電気化学会第88回大会

特別講演・受賞講演一覧

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(敬称略)
シンポジウム 講演種別 講演日時 講演者名 所属
市民公開講座、受賞講演、加藤記念講演 名誉フェロー講演 3月23日 13:30 - 14:00 宮坂 力 桐蔭横浜大学
市民公開講座、受賞講演、加藤記念講演 学会賞受賞講演 3月23日 14:50 - 15:30 菅野 了次 東京工業大学
市民公開講座、受賞講演、加藤記念講演 加藤記念講演 3月23日 15:30 - 16:10 西原 寛 東京理科大学
市民公開講座、受賞講演、加藤記念講演 市民公開講座 3月23日 16:20 - 16:55 伊原 学 東京工業大学
市民公開講座、受賞講演、加藤記念講演 市民公開講座 3月23日 16:55 - 17:30 佐藤 純一 東芝エネルギーシステムズ
S1.溶液化学の新しい展開 特別講演 3月23日 09:00 - 09:45 山口 敏男 福岡大学
    3月23日 09:45 - 10:30 堀川 裕加 山口大学、  理研RSC
S2.分子機能電極-界面電子移動制御とその応用 特別講演 3月24日 15:15 - 16:00 中山 雅晴 山口大学
    3月24日 11:15 - 12:00 相樂 隆正 長崎大学
  受賞講演 3月24日 9:00 - 9:30 郡司 貴雄 神奈川大学
S3.光電気化学とエネルギーの変換 特別講演 3月22日 14:15 - 14:45 大谷 文章 北海道大学
    3月22日 16:30 - 17:00 熊谷 啓 東北大学
    3月23日 09:45 - 10:15 桑畑 進 大阪大学
  受賞講演 3月22日 11:45 - 12:15 南本 大穂 北海道大学
    3月23日 11:15 - 11:45 山口 晃 東京工業大学
    3月24日 09:45 - 10:15 石井 あゆみ 桐蔭横浜大学、JSTさきがけ
S4.有機レドックス化学の新展開 特別講演 3月23日 10:45 - 11:30 池田 浩 大阪府立大学
    3月24日 10:45 - 11:15 伊野 浩介 東北大学
    3月24日 13:15 - 14:00 穐田 宗隆 東京工業大学
    3月24日 15:15 - 15:45 松本 浩一 近畿大学
S5.生命科学と電気化学 特別講演 3月22日 09:15 - 09:30 高橋 康史 金沢大学
    3月22日 09:30 - 10:00 西澤 松彦 東北大学
    3月22日 10:00 - 10:30 鈴木 秀幸 テルモ
    3月22日 10:45 - 11:15 山下 貴之 藤田医科大学
    3月22日 11:15 - 11:45 栄長 泰明 慶應義塾大学
    3月22日 11:45 - 12:00 舟橋 久景 広島大学
    3月23日 10:45 - 11:15 相澤 益男 科学技術振興機構
    3月23日 11:15 - 11:30 舟橋 久景 広島大学
    3月24日 10:45 - 11:00 松永 是 東京農工大学
    3月24日 11:00 - 11:30 民谷 栄一 産業技術総合研究所, 大阪大学
    3月24日 11:30 - 11:45 横山 憲二 東京工科大学
    3月24日 11:45 - 12:00 早出 広司 ノースカロライナ大学、ノースカロライナ州立大学
    3月24日 12:00 - 12:15 舟橋 久景 広島大学
  受賞講演 3月22日 17:00 - 17:30 藤田 恭子 東京薬科大学
S6.溶融塩化学・技術の新展開 特別講演 3月24日 13:45 - 14:15 津田 哲哉 大阪大学
    3月24日 14:15 - 14:45 野平 俊之 京都大学
    3月24日 15:15 - 15:45 坂村 義治 電力中央研究所
    3月24日 15:45 - 16:15 金村 祥平 東芝エネルギーシステムズ
  受賞講演 3月24日 13:15 - 13:45 吉井 一記 産業技術総合研究所
S7.固体化学の基礎と応用-固体材料の合成・物性・反応性 特別講演 3月23日 11:00 - 11:30 鈴木 耕太 東京工業大学、JSTさきがけ
S8.電池の新しい展開 特別講演 3月23日 10:45 - 11:15 林 晃敏 大阪府立大学
    3月24日 11:15 - 11:45 高見 則雄 東芝
    3月24日 11:45 - 12:15 久保田 圭 東京理科大学
  受賞講演 3月23日 11:15 - 11:45 奥村 壮文 日立製作所
S9-1.燃料電池の展開―材料からシステムまで(AFC、PEFC(アルカリ膜型、DMFC等を含む)、PAFC) 特別講演 3月23日 11:30 - 12:00 米田 雅一 みずほ情報総研
    3月24日 11:15 - 11:45 大門 英夫 同志社大学
    3月24日 11:45 - 12:15 内田 裕之 山梨大学
S9-2.燃料電池の展開―材料からシステムまで(SOFC(SOEC含む)、MCFC、その他) 受賞講演 3月22日 11:45 - 12:15 中尾 孝之 大阪ガス
    3月22日 13:15 - 13:45 青木 芳尚 北海道大学
S10.キャパシタ技術の新しい展開 特別講演 3月22日 11:30 - 12:15 藤田 正博 上智大学
    3月22日 15:15 - 16:00 瓜田 幸幾 長崎大学
    3月23日 09:15 - 10:00 松見 紀佳 北陸先端科学技術大学院大学
  受賞講演 3月22日 16:00 - 16:45 白石 壮志 群馬大学
S12.社会基盤を支える腐食科学と表面処理技術 特別講演 3月24日 10:00 - 11:00 呉 松竹 名古屋工業大学
    3月24日 13:00 - 14:00 西方 篤 東京工業大学
S13.化学センサの新展開 特別講演 3月22日 13:15 - 14:00 久保 いづみ 創価大学
    3月22日 14:00 - 14:45 脇田 慎一 産業技術総合研究所、神戸大学、大阪大学
S15.クロモジェニック材料の新展開 特別講演 3月22日 13:15 - 13:45 阿部 良夫 北見工業大学
S16.ナノスケール界面・表面の構造とダイナミクス 特別講演 3月22日 11:45 - 12:15 神谷 和秀 大阪大学
    3月22日 13:15 - 14:00 大内 幸雄 東京工業大学
S17.明日をひらく技術・教育シンポジウム 特別講演 3月24日 11:30 - 12:15 兼松 秀行 鈴鹿工業高等専門学校
    3月24日 13:00 - 13:45 山田 裕久 奈良工業高等専門学校
S18.電力貯蔵技術の新しい展開 特別講演 3月22日 13:15 - 14:00 尾山 宏次 科学技術振興機構
    3月22日 14:00 - 14:45 田中 晃司 東京電力エナジーパートナー
    3月22日 15:15 - 16:00 高坂 大介 デジタルグリッド


