽 修1 、太田 早紀1、高橋 将太1、芝 駿介2、鎌田 智之3、加藤 大3 (1. 埼玉工業大学、2. 愛媛大学、3. 産業技術総合研究所)
スパッタカーボン薄膜に加熱下でのガス処理やプラズマ処理を行うことで、窒素やフッ素を含む置換基を導入でき、食品中の抗酸化分子の選択的電気化学検出や蛋白質などの吸着抑制など様々な機能を実現できる。また、窒素化カーボン膜にニッケルナノ粒子を修飾するとナノ粒子の電気化学触媒活性が向上し高濃度まで糖やアルコールを酸化できる。一方、金属とカーボンの共スパッタにより、金属ナノ粒子が埋め込まれたカーボン薄膜が作製でき、重金属イオン、有毒ガス分子、疾病の診断マーカとなる糖類を高感度かつ安定に計測できる。また、ナノ粒子上に異種金属を選択的に電析すると2種のナノ粒子が結合したヘテロダイマー構造が実現でき、高い電気化学触媒活性を示す。


S13.電子材料及びナノ機能素子 特別講演
9月8日 10:45 - 11:30

層交換現象を利用した多層グラフェンの低温合成

都甲 薫 (筑波大学)
多層グラフェンのデバイス実装には、任意の基板上に高品質な多層グラフェンを低温合成する技術が鍵となる。金属膜中に固溶させた炭素を冷却析出させる手法が良く知られているが、均一・大面積・厚膜合成などの形状制御性に課題がある。我々は、炭素膜と金属膜の位置が熱処理中に入れ替わる「層交換現象」を発見するとともに、本現象を利用することで、多層グラフェンの低温合成を達成してきた。得られる多層グラフェンの形状は初期の金属膜の形状と一致するため制御可能であり、プラスチック基板などの上に均一な多層グラフェンを得ることができる。講演では、層交換のメカニズムからデバイス応用に関する研究までを包括的に紹介する。

 
9月8日 11:30 - 12:15

ファンデルワールス複合原子層の作製と原子層自在配列による物性創発

町田 友樹 (東京大学)

ファンデルワールス接合では、①界面において格子整合の制約がなく、②原子レベルで平坦な理想的界面が実現し、③構成要素となる二次元結晶の選択肢が極めて広く、④層間の捻り角度によりバンド構造が制御できる。「二次元物質の多様さ」×「ファンデルワールス集積技術」の組み合わせにより、革新的な物質材料を実現する可能性を持つ。ファンデルワールス接合作製技術の構築と量子輸送現象を中心とした物性実験に関して、我々の最新の結果を中心に紹介する。

 

9月8日 13:30 - 14:15

極端紫外線リソグラフィー技術の現状と今後の展開

渡邊 健夫1、原田 哲男1、山川 進二1 (1. 兵庫県立大学)
兵庫県立大学高度産業科学技術研究所は1996年より極端紫外線リソグラフィーの基盤技術開発を推進した。これまで4つの国家プロジェクトに参画し、また多くの国内外企業・研究機関・大学との共同研究を進めてきた。2019年よりスマートフォン向けの7 nm nodeのロジックデバイスの量産技術に使用され、さらに2020年には5 nm nodeの量産が開始された。今後もさらなる微細化技術の進展が期待されており、多くの技術課題が残っている。現在、これらの技術課題解決に向けた取り組みを紹介するとともに。今後の展開について紹介する。さらに、今後の半導体デバイスの展開についても議論する。
 
 

9月8日 14:15 - 15:00

集積回路配線金属薄膜表面の防食層のエリプソメトリその場解析

近藤 英一 (山梨大学)
金属の化学機械研磨(CMP)では、スラリーによる表面酸化・錯化層と粒子による除去が併行する。過剰な酸化や腐食を抑制するため防食剤も添加されており科学的には酸化と防食が競合することになる。本研究では、CoやCuの表面に形成されるごく薄い防食層の成長過程と構造を分光エリプソメトリにより評価した。エリプソメトリの活用方法を含めて議論する。


 

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