名誉フェロー講演
2021年3月23日 13:30 - 14:00
宮坂  力 (桐蔭横浜大学)
私は1978年に入会して以来、光電気化学を専門として研究活動を行ってきました。色素増感半導体による光電変換は入会当初からかかわってきましたが、その延長として2006年に見出したペロブスカイト増感半導体が現在ではシリコン太陽電池と同等の変換効率(>25%)を持つ太陽電池に進化し、世界的に研究が広がっています。講演では私がこれまでにかかわってきた研究の中で、光電気化学から生まれるユニークな素子について紹介するとともに、産学連携活動の中で偶然にもペロブスカイト太陽電池の発見に至った背景に触れながら、最近の先端研究の成果を紹介します。
 

学会賞受賞講演
2021年3月23日 14:50 - 15:30
菅野 了次 (東京工業大学)
イオン導電率が室温でリチウムイオン電池に利用されている液体電解質の値を超える物質が見出されたのをきっかけに、蓄電池の固体化を目指す技術開発が急速に進んでいる。硫化物固体電解質を用いた全固体電池が、他の電池系と比較して優れた出力特性を持つことも明らかになり、その利点が初めて明らかになった。蓄電池を固体化することによって生まれる新たなサイエンスも展開し始めている。講演では、固体中をイオンが高速で拡散する物質を開拓し、蓄電デバイスへの応用を模索してきた道程を顧みるとともに、おぼろげながら見えてきた次世代の蓄電デバイスの姿を予想したい。さらに、蓄電池の固体化に伴って生じるいくつかのトピックスを紹介する。



加藤記念講演
2021年3月23日 15:30 - 16:10
電気化学と錯体化学の交差点で育んだ配位プログラミングの科学
西原  寛 (東京理科大学)
大学院で金属錯体の合成と反応を研究し、慶応義塾大学に着任してから腐食抑制剤の研究で電気化学を学んだ。その後、東京大学、東京理科大学において電気化学会で多くの研究者と交流しながら、電気化学と錯体化学の交差点で研究を行ってきた。様々な物質を対象とする電気化学と、様々な構造や性質を対象とする錯体化学は縦糸と横糸の関係にあり、相性が良い。本講演では、分子エレクトロニクスに興味を持って始めたレドックス分子ワイヤの電子移動、異分野研究者の仲間たちと共に行った生体光合成コンポーネントPSIを用いるバイオ共役フォトセンサの開発、この10年間、その面白さを満喫している有機・無機複合二次元物質、配位ナノシートの化学の3つのトピックスを中心に配位プログラミングの科学を述べる。

 
市民公開講座
2021年3月23日 16:15 - 16:45
再エネ、水素、データが切り拓く脱炭素社会 –自律分散協調型エネルギーシステムへの転換-
伊原  学 (東京工業大学)
2050年までに脱炭素化する日本政府の方針が発表され、世界は脱炭素社会に向けて加速しています。一方で、脱炭素化と経済的優位性をどのように確保していくのかが問われています。東工大では、2019年11月に教授・准教授約70名、25の企業、15の海外トップ大学が参画する“InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアム(インフォシナジー)”を、さらに2020年12月には当コンソーシアムと連携して博士人材を輩出する“エネルギー・情報卓越教育院”を設立しました。講演では、“インフォシナジー”が産学連で究極的に目指す将来のエネルギー社会、Ambient Energy Society(アンビエントエネルギー社会)の概要と9つの重点研究分野を解説します。さらに、重点分野の一つであり、エネルギー学理とAI解析などの情報科学との融合によって開発を目指す“系統協調/分散型エネルギーシステム”開発の取組みについて紹介します。

 
市民公開講座
2021年3月23日 16:45 - 17:15
水素社会実現に向けた東芝の取組み
佐藤  純一(東芝エネルギーシステムズ)
2050年のカーボンニュートラルに向けて、エネルギーとしての水素の位置づけは、ますます重要度を増してくる。
東芝は、水素を「つくる」「ためる」「つかう」「マネージメントする」の技術をベースに、水素エネルギーの普及拡大に向けた取組みを進めている。自立型水素エネルギー供給システムH2Oneを開発し、再生可能エネルギーを蓄電池と水素電力貯蔵のハイブリッドにより安定的に負荷に供給することを可能とした。純水素燃料電池は、0.7kWから100kWの大容量化を進め、さらにMW級の開発を行っている。近年は、燃料電池の用途拡大に向け、船舶、鉄道向けの燃料電池の開発も進めている。水素の需要拡大に向けたP2Gの取組みなど、最新の動向も含めて概説する。


S1.溶液化学の新しい展開 特別講演
2021年3月23日 09:00 - 09:45
量子ビームと溶液化学
山口 敏男 (福岡大学)
溶液の特性やその中で進行する化学反応は、溶液の静的構造と動的構造の反映である。
X線や中性子に代表される量子ビームは、溶液中のイオンや分子の構造(原子間距離、配位数)や分子運動(並進、回転、振動)を分子レベルで捉えることができる。
講演では、量子ビームを用いた、二成分溶液、ナノ細孔中の溶液、極端条件下(過冷却、超臨界、GPa圧力)の溶液、超音波浮揚単一液滴などの研究例を紹介する。
 
2021年3月23日 09:45 - 10:30
軟X線発光分光法の溶液化学への展開
堀川 裕加(山口大学、理研RSC)
元素を含む分子の電子状態観測に古くから用いられてきたが、軟X線は真空中でしか扱えないため測定対象は気体と固体試料に限られていた。しかし近年の薄膜窓材を利用した溶液セルの開発により、観測対象が液体試料にまで広がってきた。
講演では測定装置の概要と溶液中のカルボン酸の測定結果を例にどのような観測が可能かを紹介する。
 
 
S2.分子機能電極-界面電子移動制御とその応用 特別講演
2021年3月24日 15:15 - 16:00
積層二酸化マンガンの電気化学形成を起点とするナノ空間イオン触媒系の構築
中山 雅晴 (山口大学)
電気化学法による積層二酸化マンガンの薄膜化法を確立してきた。積層MnO2は負に帯電したMnO2ナノシートとシート間のゲストカチオンからなり、様々なサイズや機能をもったカチオン種とMnO2の複合化が可能である。本講演では、遷移金属イオンを導入した積層MnO2の電気化学特性やエネルギー関連反応に対する触媒特性に焦点を当て、本系が触媒種の活性化や飛躍的な高効率化を可能にする“エレクトロナノビーカー”として働くことを示す。
 
2021年3月24日 11:15 - 12:00
動的挙動を電気化学駆動し制御するための機序の開拓
相樂 隆正 (長崎大院工)
静的電位制御を動的制御に対比させ、電位制御機序の開拓が分子機能電極分野において極めて重要であるかを指摘し、材料先導の機能系開発とのコントラストとマージの両面を説き起こしてみたい。動的挙動の駆動と制御の例として、機能分子・単分子膜・ゲル・油滴のサイズ階層性を意識した実例を我々の研究と国内外の報告から紹介しつつ、これからの分子機能電極分野の新局面創生について、生物系の事象にも言及し議論したい。
 
 
S2.分子機能電極-界面電子移動制御とその応用 進歩賞(佐野賞)受賞講演
2021年3月24日 9:00 - 9:30
金属間化合物触媒の創出と電気化学反応への応用
郡司 貴雄 (神奈川大学)
電極触媒上でのCO2還元反応は温室効果ガスの一因であるCO2の削減や有用資源の獲得だけではなく、光触媒用助触媒の設計指針という観点からも非常に重要な取り組みである。私は2018年度の秋季電気化学会から分子機能電極のセッションでCO2の電気化学的還元反応に関する講演をしており、その中でSn系合金ナノ粒子触媒の開発と反応選択性の向上やごく最近ではPd系合金触媒に注目しており、添加元素種に起因する触媒反応の選択性について報告してきた。本講演では種々のPd系合金/金属間化合物におけるCO2の電気化学的還元反応の最新の検討を中心に紹介したい。
 
 
S3.光電気化学とエネルギーの変換 特別講演
2021年3月22日 14:15 - 14:45
電子トラップ密度のエネルギー分布解析にもとづく光機能性材料の同定と精密評価
大谷 文章 (北海道大学)
固体材料をおなじレシピでおなじ(とかんがえられる)条件で調製しいても,あるいは,おなじコード名でおなじロットの製品を購入してもその特性や活性が異なることからもわかるように,固体材料には「観測されないちがい」が存在する.とくに,巨視的(マクロスコピック)な分析手法がない表面構造のちがいが重要である.われわれは,金属酸化物などの半導体材料の表面に存在する電子トラップ密度のエネルギー分布(ERDT)が表面構造を反映することを見いだした.このERDTをもちいる光機能材料の同定と精密評価についてのべる.
 
2021年3月22日 16:30 - 17:00
分子と半導体の光触媒能を活用した物質変換反応のための光電気化学系
熊谷 啓 (東北大学)
 
2021年3月23日 09:45 - 10:15
量子ドット~高機能化・高性能化のための表面デザイン~
桑畑 進、上松 太郎(大阪大学)
本演者は、発光性の半導体ナノ粒子である量子ドットに関する研究を20年間行っている。光らないナノ粒子を光らせるようにする、光っているナノ粒子に機能性を付与する、そして低毒性の量子ドットを合成し高性能化する等の研究を行ってきたが、全ての研究において重要なことは、ナノ粒子の表面デザインであった。量子ドットを生体マーカーとして使う際にも、特定の部位に結合させるために表面に機能団を付与するが、半導体ナノ粒子の物性に直接関係する表面デザインという視点での、本演者のこれまでの研究足跡と最近のトピックスを紹介する。
 
 
 
S3.光電気化学とエネルギーの変換 進歩賞(佐野賞)受賞講演
2021年3月22日 11:45 - 12:15
ナノ界面構造制御による電気化学反応の高機能化
南本 大穂 (北海道大学)
局所ナノ界面においては、電場の集中や空間異方性により通常の均一系では見られない特異な電荷移動プロセスや分子応答が発現する。そのため、そのナノ空間構造を自在に制御することによって電位や光等の外部摂動を高効率な物質応答へと変換可能となる。講演者はこれまでに、電気化学手法を用いたナノ構造制御手法を駆使することで、光エネルギーのナノ空間への高度局在化を実現し、光―物質相互作用を利用した新たな電気化学反応場を創出してきた。さらには電気化学分光手法を駆使することで、金属ナノ構造界面において進行する光電気化学反応や電気化学反応の高機能化を可能とする構造設計指針を明らかにしてきた。
 
S3.光電気化学とエネルギーの変換 第17回Honda-Fujishima Prize 受賞講演
2021年3月23日 11:15 - 11:45
普遍元素を用いた多電子移動電極触媒の創製
山口 晃 (東京工業大学)
私達は、光および電気化学における多電子移動触媒の開発を行っています。特に、普遍元素から如何にして触媒としての機能を引き出すか、ということに焦点を当てて研究を行っています。発表では、酸化マンガンを用いた酸素発生触媒や金属硫化物を用いた二酸化炭素還元触媒開発、また、二次元ホウ素材料による水素貯蔵や金属酸化物半導体を用いたメタンの変換反応に関しても御紹介します。
 
S3.光電気化学とエネルギーの変換 女性躍進賞 受賞講演
2021年3月24日 09:45 - 10:15
有機-無機ハイブリッド構造を有する光機能デバイスの創製
石井 あゆみ1,2 (1. 桐蔭横浜大学、2. JSTさきがけ)
光は、強度・波長・偏光性・時間(速度)などの様々な情報(物理量)や機能を含んでいる。量子光学から生体機能の解明、エネルギー利用に至るまで、光の物理量に対する計測技術や光の利用技術の発展は必要不可欠である。特に、微弱な光や偏光、近赤外光などの“見えない光”に対し、その情報を高い精度で検出する技術や有効に利用する技術の開発が求められている。本研究では、物質の光吸収により生じる光電変換やエネルギー変換過程を、有機—無機ハイブリッド構造におけるヘテロ界面を利用して精密に制御する独自の技術を確立し、見えない光を増幅・変換・検出するための新しい材料と素子開発に成功した。
 
 
S4.有機レドックス化学の新展開 特別講演
2021年3月23日 10:45 - 11:30
光誘起電子移動反応における逆電子移動過程の機構解明と有機エレクトロニックデバイスへの応用展開
池田 浩 (大阪府立大学)
本講演では、令和2年度有機電子移動化学学術賞の受賞対象となった次の4項目について、簡単に説明する。
 1.逆電子移動過程を活用した光誘起電子移動反応の開発
 2.反応性有機ビラジカルの熱ルミネッセンスの発見
 3.新概念を有する「有機ラジカルEL」の開拓
 4.機械学習とMarcus理論に基づく有機半導体材料の光誘起電子移動反応合成
 
2021年3月24日 10:45 - 11:15
電気化学に基づくハイドロゲル形成と細胞培養への応用
伊野 浩介 (東北大学)
ハイドロゲルは培養細胞を用いた生体様組織構築に利用されている。このような応用のためには、目的にあった形状のハイドロゲルを作製する必要がある。そこで本研究では、プローブ型電極や電極アレイデバイスを用いて、形状をデザインしたハイドロゲルの局所的な形成を行った。さらに、作製したハイドロゲル内で細胞を培養した。得られた結果から、開発したシステムは細胞培養プラットフォームへの応用が可能であると言える。
 
2021年3月24日 13:15 - 14:00
フォトレドックス触媒反応:可視光(太陽光)で駆動する有機反応
穐田 宗隆、小池 隆司 (東京工業大学)
太陽光を含む可視光で駆動するフォトレドックス触媒反応は、原理的に化石燃料を使う必要がないことから、SGDsを念頭に置いたグリーンな化学生産プロセスとして注目を集めている。講演では、触媒原理の説明に続いて、フルオロアルキル化反応、有機物触媒開発、超分子触媒系などの最近の演者らの成果について紹介する。
 
2021年3月24日 15:15 - 15:45
電子移動反応に基づく低温ラマン測定、有機反応開発、および有機電子材料に関する研究
松本 浩一 (近畿大学)
これまでに我々の研究グループでは、有機電解合成を基盤として、不安定活性種の挙動を観測する「低温ラマン測定システム」の開発や、電解により発生させた活性種の制御に基づく有機反応の開発を行ってきた。最近では、有機電子材料に関する研究も展開しており、その研究成果を紹介する。
 
 
S5.生命科学と電気化学 特別講演
2021年3月22日 09:15 - 09:30
特別企画「電気化学計測を用いた生体内計測の最先端」企画趣旨説明
高橋 康史1、舟橋 久景2 (1. 金沢大学、2. 広島大学)
生物工学研究会主催の特別企画「電気化学計測を用いた生体内計測の最先端」では、生体内計測に関する新しいご研究を積極的に展開されている先生方にご講演いただく。
企画趣旨説明では、生体内計測の動向について紹介し、本企画の趣旨・意義を説明する。また,最新のご研究として4名の講師の先生の講演概要について紹介し、ご講演拝聴後の総合討論に向けて本企画のポイントなどを検討する。
 
2021年3月22日 09:30 - 10:00
バイオ電池で駆動する創流デバイスの開発
西澤 松彦(東北大学)
生体親和性に優れるイオントロニックデバイスの開発動向を説明し、電気浸透流を原理とする、①保湿機能を有するコンタクトレンズ、②高速・高効率な経皮投薬パッチ、③薬剤徐放する体内埋込電極デバイス、など「創流デバイス」の開発を紹介する。
 
2021年3月22日 10:00 - 10:30
糖尿病治療における血糖測定法の開発動向
鈴木 秀幸、矢口 喜明、有田 栄次(テルモ株式会社)
糖尿病治療において血糖コントロールは極めて重要であり,日々の血糖測定は糖尿病患者にとって必要不可欠である。血糖測定は,単回測定の血糖自己測定 (SMBG) と連続測定の持続血糖測定 (CGM) に大別される。これらの方法は酵素を用いた電気化学式や光学式の検出システムを利用している場合が多いが,近年では酵素を用いない測定原理も開発されている。本講演ではCGMを中心に血糖測定法の開発動向について発表する。
 
2021年3月22日 10:45 - 11:15
神経科学におけるドーパミン濃度測定の意義
山下 貴之 (藤田医科大学)
脳報酬系の中核を担うドーパミンは、薬物依存や連合学習に関わるなど多様な生理機能を持っているが、技術的問題からその詳細な作用メカニズムは未だ解かれていない。特にドーパミンの濃度を空間的・時間的分解能で測定する技術の開発は神経科学にブレークスルーをもたらすだろう。本講演では、ドーパミンを例として神経科学における電気化学的測定の意義について概説するとともに、最新の研究成果について紹介する。
 
2021年3月22日 11:15 - 11:45
ダイヤモンドマイクロ電極のリアルタイム生体計測への応用
栄長 泰明 (慶應義塾大学)
ダイヤモンド電極は優れた電気化学特性をもち、さまざまな高感度電気化学センサーとしての応用展開が盛んである。そのような中、マイクロサイズに加工した「ダイヤモンドマイクロ電極」は、マイクロ電極としての特性のみならず、生体内局所において、薬物や生体物質をリアルタイムで高感度に計測できる次世代電極として期待されている。ここでは、ダイヤモンドマイクロ電極の生体内計測ヘの応用についての最新の成果を述べる。ダイヤモンド電極は優れた電気化学特性をもち、さまざまな高感度電気化学センサーとしての応用展開が盛んである。そのような中、マイクロサイズに加工した「ダイヤモンドマイクロ電極」は、マイクロ電極としての特性のみならず、生体内局所において、薬物や生体物質をリアルタイムで高感度に計測できる次世代電極として期待されている。ここでは、ダイヤモンドマイクロ電極の生体内計測ヘの応用についての最新の成果を述べる。
 
2021年3月22日 11:45 - 12:00
特別企画「電気化学計測を用いた生体内計測の最先端」総合討論
舟橋 久景1、髙橋 康史2 (1. 広島大学、2. 金沢大学)
生物工学研究会主催の特別企画「電気化学計測を用いた生体内計測の最先端」では、生体内計測に関する新しいご研究を積極的に展開されている先生方にご講演いただく。
総合討論では、ご講演内容に関する質疑応答に加え、研究の最先端動向とともに将来展開について討論したい。
 
2021年3月23日 10:45 - 11:15
生物に学び、電気化学のフロンテイアを拓く
相澤 益男 ((国研)科学技術振興機構)
生物は尽きることのない「知的創造の源泉」である。生物電気化学もそうした活力によって育まれてきた。振り返れば、Galvani, Volta, Hodgkin, Huxley, Szent-Gergyといった先達の偉業が甦ってくる。さらに、これらを礎にして、生物電池、バイオセンサ、バイオ素子等、様々なアイデアが創出された。今、未来の創造に向けて、電気化学のフロンテイアを切り拓く時。生物に学ぶという発想の原点を想起しつつも、懐古趣味に陥ることなく、with/afterコロナの時代をしっかりと見据える重要性が高まっている。
 
2021年3月23日 11:15 - 11:30
温故知新セミナー 企画趣旨説明と質疑応答
井上 久美1、〇舟橋 久景2 (1. 山梨大学、2. 広島大学)
生物工学研究会では、先輩方がなされてきたご研究やご発想などを勉強し、温故知新を実践しながら研究の将来を考える場として、温故知新セミナーを開催している。 ご研究を展開された際の着眼点、ご発想やモチベーションなど、インターネットでは絶対に検索できないようなこと、さらには未来への提言、若者へのメッセージなどをご講演いただく予定である。
 
2021年3月24日 10:45 - 11:00
冒頭の挨拶
松永 是 (東京農工大学)
故 輕部征夫 先生の追悼企画における冒頭の挨拶
 
2021年3月24日 11:00 - 11:30
輕部征夫先生のご研究の紹介
民谷 栄一 (産総研, 阪大産研)
故 輕部征夫 先生の追悼企画において、輕部先生のご研究をご紹介させていただきます。特に、バイオセンサー研究分野を開拓され、バイオテクノロジーと電気化学との融合、応用展開に関して世界的に先導してこられた軽部先生のご業績の一端を紹介させていただきます。
 
2021年3月24日 11:30 - 11:45
輕部征夫先生の東京工科大学におけるご活躍の紹介
横山 憲二 (東京工科大学)
東京工科大学前学長・東京大学名誉教授・故 輕部征夫先生の追悼企画において、輕部先生の東京工科大学におけるご活躍を紹介する。
 
2021年3月24日 11:45 - 12:00
バイオセンサ研究のパイオニア、故輕部征夫先生の国際的学術活動におけるリーダシップ
早出 広司1,2 (1. ノースカロライナ大学チャペルヒル校、2. ノースカロライナ州立大学)
故輕部征夫先生は世界のバイオセンサ研究のパイオニアとして、様々な国際的な学術活動においてリーダシップをとられてきました。本講演ではElsevier社の学術誌、Biosensors and Bioelectronicsの創設時からのEditorとしてのご活動、1987年にご執筆されたバイオセンサ研究の教科書となるBiosensors: Fundamentals and Applications、1990年から開催されていますWorld Congress of Biosensorsのオーガナイザーとしてご活動についてご紹介させていただくとともに、輕部先生の追悼号として予定しているBiosensors and Bioelectronics の特集号の企画についてご紹介させていただきます。
 
2021年3月24日 12:00 - 12:15
閉会の挨拶
舟橋 久景 (広島大学)
故 輕部征夫 先生の追悼企画における閉会の挨拶
 
S5.生命科学と電気化学 女性躍進賞 受賞講演
2021年3月22日 17:00 - 17:30
分子認識電極の構築とイオン液体中での生体分子応用に関する研究
藤田 恭子(東京薬科大学)
これまでに電極界面における分光電気化学法の開発や生体物質を検出するための電極作成、イオン液体にわずかな水を添加した”水和イオン液体”を場とした生体分子の応用に関する研究などを行ってきた。電極界面の分光解析では非接触光導波路分光法を用いることで透光性のない電極上の吸収スペクトル解析を可能にした。また、水和イオン液体中でタンパク質-電極間の電子移動速度が水中と同等であることや酵素反応の進行を確認した。本発表では、最近進めている尿酸輸送トランスポーターによる尿酸、尿毒症物質の排泄動態解析に関する研究を中心に水和イオン液体の生体分子用場としての可能性等についても紹介する。
 
 
S6.溶融塩化学・技術の新展開 特別講演
2021年3月24日 13:45 - 14:15
塩化アルミニウム系イオン液体の電気化学
津田 哲哉 (大阪大学)
塩化アルミニウム系イオン液体に関する研究は1940年代から始まり、今日まで続いている。最近では、試薬メーカーからこのイオン液体系を購入することができるため、世界的に研究報告例が増加する傾向にある。本講演では、塩化アルミニウム系イオン液体の特徴(電気化学反応挙動を含む)や最近の研究動向について概説する。
 
2021年3月24日 14:15 - 14:45
溶融塩およびイオン液体中における新規な電気化学反応とその応用
野平 俊之 (京都大学)
本講演では、筆者らが二十年来行ってきた「溶融塩およびイオン液体中における新規な電気化学反応の探求とその工学的応用」について紹介する。溶融塩およびイオン液体は、ゼロソルベント電解液、すなわち、イオンのみから構成される液体として多くの魅力がある。高温溶融塩系は、「電位窓が広い」「物質の溶解度が高い」「反応速度が大きい」などの特長があり、少量からバルク量までの機能性材料合成や革新的物質生産への応用が期待できる。一方、室温および中低温のイオン液体は、「電位窓が広い」「蒸気圧が低い」「燃えにくい」といった特長を活かし、安全かつ高性能な電気化学的エネルギー貯蔵・変換デバイスへの応用が期待できる。
 
2021年3月24日 15:15 - 15:45
核燃料の電解還元処理のためのLiCl-Li2O溶融塩中における酸素発生陽極の開発
坂村 義治1、飯塚 政利1、小藤 博英2 (1. (一財)電力中央研究所、2. 日本原子力研究開発機構)
650℃のLiCl-Li2O溶融塩中で利用できるO2ガス発生陽極材料を開発することは、核燃料の電解還元技術を実用化するために重要である。これまで多くの試験で使用されてきたPtは徐々に腐食する。耐食性の高い導電性酸化物は有力な候補であるが、陽極を大型化する場合の弱点として、機械的あるいは熱的な応力による破損、金属材料に比較して低い電気伝導率などが挙げられる。筆者らは、ニッケルフェライトが良好な陽極特性を示すことから、Fe-Ni金属の表面を酸化させることによりO2ガス発生陽極として機能させることができないか試した結果、酸化処理したNi上でO2ガスが安定して発生することが分かった。そこで、様々な条件でNiを陽極として電解を行い、その適用性を調べた。(本講演は現地開催が中止となった第87回大会で講演予定であった内容を含みます)
 
2021年3月24日 15:45 - 16:15
電気化学的手法を用いた高レベル放射性廃棄物からの長寿命核分裂生成物の分離回収技術
金村 祥平1、高橋 優也1、大森 孝1、野平 俊之2、坂村 義治3、松村 達郎4 (1. 東芝エネルギーシステムズ株式会社、2. 京都大学、3. 電力中央研究所、4. 日本原子力研究開発機構)
原子力発電所で発生する使用済み燃料を再処理すると、高レベル廃液、ガラス固化体等の高レベル放射性廃棄物(以降、高レベル廃棄物)が発生する。高レベル廃棄物には、Pd-107、Cs-135、Se-79、Zr-93といった半減期が数十万年以上の長寿命核分裂生成物(LLFP)が含まれており、現在は化学的、物理的に安定なガラス固化体として地層処分することとなっている。高レベル廃棄物からこれらLLFPを分離回収し、核変換処理による安定核種または短寿命核種への変換が実現すれば、原子力発電の長年の課題であった高レベル廃棄物の大幅な低減と、廃棄物の再資源化が実現できる。我々は、少量の試薬添加で元素の分離操作が実現できる電気化学プロセスを用いた高レベル廃棄物からのLLFP分離回収プロセスを開発したので、この成果について紹介する。(講演者は2020年本会技術賞・棚橋賞受賞者の代表者であり、本講演は現地開催が中止となった第87回大会で予定されていた受賞講演の内容を含みます)
 
 
S6.溶融塩化学・技術の新展開 進歩賞(佐野賞) 受賞講演
2021年3月24日 13:15 - 13:45
非水電解液系における金属電析および金属ナノ粒子作製とエネルギーデバイスへの応用に関する研究
吉井 一記 (国立研究開発法人 産業技術総合研究所)
講演者はこれまでに、非水系電解液中における金属電析および金属ナノ粒子の合成について、学術的な基礎研究とエネルギーデバイスへの応用研究を行ってきた。非水系電解液の中でもイオン液体は難揮発性、難燃性、高い化学的安定性などの特徴を持つことから電気化学・物理化学の分野において多くの研究が行われている。本講演では還元安定性に優れる非プロトン性イオン液体を用いた金属電析と金属ナノ粒子の合成および電極触媒への応用について述べる。また、イオン液体の設計・合成・構造物性相関に関する研究やイオン液体をカリウム二次電池用の電解液として応用した結果についても併せて発表する。
 
 
S7.固体化学の基礎と応用-固体材料の合成・物性・反応性 特別講演
2021年3月23日 11:00 - 11:30
リチウム導電性材料の探索、応用と界面反応解析
鈴木 耕太1,2 (1. 東京工業大学、2. JSTさきがけ)
新規なエネルギーデバイス開発に向け、リチウムイオンが導電種となる固体材料に着目し、1. マテリアルズインフォマティクスの活用よる効率的な新物質探索、2. 高サイクル特性と反応可逆性を示す全固体リチウム硫黄電池性能評価、3. 全固体リチウム電池の固固界面反応の解析を行った。本発表では、その取り組みの一部を紹介する。
 
 
S8.電池の新しい展開 特別講演
2021年3月23日 10:45 - 11:15
硫化物固体電解質を用いた全固体電池の開発
林 晃敏 (大阪府立大学)
無機固体材料から構成される全固体電池は、安全性と高エネルギー密度を兼ね備えた蓄電池として期待されている。アルカリ金属イオンを高濃度に含む硫化物固体電解質は、高いイオン伝導性と優れた界面接合性を併せ持つという特長をもつ。本講演では、Li+およびNa+伝導性を示す硫化物電解質の開発経緯に加えて、全固体電池における電極-電解質固体界面の形成プロセスとキャラクタリゼーションについて紹介する。
 
2021年3月24日 11:15 - 11:45
チタン酸化物系負極を用いた大型リチウムイオン電池
高見 則雄 ( (株)東芝)
長寿命で高出入力、高安全な大型リチウムイオン電池を実現するため、チタン酸化物系材料を負極として開発してきた。特にリチウムチタン酸化物(LTO)負極を用いた二次電池「SCiBTM」を製品化し、車載用から大型蓄電池システムなどに広く利用されるようになった。さらに、高安全な大型蓄電池を目指して水系LTO電池の長寿命化技術を開発した。一方、高エネルギー密度と急速充電を両立させるためチタンニオブ酸化物(TNO)負極を用いた次世代二次電池を開発した。今後、循環型社会に貢献する大型二次電池として期待される。
 
2021年3月24日 11:45 - 12:15
リチウム・ナトリウム・カリウム層状酸化物における固体化学と電気化学
久保田 圭 ( 東京理科大学)
リチウムイオン電池の性能はこの30年で飛躍的に向上したが、更なる高性能化には根幹となる電極材料、すなわちリチウムインサーション材料の抜本的な研究開発が必要とされる。これはリチウムイオン電池のみならず、ナトリウムおよびカリウムイオン電池といった新規蓄電池にも当てはまる。リチウム電池での経験を基に、層状酸化物の本質的理解が高性能化の鍵と考え、体系的に研究開発を進めてきた。本講演では、リチウム・ナトリウム・カリウム層状酸化物の系統的な固体化学・電気化学的特徴について発表する。
 
 
S8.電池の新しい展開 技術賞(棚橋賞) 受賞講演
2021年3月23日 11:15 - 11:45
リチウムイオン電池向け高耐熱電解質の研究開発
奥村 壮文、川治 純 ( (株)日立製作所 研究開発グループ)
電動モビリティや電力グリッドへの再生可能エネルギーの本格普及に向け、リチウムイオン電池の高エネルギー密度化が必須である。現行の開発トレンドはセル蓄電量の増大によるエネルギー密度向上であるが、蓄電量とエネルギー密度の間には、安全性により規定されるトレードオフの関係があり、その打破には、材料の高耐熱・安全化が必須である。日立ではこれまでに、有機電解液に替わる高耐熱電解質技術として、i)電極-電解質界面を高耐熱化する添加剤、ii)高リチウム輸率の高分子固体電解質、iii)固体の耐熱性と液体の高伝導性を併せもつ疑似固体電解質を開発した。これらにより、高温での界面安定化と異常時の電池セル発火抑制に成功し、安全・冷却部材レスの高密度電池実現の基礎技術を確立した。
 
S9-1.燃料電池の展開―材料からシステムまで(AFC、PEFC(アルカリ膜型、DMFC等を含む)、PAFC) 特別講演
2021年3月23日 11:30 - 12:00
水素・燃料電池に関する海外の最新動向-飛躍的な水素エネルギー普及拡大に向けた新たな潮流-
米田 雅一 (みずほ情報総研株式会社)
海外ではアフターコロナのグリーンリカバリー政策として脱炭素化に向けた取り組みが加速している。本講演では、欧州水素戦略や中国・韓国等の政策動向に基づき、再生可能エネルギー由来のグリーン水素を中心とした水素製造と需要の見通し、運輸部門における燃料電池自動車(乗用車・商用車)の動向と陸海空の燃料電池の多用途展開、および産業用途における水素利用など、脱炭素化に向けた最新の取り組みと課題について紹介する。
 
2021年3月24日 11:15 - 11:45
Pt系触媒のORR活性と耐久性
大門 英夫、佐藤 優美、肥後 雄太、岩井 聡希、坂井 勇太、西尾 渉、稲葉 稔 (同志社大学)
Pt系触媒としてPt/Pd/Cコアシェル触媒とPtCo/C合金触媒のORR活性と耐久性を比較検討した.両触媒ともに高いORR質量活性を示すが,総貴金属当たりではPtCo/C触媒が有利であった.一方,電位サイクル耐久性試験ではPt/Pd/C触媒が高い耐久性を示した.Pt系触媒の耐久性は極めて重要な研究課題であり,耐久性に与える炭素担体の多孔性と電位サイクル試験の高電位依存性について検討を行った.
 
2021年3月24日 11:45 - 12:15
燃料電池用電極触媒に関する総合討論
内田 裕之1、(パネリスト)和田山 智正2、大門 英夫3、星 永宏4、古山 通久5、石原 顕光6 (1. 山梨大学、2. 東北大学、3. 同志社大学、4. 千葉大学、5. 信州大学、6. 横浜国立大学)
燃料電池の高性能、高耐久化のためには電極触媒の高機能化が必須であり、様々な材料開発や機能発現機構の解明が進められているが、さらに高度な現象の理解や材料開発が必要である。そこで今回は、本大会で関連発表のある先生方に、今後の燃料電池用電極触媒開発の方向性など総合的に討論して頂く。
 
 
S9-2.燃料電池の展開―材料からシステムまで(SOFC(SOEC含む)、MCFC、その他) 技術賞(棚橋賞) 受賞講演
2021年3月22日 11:45 - 12:15
SOFC集電材向け電着コーティング技術の開発
中尾 孝之1、井上 修一2、齋藤 禎2、塚本 然造3、西村 茂文3、藤本 哲朗4 (1. 大阪ガス(株)、2. 大阪ガスマーケティング、3. シミズ、4. 京セラ)
SOFCセルスタックの発電効率の向上と耐久性の両立において、ステンレス鋼のコーティングはキー技術であり、低抵抗・低コスト・高耐久性を有するセラミックスコーティングが強く望まれていた。我々は、量産性に優れた電着塗装法に着目し、SOFCへの技術的適用検討を行った。無機成分の増加、焼成後の均一な膜形成、鋼材との良好な界面構築、により、大幅な発電効率向上と高耐久性が同時に実現できた。本技術は2016年度以降のエネファームtypeSに実装され、耐久性・信頼性・高効率の実現に多大な貢献をした。

S9-2.燃料電池の展開―材料からシステムまで(SOFC(SOEC含む)、MCFC、その他) 学術賞 受賞講演 
2021年3月22日 13:15 - 13:45
プロトン酸化物薄膜燃料電池の発電特性
青木 芳尚 (北海道大学)
Ba(Zr,Ce)O3を代表とするプロトン伝導性酸化物のイオン伝導活性化エネルギーは、YSZの酸化物イオン伝導の活性化エネルギーよりも小さいため、従来の固体酸化物燃料電池よりも低い温度域(~500℃)で作動する電池として期待されている。しかしながら、現状のプロトン酸化物燃料電池は、その伝導率から期待されるほどオーム抵抗および界面分極は低減できていない。Ba(Zr,Ce)O3の特徴は、プロトンだけではなく、酸化物イオンおよび電子ホールのマイナーキャリアを有すること、また酸素分圧に応じプロトン伝導率が大きく変化することが挙げられる。本講演では、プロトンセラミックス燃料電池の性能向上には、電解質膜中での混合伝導性制御がカギを握ることを報告する。
 
 
S10.キャパシタ技術の新しい展開 特別講演
2021年3月22日 11:30 - 12:15
柔粘性イオン結晶を用いた蓄電デバイスの開発
藤田 正博 (上智大学)
新規固体電解質として柔粘性イオン結晶の作製と評価を行っており、プロトン、リチウムイオン、ナトリウムイオン伝導体として精力的に研究している。本講演では、柔粘性イオン結晶の基礎について述べた後、電気二重層キャパシタへの展開を中心に述べる。
 
2021年3月22日 15:15 - 16:00
電解液の脱溶媒和状態を考慮した多孔性カーボン電極の設計
瓜田 幸幾 (長崎大学)
多孔性カーボンを電気二重層キャパシタ (EDLC) の電極材料として応用するには,電極内の細孔をEDL形成場として有効に活用できる細孔構造を明らかにする必要がある。カーボン電極の細孔形状・サイズと電解液の脱溶媒和の関係を明らかにし,電極細孔構造に対するLiイオンや多価イオンキャリアのEDLC特性について報告する。
 
2021年3月23日 09:15 - 10:00
高分子バインダー/添加剤設計を通した蓄電池の合理的界面設計
松見 紀佳、サイゴウラン パトナイク、アグマン グプタ、テジキラン ピンディ ジャ ヤクマール、ラージャシェーカル バダム、ラーマン ヴェーダラージャン (北陸先端科学技術大学院大学)
リチウムイオン二次電池負極用高分子バインダーに関して、必要な各機能をTask-specificに導入した高分子を設計、合成し実際に電池系に適用したところ好ましい性能が得られることが見出された。活物質や集電体との相互作用、力学特性、適切なHOMO-LUMOレベル、スラリー溶液への溶解性に配慮した構造を高分子ユニットレベルで設計し、n型共役系高分子バインダーや高分子化イオン液体バインダーの開発を通して充放電特性を改善した。同様のアプローチにより、LiMNC系正極を安定化する添加剤の設計を行い、汎用電解液より高いHOMOレベル、導電性被膜の形成能、遷移金属への配位能、HFトラップ能などを併せ持つ化合物を合理的に設計することによりLiMNCを安定化した。
 
 
S10.キャパシタ技術の新しい展開 学術賞 受賞講演
2021年3月22日 16:00 - 16:45
電気化学的エネルギー貯蔵を指向した新規カーボン電極の開発
白石 壮志 (群馬大学)
炭素材料は、細孔構造・結晶構造・化学組成・形状によって様々な特性が発現することが知られており、その多様性のため古くから電気化学の分野と密接な関わりがある。演者は蓄電デバイスに用いられる炭素電極について研究を進める中、電気化学キャパシタ用の炭素電極に関しては、容量を支配する細孔構造以外の因子も重視すべきであるという結論を得て、集中的に研究を展開してきた。本講演では、炭素ナノ細孔体電極の細孔構造・結晶構造・化学組成・形状がどのようにキャパシタ特性に影響するか演者の研究例から概説する。また、得られた知見を元に新規に開発した炭素ナノ細孔体電極を紹介するともに今後のキャパシタ用炭素電極の方向性についても述べる。
 
 
S12.社会基盤を支える腐食科学と表面処理技術 特別講演
2021年3月24日 10:00 - 11:00
ハイブリッド電解法を活用した次世代高安全性大容量Liイオン電池電極材料の創製
呉 松竹 (名古屋工業大学)
硝酸系電解液中でのスマートアノード酸化によりTi板上にナノポーラスTiO2-TiN複合膜を形成し、続いてハイブリッドめっき(カソード法またはアノード法)を利用して多孔質TiO2-TiN皮膜内に放電容量の高いSn-SnO2系、MoOx-MoNy系またはMoS2系物質を導入し、高安全性と大容量を両立したLiイオン電池の負極材料を創製した。
 
2021年3月24日 13:00 - 14:00
電位サイクル下での白金・白金合金の溶解現象
西方 篤 (東京工業大学)
固体高分子形燃料電池には白金系の電極触媒が使用されている。燃料電池の起動停止および出力変動により燃料電池の電極電位は大きく変動する。この電位変動が電極触媒の劣化を加速することになる。我々は、Hydrodynamicな電気化学手法であるチャンネルフロー二重電極法および微量分析法であるICP-MS等を用い、白金及び白金合金の微量溶出に関する研究を行ってきた。本講演では、電位サイクル下で起こる白金及び白金合金触媒の溶解機構について述べる。
 
 
S13.化学センサの新展開 特別講演
2021年3月22日 13:15 - 14:00
マイクロ流路ディスク型デバイスによるバイオセンシング (Biosensing utilizing Microfluidic disc shaped device)
久保 いづみ (創価大学)
我々は直径約10cmのディスク型マイクロ流路デバイスの開発を行ってきた。このデバイスでは回転により簡単に試料溶液を送液でき種々のバイオセンシングを行うことができる。本講演では、細胞単離や酵素免疫測定(ELISA)によるセンシングを行う流路などのマイクロ流路ディスク型デバイスと、単離後、細胞の遺伝子による検出や抗原抗体反応による検出、ELISAによる検出など開発したデバイスを利用したバイオセンシングについて概説する。
 
2021年3月22日 14:00 - 14:45
唾液ストレス計測用バイオセンサ・チップのプロトタイプ開発
脇田 慎一1,2,3 (1. 産業技術総合研究所、2. 神戸大学大学院、3. 大阪大学大学院)
1.はじめに
 世界保健機関は、2030 年にはうつ病が世界一位の疾病負荷となると報告している。うつ病の病因仮説は脆弱性-ストレスモデルであり、2001年の産総研発足時から、非侵襲生体試料である唾液ストレスマーカー(候補)を一滴で計測できるバイオセンサ・チップの研究開発を進めてきた。ここでは、成果の一部を紹介する。
2.自律神経系ストレス応答
 FETバイオセンサの研究開発を紹介する。唾液ではアドレナリンが検出されないので、血液中でノルアドレナリンよりも応答が早いNO代謝物(硝酸イオン)を対象とした。唾液硝酸イオンをその場計測できるプロトタイプの研究開発を行い、緊張や運動ストレス被験者による約300検体の実証研究に成功した。
3.内分泌系ストレス応答
 遠心力送液型マイクロ流体デバイスを用いた共同開発成果を紹介する。測定対象は唾液中のコルチゾールを対象とした。ELISA法をオンチップ自動化することにより、測定時間は10分と大幅な迅速化を達成した。
4.免疫系ストレス応答
 電気泳動型マイクロ流体デバイスを用いた研究成果を紹介する。測定対象は唾液中の分泌型イムノグロブリンAを対象とした。B/F分離する均一系免疫アッセイ系をオンチップ化した。ELISA法の結果と良い相関が得られ、測定時間は10分以内と大幅な迅速化を達成した。
 
 
S15.クロモジェニック材料の新展開 特別講演
2021年3月22日 13:15 - 13:45
遷移金属酸化物のエレクトロクロミック特性とそのデバイスへの応用
阿部 良夫 (北見工業大学)
多くの遷移金属酸化物が、エレクトロクロミック特性を示すことが知られている。本講演では、スパッタ法で作製した酸化タングステン薄膜や酸化ニッケル薄膜の構造および組成とエレクトロクロミック特性との関連について報告する。また、これら遷移金属酸化物薄膜のエレクトロクロミックデバイスへの応用例について紹介する。
 
 
S16.ナノスケール界面・表面の構造とダイナミクス 特別講演
2021年3月22日 11:45 - 12:15
金属中心の配位構造制御に基づく新規電子移動触媒の開発
神谷 和秀 (大阪大学)
単核金属原子を活性中心とする不均一系触媒は、i) 低配位数、ii) 離散的なエネルギー準位、iii) 強い金属-担体間相互作用などの特徴に基づき、バルク金属とは異なる特異的な触媒作用を示す。こうした反応性は電気/化学エネルギー変換を支える電極触媒の観点からも魅力的である。単核金属中心を担持する基材として、多孔質構造を有する架橋性高分子材料である共有結合性有機構造体(COF)が好適である。我々は銅やニッケル、白金などの金属原子を配位構造が制御された状態でCOFの細孔内に担持することで、水素酸化や二酸化炭素還元などエネルギーや環境問題に重要となる電気化学反応に対して高い活性や選択性を示すことを見出してきた。本講演では,そうした我々の最近の研究の一端を紹介する。
 
2021年3月22日 13:15 - 14:00
イオン液体/電極界面における電位窓拡張効果の微視的検討:ー和周波発生振動分光法で分かることー
大内 幸雄 (東京工業大学)
イオン液体は通常の電解液に比べて比較的広い電位窓を有するが、添加物や濃度に依存して、これらがさらに拡張される事例が報告されている。我々はこれまで和周波発生振動分光法(IV-SFG法)をイオン液体/電極界面に適用し、カチオン・アニオンの吸脱着現象を研究してきたが、本講演では電位窓拡張効果の微視的要因に焦点を絞り、添加物効果、グライム系電解液での拡張効果などについて分光計測の立場から議論する。
 
 
S17.明日をひらく技術・教育シンポジウム 特別講演
2021年3月24日 11:30 - 12:15
GEAR 5.0と抗バイオフィルム国際規格へのチャレンジ
兼松 秀行 (鈴鹿工業高等専門学校)
GEAR5.0プロジェクトは,Society5.0時代の人材を育成するために,いくつかの分野を立てて,その分野の研究拠点を作り,複数の高専がそれに協力して体制を作り,社会実装を目指して研究を行い,その研究活動を通じて人材育成を行うものである.機械,化学,電気電子,情報,土木建築などすべての分野に使われているマテリアルを対象とする,社会実装を強く意識したまさに,Everything is  materialを地で行く全国高専一丸となった大きな研究プロジェクトである.本講演では,その経緯,そしてその成果としての抗バイオフィルム評価法の国際規格化へのチャレンジについてご紹介する.
 
2021年3月24日 13:00 - 13:45
電気化学解析を通じた燃料電池触媒設計
山田 裕久 (奈良工業高等専門学校)
これまでに大学-奈良高専で培ってきた電気化学解析技術を用いて実施してきたRRDE法を用いたPt/C触媒上での酸素還元活性評価およびEQCM法を用いたPt劣化挙動解析、そして微小電極法を用いたイオン液体中での酸素の拡散係数や溶解度の解析などを通じて得られた知見から現在実施しているPt-SCILL触媒の開発について講演させていただく。
 
 
S18.電力貯蔵技術の新しい展開 特別講演
2021年3月22日 13:15 - 14:00
環境・エネルギー分野における研究開発の俯瞰~ゼロエミッション化に向けた技術動向と電力貯蔵技術への期待~
尾山 宏次 (国立研究開発法人科学技術振興機構)
環境・エネルギー分野における国内外技術動向を俯瞰した上で、特に2050年ゼロエミッション化を達成するエネルギーシステムを考える上でどのような技術が期待されているか、その中での電力貯蔵の役割や期待について述べる。
 
2021年3月22日 14:00 - 14:45
再エネ主力電源化に向けた蓄電池システムの活用技術について
田中 晃司 (東京電力エナジーパートナー(株))
地球温暖化への対応が世界的に進む中で、日本においても風力発電等の再生可能エネルギーの大量導入が計画されている。このような電源は電力系統に対して周波数変動や電圧変動等の影響を及ぼすため、化石燃料を伴わない需給調整力として需要側での蓄電池システムの活用が注目されている。
 
2021年3月22日 15:15 - 16:00
電力貯蔵技術関連分野のブロックチェーン技術の活用
高坂 大介 (デジタルグリッド株式会社)
ブロックチェーン技術の最新状況と電力貯蔵技術関連分野における活用について、事例をもとにご紹介します。

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